006 幼馴染×お嬢様×漢女=トラブル
現れた女の子の名前はイアンス・ヘカット・T・バートリ。
僕の事になると何故か絡んでくる代表ともいえるかなあ。
悪い子では無い筈――
「全く、同じ世代ですのよ、もっと堂々となさりなさい、神祖として従魔を従わされたのはお祝い致しますが、この体たらくは頂けませんわ」
「うーん、まだ2回目なんだよ」
「魔術知識は私と張り合うのですから、それを制御できますでしょう? まあ2回目という事で大目に見て差し上げますわよ」
「イアンスは相変わらずだな、ルクスは魔力を今までもってなかったのだから大目も何もないだろう」
十六夜さんが庇ってくれるけど、言ってる事は正論だし悪気は無いんだよね、多分。
但しお嬢様だけど昔から気が強くてツンツンしてるんだよなあ。
僕も苦手な相手ではあるけど、こうして突っかかってくるのは、魔術を使って人から不死者になった始祖カーミラ・ヘカットの一族のお嬢様だから、魔術に関しては一家言あるからだと思ってる、よく議論を交す仲だし。
でも、まだイアンスは良いんだよ悪気があって言ってるんじゃ無いのが判るから。
それよりも、コイツが問題なんだよなあ。
「駄目よ~、坊やは所詮坊やだもの。魔力を得たって迷惑は掛けて欲しくないわ」
「……」
少なくとも同じ年齢なのに、何故坊やと言われないと駄目なんだろうか。
「全くこれだから、私みたいに高貴で美しくないのは罪なのよね」
意味がわからないんだよ!
迷惑を掛けたのは悪いと思うけどさ、お前には迷惑掛けてないだろう。
ジル・A・レイス、こいつは本当に苦手だ。
相変わらず、言う事が嫌味か意味不明な事ばっかりなんだよね……
髪を掻き上げる仕草ってしないと喋れないのかなコイツは。
と言うよりだ、此方こそ同じ吸血鬼としては、その仕草と喋り方を如何にかして欲しいよ。
男なんだから。
こいつはナルシストが突き抜けて――
いや一族全員男女逆転だって兄さんが言ってたなあ。
「私みたいに美を意識すればいいのでは無くて、そうすればこの様な無様な事態は引き起こさないわ」
「次はミスしないように注意する、けど君みたいにはならない」
コレだけはハッキリ言っておかないと、また化粧を施される事態なんて嫌だ!
「まあ言うじゃないの、全く素材だけはいい物持っているのに」
ジルも真祖の一族で優秀なのは確かだけど……
どうして突っかかってくるのか。
というか人に化粧を施そうとするのか、ソレを問いたいよ。
あれか、君にも友達がいないからって来なくて良いんだよ。
君には眷属と言う部下が居るだろう?
出来れば大人しく魔法薬作っていて頂きたい、ホントに。
「グゥルルル『主よ、噛んだ方がいいのではないか』」
警戒したくなるよね、判る、判るけどコレでもヴィヌヴだからなあ。
『こんなのでも家同士は仲がいいから……それより朔大きさを変えよう』
『承知――』
普通の狼より一回り大きい姿になった朔は威圧が少し減り凛々しさとフワフワ感が増した。
「「可愛い」」
ジルに近寄らなかった十六夜さんとイアンスがこうして即座に走り寄るほどにフワッとしてる。
――パンパン。
「おっし、お前らお喋りはソレぐらいにしとけ、授業中だって事忘れんなよ! たらたらしてたら全員を的にしての結界訓練に変更するぞ、あ、それも悪くない――」
それは悪い発想だよラウラ先生、戦乙女な血が疼いたんでしょうけど勘弁して下さい。
「「「すいません!」」」
「仕方が無いですわね」
「やぼねえ~これだから独り――」
そこの二人も大人しく従ってよ、っていうかジル――
死にたいの!?
一瞬にして視界からラウラ先生の姿が掻き消えた。
「ふむ、元気が有り余ってるようだなぁレイス」
「ヒゥ、何時の間に背後に!」
「ハッハッハ、貴様ら、これが正しい魔術の使い方の見本だ!」
「イヤァー――――――」
的のある方向へ向けて投げ飛ばされるジル。
――ドッゴーン。
ああ、これは――
「オラァ――防げよ、真祖でも私の攻撃はちょっと痛いぞ?」
それ痛いってレベルじゃないし、防げって言う前に着弾してるよ!
「さて、神祖の種族魔法の従魔を見たわけだが、これと普通の契約魔法によって使役する使い魔との違いが判るか? そうだな――バートリ説明しろ」
え、ジルはどうするの?
放置なの、すっごいさらっと流してるけど。
「あぁ、ジルは放置ですのね、当然でしょうけど……」
あ、そこは賛成するんだ。
というか当然なのか、ご愁傷様だなあ。
「契約魔法、魔術によって契約できるのは生物もしくは精霊や精霊獣と呼ばれる存在する物ですわ、神祖の魔法からヒントを得て開発されたものですわね。神祖の従魔に関しては魔法生命体を創り出すという他の種族では出来ない行為ですわ、最も近いとすれば精霊獣との契約ですが、使用する魔力量や性質の違いは大きいかと」
伊達に偉そうじゃないよねイアンスって。
実家が魔術大家だけはあるね。
「宜しい、お前たちも簡単な使い魔契約位は結んでいる者もいるだろうし、相性さえ良ければ高位の精霊獣や精霊なんかと契約は結べる。だが契約魔法で契約した使い魔ってのは自己制御し難い、何故なら彼らは契約で縛られると言えども自立した存在だからだ。だがソレを忘れず研鑽を積めば強力な力を手に入る。夫々考えて契約するようにな」
ジルは結局放置されているのだけど――
「さて、では的に向けての魔法と魔術の訓練に移行する。」
大丈夫かな?
まあ、格好はあんなだけど実力はあるから大丈夫だよね!
※VINVについて、神祖、始祖、真祖の三つの吸血鬼の家系。三卿とも言われる吸血鬼貴族。
神祖はドラクルの実家竜とハーフ(精霊と神子)の間に生まれた闇の盟主。
始祖は魔術をもって不死者になった魔術大家。
真祖は神を呪った錬金術師が不老不死研究の末に不死者となった。
こういう設定になています。




