↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された無能魔術師、実は全属性適性だったので辺境で最強になります  作者: 蒼月アルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/121

第30話 最後の異変

 異変は前触れもなく起きた。


 早朝、ギルドの扉を激しく叩く音で目が覚めた。外へ出るとロイドと数人の冒険者が、険しい顔で立っている。


「街道の南側だ」ロイドが、短く言った。「魔物じゃない」


 それだけで、背筋に嫌なものが走った。


 現場に着くと、空気が重かった。風は止まり、音までもが吸い込まれるように消えている。踏み込むたび、耳の奥が詰まるようだった。


 地面に手を当てた瞬間、確信した。


「……地脈だな」


 これは、これまでの“小さな歪み”とは、まるで別物だ。


「急激すぎます……」リーファが、青ざめて呟く。


「ええ。しかも、人為的な痕跡がある」


 地脈が、無理やり“矯正”されていた。指先に伝わってくるのは、古い術式の名残。王都式の大規模制御魔法だ。何十年も前、辺境の魔力を王都の都合で押さえつけたときの、残骸だった。


「これ、このままだと……」冒険者の一人が、言葉を詰まらせる。


「数日以内に、暴走する」俺は答えた。「街道だけじゃない。村まで、巻き込む」


 ロイドが歯を食いしばった。「王都に、知らせるべきか」


「……知らせても、向こうでは対処できません」


 事実だった。この制御は、単属性を前提にした王都の魔術では、そもそも解けない。火も水も風も土も、光も闇も――そのすべてを同時に理解し、均衡として扱える者でなければ、手が出せない代物だった。


「じゃあ……」ロイドが、こちらを見る。


 その視線の意味は、分かっていた。俺は地面へ目を落とした。


「まだ、決めていません」


 本当だった。これは、辺境だけの問題ではない。そもそもの原因を作ったのは、王都だ。俺が動けば、その王都までもが救われることになる。それが義務かと問われれば、頷けなかった。


 遠くで地面が小さく鳴った。歪みが、また一段、広がった音だ。


「時間は、あまりありません」


 リーファが隣に立った。「……どうしますか」


 俺はゆっくりと息を吐いた。追放されたときも、崖から見捨てられたときも、誰ひとり俺の力を必要とはしなかった。その記憶が、まだ胃の底に沈んでいる。


 それでも――今、困っているのは、王都の面子でも制度でもなく、そこで暮らす人たちだ。


 答えはまだ口にしない。ただ一つだけは、はっきりしていた。この異変を止められるのは、この辺境で、俺だけだ。


 地脈の唸りが、また遠くで低く響く。何を差し出せば止まるのか、その答えだけが、まだどこにも書かれていなかった。

王都は、自分たちが切り捨てた相手を、必要になった途端に思い出します。次の来訪者は、その顔をしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。