第95話 問いは消えない
境界は、その日、三度現れた。
どれも小規模。
どれも干渉不能。
どれも、放置して収束した。
被害はない。
だが、安心もない。
「……何もできないですね」
若い技師が、苦く笑う。
「違う」
ミレナが、首を振る。
「何もしないと決めた」
言葉は似ている。
だが、意味は違う。
アレンは、杭の並びを見つめている。
杭は、古い知恵。
管理は、新しい知恵。
どちらも、万能ではない。
「問いは、残るな」
誰にともなく、呟く。
「管理は、どこまで通じるのか」
「現場は、どこまで任せるのか」
「境界は、何に向かって変わっているのか」
答えは、ない。
だが、
問いは消えない。
リーファが、小さく笑う。
「第三章で、問いは残したはずなのに」
「ああ」
「増えたな」
問いは、減らない。
形を変えて、増える。
ユイの顔が、脳裏をよぎる。
教えなかった。
答えも渡さなかった。
だから、
彼女は考える。
「……怖くなくなりたい」
若い冒険者が、ぽつりと言う。
「怖くない世界に、戻りたい」
「戻れない」
アレンは、即答する。
「管理があっても」
「境界は消えない」
「怖さは、形を変えるだけだ」
沈黙。
だが、その言葉に反発はない。
空白地帯での数日間で、
全員が知ってしまった。
安全は、保証ではない。
判断は、消えない。
「……じゃあ」
ミレナが、ゆっくり言う。
「問い続けるしかないですね」
「ああ」
アレンは頷く。
「問いを持ち続ける限り」
「世界は、止まらない」
境界が、また微かに揺れる。
誰も慌てない。
観測。
移動。
確認。
恐怖はある。
だが、麻痺していない。
第四章は、
答えを出す章ではない。
問いを、
消さずに持ち帰る章だ。
空白地帯の風が、静かに吹く。
管理の外でも、
問いは残る。
そして――
問いが残る限り、
世界は、まだ考えている。
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