表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された無能魔術師、実は全属性適性だったので辺境で最強になります  作者: 蒼月アルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/82

第47話 ユイの選択

 ユイがギルドに来たのは、昼過ぎだった。


 雑貨屋の手伝いを終えた帰りらしく、

 小さな袋を抱えている。


「あ」

 俺を見つけて、軽く手を振った。

「お兄ちゃん」


「どうした」


「……聞きたいことがある」


 その言い方で、何の話か分かった。


 ギルドの裏手、

 人の少ないベンチに腰を下ろす。


 ユイは、少し考えてから口を開いた。


「ね」

「“見える”のって、使うもの?」


 まっすぐな質問だった。


 子供らしいが、

 ごまかしは通じない。


「……どうして、そう思った」


「森の奥でね」

 ユイは言う。

「変な人がいた」


 胸の奥が、静かに鳴る。


「踏んでた」

「線を」


「……何を、してた」


「分かんない」

「でも、“近道”だって言ってた」


 やはり、だ。


 ユイは、俺を見上げる。


「ぼくも」

「できるって、言われた」


 リーファが、息を詰める。


「……それで?」


「断った」


 即答だった。


 俺は、少し驚いた。


「理由は?」


 ユイは、少し考えて――

 それから、肩をすくめた。


「だって」

「踏んだあと、戻れない顔してた」


 その感覚は、正しい。


 境界は、越えられる。

 だが、元の場所には戻れない。


「……怖くなかったか」


「ちょっと」


 正直な答え。


「でも」

 ユイは続ける。

「お兄ちゃん、言ってたでしょ」


「“使えるから使う”は、危ないって」


 俺は、黙って頷いた。


「それに」

 ユイは、小さく笑う。

「ぼく、まだ子供だし」


「今は」

「見えるだけで、いい」


 その言葉に、

 胸の奥が、静かに温かくなる。


 教えたわけじゃない。

 命令もしていない。


 ただ、見せただけだ。


「……それで、いい」


 俺は、そう答えた。


「見えることは」

「役目じゃない」


「選択肢だ」


 ユイは、満足そうに頷く。


「じゃあ」

「ぼく、踏まない」


「困ってる人がいたら?」


「呼ぶ」

 迷いのない声。

「お兄ちゃんを」


 それでいい。


 全部を背負わせる必要はない。


 帰り際、

 ユイが振り返る。


「ね」

「いつか、見えなくなる?」


「分からない」


 正直に答える。


「でも」

「見えなくなっても、生きていける」


「それが、大事だ」


 ユイは、少し考え――

 それから、元気よく手を振った。


 その背中を見送りながら、

 リーファが小さく言う。


「……任せたんですね」


「ああ」


「怖くなかったですか?」


「怖かった」


 だからこそ、

 任せた。


 その夜。


 丘の上で、

 風に当たっていると――


「良い線引きだ」


 旅装の男が、いつの間にか立っていた。


「子供に、道具を渡さなかった」


「道具じゃない」

 俺は答える。

「生き方の話だ」


 男は、静かに頷いた。


「見える者は」

「増えていく」


「だが」

「踏まない者がいれば、世界は壊れない」


「……全部、任せる気はない」


「分かっている」


 男は、遠くを見る。


「だから」

「お前が、境界に立っている」


 風が吹き、

 男の姿は、消えていた。


 追放された無能魔術師は、

 この日――


 “守る”とは、

 選ばせないことではなく、

 選べるようにすることだと、

 改めて知った。


 境界は、続いている。


 だが、

 踏まないという選択もまた、

 確かに――連なっていく。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ