第40話 冒険者という立場
数日後、辺境の街に一行の客が現れた。
冒険者ギルド本部からの視察団。
人数は少ないが、全員がベテランだと一目で分かる。
「……ついに来たか」
ロイドが、腕を組んで言う。
「お前を“管理する”かどうか」
「それを決めに来た連中だ」
応接室で向かい合ったのは、
ギルド本部監察官と名乗る男だった。
年齢は中年。
視線は鋭いが、敵意はない。
「アレン・フェルド殿」
「お会いできて光栄です」
形式的な挨拶のあと、
彼は率直に切り出した。
「王都声明以降」
「あなたの存在は、各方面に影響を与えています」
「依頼の偏り」
「判断の集中」
「そして……不在による被害」
俺は、黙って聞いていた。
「我々としては」
監察官は言葉を選ぶ。
「あなたを、特別枠として登録する案も検討しました」
特別枠。
管理。
制限。
指示。
俺は、ゆっくり首を振った。
「受けません」
即答だった。
監察官は、驚かなかった。
「……理由を」
「冒険者は」
俺は、静かに言う。
「命令される存在じゃない」
「選んで、動く存在です」
空気が、張りつめる。
「俺を特別扱いすれば」
「俺は、冒険者じゃなくなる」
しばらくの沈黙の後、
監察官は、小さく笑った。
「……やはり、そう来ますか」
彼は、立ち上がり、頭を下げた。
「結論は、出ています」
「あなたは」
「管理できない」
ロイドが、眉を上げる。
「それを、認めるのか?」
「ええ」
監察官は、はっきり言った。
「だからこそ」
「黙認します」
驚きが、走る。
「我々が管理すれば」
「必ず、歪みが生まれる」
「なら」
「“冒険者のまま”でいてもらった方がいい」
監察官は、視線を俺に戻す。
「条件は一つ」
「……何ですか」
「越えてはいけない線を」
「あなた自身が、引き続けること」
俺は、頷いた。
「それなら」
「最初から、そうしてます」
応接室を出ると、
リーファがほっと息を吐いた。
「……縛られませんでしたね」
「ああ」
だが、自由には責任が伴う。
それも、分かっている。
夕暮れ。
街の外れで、俺は一人、空を見ていた。
そこに――
「やはり、そうなったか」
旅装の男が、背後に立っていた。
「……聞いてたのか」
「見てただけだ」
男は、腕を組む。
「管理を拒み」
「それでも、無秩序にはならない」
「お前は」
「境界に立つ冒険者だ」
「それが」
「今の世界には、必要なんだ」
俺は、少しだけ考え――答えた。
「必要かどうかは、分からない」
「ただ」
「俺は、そう在るだけだ」
男は、静かに笑った。
「……それでいい」
風が、吹く。
次の瞬間、
男の姿は、消えていた。
追放された無能魔術師は、
この日――
管理される力でも、
放置される力でもなく、
“選び続ける力”を持つ冒険者だと、
世界に認識された。
そして物語は、
次の段階へ進む。
境界は、まだ続いている。
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