第14話 注目の依頼
掲示板の前に、人だかりができていた。
「……まだ、残ってるのか」
「誰も手を出さねぇな」
貼られているのは、一枚だけ色の違う依頼書。
紙の端には、赤い印が押されている。
「注意案件、か」
内容を読む。
《街道北部・異常個体の討伐》
目撃情報:複数
危険度:不明
既存の討伐隊が撤退
報酬:高
リーファが、少し不安そうに俺を見る。
「……撤退、って」
「普通なら、避けるな」
危険度不明。
しかも、すでにベテランが下がっている。
だが――
(……やっぱり、だ)
胸の奥が、微かにざわついている。
村の周辺で感じた違和感と、同じだ。
「おい」
背後から、聞き覚えのある声。
振り返ると、ガルムが腕を組んで立っていた。
「それ、気になってるだろ」
「……ええ」
ガルムは、短く息を吐く。
「俺たちが行った」
「Cランク二人、Bランク一人」
「結果は?」
「……深追いできなかった」
「連携が通じない」
その言葉で、確信に近いものが生まれる。
「魔物が、考えて動いている」
ガルムが、目を細めた。
「……新人にしては、いい勘だ」
周囲の冒険者たちが、こちらを見ている。
さっきまでとは、明らかに違う目だ。
「アレン」
「お前なら、どう見る?」
問いかけ。
これは、試しだ。
俺は、少しだけ考えてから答えた。
「単体の強さより」
「魔力の流れを乱す何かがいる可能性があります」
ざわり、と空気が動く。
「……なるほどな」
ガルムは、笑った。
「正直に言う」
「俺は、もう一度行く気はない」
だが、と続ける。
「お前が行くなら」
「止めない」
受付嬢が、こちらを見て声をかけてきた。
「……アレンさん」
「この依頼、受けますか?」
リーファが、俺の袖を掴む。
「無理は……」
俺は、彼女を見る。
「危なかったら、すぐ下がる」
「約束する」
一拍の沈黙。
そして、リーファは頷いた。
「……分かりました」
「でも、私も行きます」
受付嬢が、書類を差し出す。
「では……」
「正式に、受注ということで」
木札に刻まれる、俺の名前。
周囲の冒険者たちが、息を詰めて見守る。
「……新人が、あれを」
「正気か……?」
俺は、依頼書を手に取った。
「行ってきます」
ガルムが、背中に声を投げる。
「……生きて戻れ」
「それが、一番の報告だ」
街の外へ向かう途中、リーファが言った。
「……怖いですか?」
「少し」
「でも――」
前を見る。
「放っておけない」
辺境で増え続ける魔物。
考えて動く存在。
これは、ただの討伐じゃない。
追放された無能魔術師は、
この日、**“選ばれる側”**になった。
――街道北部へ。
異変の核心へ、足を踏み入れる。
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