表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された無能魔術師、実は全属性適性だったので辺境で最強になります  作者: 蒼月アルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/61

第34話 それでも冒険者

 辺境の朝は、穏やかだった。


 地脈の異変が完全に収束してから、五日。

 街道には再び人の往来が戻り、

 村々には、あの騒ぎが嘘だったかのような日常が戻っている。


 風は静かで、

 空気に魔力の濁りもない。


「……本当に、終わったな」


 冒険者ギルドの前で、ロイドが空を仰いで言った。


「ああ」

「もう、反動もありません」


 俺はそう答え、ゆっくりと息を吐いた。


 長かった。

 だが、無駄ではなかった。


 その時だった。


「アレンさん!」


 受付嬢が、珍しく慌てた様子で走ってくる。


「王都から……公式文書が届きました」


 ギルド内が、ざわめく。


 俺は差し出された封書を受け取った。

 王家の紋章。

 だが、以前感じた重圧はない。


 静かに、読み上げられる。


王都公式声明


過去に行われた魔術師評価および追放処分について、

測定制度の欠陥、ならびに現場判断の誤りがあったことを

王都として正式に認める。


特に、アレン・フェルドに対する追放処分は、

国家としての重大な誤りであった。


 一瞬、ギルドが静まり返った。


 次の瞬間。


「……国家の、誤り?」

「つまり……最初から……」


 誰かが、言葉を失う。


 俺は文書を畳み、机に置いた。


 怒りはない。

 歓喜もない。


 ただ、胸の奥で何かが静かにほどけていくのを感じていた。


「……これで」

 ロイドが言う。

「お前は、完全に“正しかった”ってことだ」


「正しさは、どうでもいい」


 自然に、そう口から出た。


 視線の先では、

 村人たちがいつも通りに行き交っている。


「俺が欲しかったのは」

「居場所だけです」


 ロイドは、少しだけ目を細めた。


「……相変わらずだな」


 その日の昼。


 ギルドの掲示板には、新しい依頼書が貼られた。


「近くの森で、小型魔物の目撃情報です」

 受付嬢が言う。

「危険度は、低です」


「俺が行く」


 即答だった。


 周囲から、小さな笑いが起きる。


「英雄様が、わざわざ?」

「割に合わねぇぞ」


「英雄じゃない」

 俺は、肩をすくめた。

「冒険者だ」


 リーファが、隣に立つ。


「……一緒に行きます」


「ああ」


 街を出ると、

 風が、やけに澄んで感じられた。


 ――だが。


(……妙だな)


 地脈は安定している。

 魔力の流れも、問題ない。


 それでも。


 世界の“境目”が、

 ほんのわずかに、近づいた感覚があった。


 理由は、分からない。


 だが。


(……見られている)


 そんな感覚だけが、残る。


 追放された無能魔術師は、

 実は全属性適性だった。


 それはもう、世界が認めた事実だ。


 だが同時に。


 その事実が、

 彼を“ただの冒険者”として

 放っておかなくなり始めていることを――

 彼自身は、まだ知らない。


 それでも。


 彼は今日も、剣を取り、歩き出す。


 称号も、命令も、居場所すら選ばずに。


 どこにも属さないまま。


 ――それでも、冒険者として。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ