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追放された無能魔術師、実は全属性適性だったので辺境で最強になります  作者: 蒼月アルト


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34/121

第34話 それでも冒険者

 辺境の朝は、穏やかだった。


 地脈の異変が完全に収束してから、五日。街道には再び人の往来が戻り、村々には、あの騒ぎが嘘だったかのような日常が息づいている。風は静かで、空気に魔力の濁りもない。


「……本当に、終わったな」


 冒険者ギルドの前で、ロイドが空を仰いで言った。


「ああ。もう、反動もありません」


 俺はそう答え、ゆっくりと息を吐いた。長い異変だった。だが、無駄ではない。


 その時だった。


「アレンさん!」


 受付嬢が、珍しく慌てた様子で駆けてくる。「王都から……公式文書が、届きました」


 ギルド内が、ざわめいた。差し出された封書を受け取る。王家の紋章。だが、以前ほどの重圧は感じない。開いて、静かに読み上げる。


王都公式声明


過去に行われた魔術師評価および追放処分について、

測定制度の欠陥、ならびに現場判断の誤りがあったことを

王都として正式に認める。


特に、アレン・フェルドに対する追放処分は、

国家としての重大な誤りであった。


 一瞬、ギルドが静まり返った。


「……国家の、誤り?」

「つまり……最初から、アレンさんは……」


 誰かが、言葉を失う。俺は文書を畳み、机に置いた。


 怒りはない。歓喜も、ない。ただ、肩の奥で長いあいだ強張っていたものが、ゆっくりとほどけて落ちていくのを感じた。


「……これで」ロイドが言う。「お前は、完全に“正しかった”ってことだな」


「正しさは、どうでもいい」


 自然と、そう口から出た。視線の先では、村人たちがいつも通りに行き交っている。「俺が欲しかったのは、居場所だけです」


 ロイドは、少しだけ目を細めた。「……相変わらずだな」


 その日の昼、ギルドの掲示板に新しい依頼書が貼られた。


「近くの森で、小型魔物の目撃情報です」受付嬢が言う。「危険度は、低ですね」


「俺が行く」


 即答すると、周囲から小さな笑いが起きた。「英雄様が、わざわざ? 割に合わねぇぞ」


「英雄じゃない」俺は、肩をすくめた。「冒険者だ」


 リーファが、隣に立つ。「……一緒に行きます」


「ああ」


 街を出ると、風がやけに澄んで感じられた。――だが、森へ近づくにつれ、指先に微かな引っかかりが残る。


 地脈は安定している。魔力の流れも、問題ない。それなのに、世界の“境目”が、ほんのわずかに近づいたような感覚が拭えなかった。


 理由は、分からない。ただ――どこか遠くから、こちらを確かめる視線がある。そんな気配だけが、背にまとわりついて離れなかった。

異変は終わりました。それでも拭えないものが残ります。その正体を、次話が少しずつ照らします。

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