↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された無能魔術師、実は全属性適性だったので辺境で最強になります  作者: 蒼月アルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/121

第39話 不在の影響

 その知らせが届いたのは、翌日の昼だった。


「……北の集落で、問題が起きた」


 ロイドが、重い声で切り出す。


「魔物被害じゃない。だが、住民が数人……行方不明になった」


 嫌な予感が、首の後ろを冷たく撫でた。


「場所は?」


「旧鉱道跡」


 ロイドは、俺の目を見て続けた。


「……お前が、断った依頼の場所だ」


 俺は黙って地図に視線を落とす。昨日、掲示板にあった依頼。“助言のみ”を求めた、あの案件だ。


「誰が対応した?」


「別の冒険者パーティだ。腕は、悪くない」


 ロイドは続ける。


「だが、“何も異常はない”と判断して、帰った」


 俺は目を閉じた。責める気はない。彼らには、見えなかった。見えるはずもないのだ。


「……被害の状況は」


「夜になって、集落の外れで、急に音が消えたらしい」


 その一言で、答えは決まっていた。あの時、森で子供が言っていた感覚と同じだ。


「……行きます」


 ロイドは頷いた。


「だろうな。だが、気をつけろ。今回は、お前が“選ばなかった場所”だ」


 現地は、重苦しい空気に包まれていた。泣き声。押し殺した不安。だが、不思議と怒りはない。


 住民の一人が、俺に深く頭を下げる。


「……あんたが、来てくれてよかった」


「遅れました」


 それだけ言って、俺は周囲を見た。魔力は正常。地脈も安定している。だが、世界の“膜”が、ここだけ薄く弱くなっていた。


「……リーファ。無理に近づくな」


「はい」


 意識を研ぎ澄ます。力は使わない。流れも変えない。ただ、境界の“ずれ”を認識する。


 しばらくして、空気がほんの一瞬、揺れた。


「……あった」


 倒壊しかけた坑道の奥。そこだけ、音が消えている。


 俺は一歩踏み出す。次の瞬間、景色が反転し――すぐに、戻った。


 坑道の奥には、二人の住民が倒れていた。息は、ある。


「……大丈夫だ。もう、戻れる」


 応急処置を施し、境界の“歪み”を静かに均していく。数分後、坑道の奥にも音が戻った。


 外で待っていた住民たちが、息を呑む。


「……何が、起きてたんですか」


 問いに、俺は正直に答えた。


「境界です。魔物でも、呪いでもない」


 ざわめきが広がる。


「じゃあ……誰が、悪いんだ?」


「誰も」


 俺は首を振った。


「ただ、気づける人間が、いなかった」


 沈黙が落ちる。その言葉は、責めではない。ただの事実だった。


 帰り道。リーファが、迷いを声に滲ませて聞いてきた。


「……断って、よかったんですか?」


 俺は少し考え、答える。


「断ったことは、間違ってない。でも、俺が“いない”場所では、被害が出る」


 それが現実だ。力を持つということは、選ばなかった場所にも、影を落とす。それでも、全部は背負えない。だからこそ、線を引いた。


 リーファが、半歩だけこちらへ寄って、そのまま止まった。並ぶでもなく、離れるでもない。何も言わずに、俺の歩幅にだけ合わせて歩き続けた。


 みぞおちのあたりに、鉛を飲んだような重さが残っていた。それを抱えたまま、俺は冒険者でいることを選ぶ。この重さごと引き受けることが、たぶん、線を引くということなのだろう。

次話、“管理”が人の口に上り始めます。この物語の後半を丸ごと動かす二文字です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。