第21話 再会
王都魔術学院の中庭は、以前と変わらぬ光景だった。
整えられた芝生。
白い石畳。
空気に漂う、選ばれた者だけが立てるという傲慢さ。
(……懐かしいな)
だが、郷愁はない。
「これより、王都特別調査任務の編成を発表する!」
魔術局の役人が、名簿を広げる。
参加者たちが、ざわめきながら耳を傾ける。
「――カイル・ローデン」
「――セシリア・ヴァイス」
二人は、当然のように前へ出た。
自信に満ちた表情。
そして。
「――アレン・フェルド」
一瞬、空気が止まった。
カイルが、怪訝そうにこちらを見る。
「……フェルド?」
数秒の沈黙のあと。
「……ああ」
「思い出したぞ」
嘲るような笑み。
「無能で追放された、あのアレンか」
周囲が、ざわつく。
「追放?」
「本当に、あの?」
セシリアが、上品に口元を押さえた。
「まあ……」
「まさか、こんな場所に呼ばれるなんて」
俺は、何も言わなかった。
反論も、訂正も、しない。
その態度が、かえって彼らの優越感を刺激したらしい。
「運が良かっただけだろ」
カイルが肩をすくめる。
「辺境は、人手不足だ」
「雑魚でも呼ばれる」
リーファが、隣で息を詰めるのが分かった。
だが、俺は軽く手で制した。
(……まだだ)
役人が、咳払いをする。
「静粛に」
「続ける」
名簿を見下ろし、淡々と告げる。
「今回の任務では」
「現地判断権限を、アレン・フェルドに付与する」
――一拍。
「……は?」
カイルの声が、素で裏返った。
「な、何を言っているんですか?」
「彼は、E判定の――」
「異論は受け付けない」
役人の声は、冷たい。
「北部街道異変の解決は」
「アレン・フェルド単独の成果と認定された」
ざわめきが、爆発する。
「単独……?」
「嘘だろ……」
セシリアの笑みが、凍りついた。
「……それは、記録の誤りでは?」
「誤りではない」
役人は、書類を掲げる。
「ギルドマスター・ロイド」
「複数の冒険者」
「現地報告、すべて一致している」
カイルが、俺を睨みつける。
「……お前が?」
「本当に、あの魔物を?」
俺は、ようやく口を開いた。
「事実です」
それだけだ。
だが。
その短い言葉は、
かつての“無能”から発せられるものではなかった。
役人が、続ける。
「よって、本任務では」
「アレン・フェルドを中心に行動する」
「カイル・ローデン」
「セシリア・ヴァイス」
二人の名を、淡々と呼ぶ。
「――彼の指示に従え」
沈黙。
完璧な沈黙。
カイルの顔が、みるみる赤くなる。
「……冗談だろ」
セシリアが、声を絞り出す。
「これは……屈辱ですわ」
俺は、静かに二人を見る。
怒りはない。
勝ち誇りもない。
ただ――
「任務です」
「感情は、後にしてください」
それだけ言った。
かつて俺を追放した二人が、
今は俺の背中を見る立場にいる。
ざまぁは、まだ始まったばかりだ。
だが。
立場は、すでに逆転していた。
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