第78話 冒険者という役割
冒険者の仕事は、変わった。
かつては、
境界が出れば走り、
判断し、
踏むかどうかを決める。
今は違う。
装置が反応し、
技師が派遣され、
基準が示される。
冒険者は、
その“外側”に立つ。
「……俺たち、暇になったな」
若い冒険者が、冗談めかして言う。
「安全になったってことだろ」
「そうだな」
笑いは起きる。
不満は、ない。
だが――
役割は、曖昧になった。
依頼掲示板の前で、
アレンは立ち止まっていた。
討伐。
護衛。
調査。
どれも、昔と変わらない。
だが、
“判断を背負う依頼”は、
ほとんど消えていた。
「……冒険者って、何だ」
誰に向けたでもない言葉。
リーファが、隣に立つ。
「守る人?」
「戦う人?」
「境界を処理する人?」
アレンは、首を振った。
「どれも、違う」
「正しくする人でもない」
「便利にする人でもない」
しばらく考えてから、言った。
「冒険者は」
「選択肢を、消さない人だ」
リーファが、目を瞬かせる。
「消さない?」
「ああ」
「踏むか、踏まないか」
「管理するか、しないか」
「その余地を」
「世界から奪わない」
管理は、必要だ。
仕組みも、必要だ。
だが、
それが“唯一”になると、
世界は固まる。
「だから」
アレンは続ける。
「俺は、管理の中に入らない」
「壊すためでも」
「支えるためでもない」
「外に立つ」
それは、逃げに見える。
無責任に見える。
だが――
誰かが外に立たなければ、
世界は一つの形に閉じる。
丘の上。
風に当たっていると――
「肩書きを、捨てたな」
旅装の男が、言う。
「……ああ」
「英雄でも」
「裁定者でもない」
「冒険者だ」
アレンは、空を見る。
「冒険者は」
「世界を救わない」
「ただ」
「世界が選び直せる場所を、残す」
境界は、今日もどこかで揺れている。
管理され、
抑えられ、
時には、見過ごされる。
それでも――
選択肢が消えない限り、
世界は、まだ動く。
追放された無能魔術師は、この日――
**冒険者という役割を、
戦う者でも、管理する者でもなく、
“選択肢の外に立つ者”として、
静かに定義し直した。**
それは、
誰にも求められていない役割だ。
だが、
誰かがやらなければならない役割だった。
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