005 従魔=唾液+接吻
当然のように問題があった。
僕の魔力量だ……
『所で主、顕現するのは良いのですが、魔力量が少々心もとないかと』
こう告げられた瞬間に自分の迂闊さを思い知ったよ。
今の状態だと朔を使えば枯渇してしまう。
そりゃそうだよね、神祖の種族魔法でも最強のレベルだもの。
消費が多いのは当たり前じゃないか。
思わず頭を抱える僕、た、頼めばいいけど、なんて頼むんだ。
「次の授業で必要だからもう一度十六夜さんの瞳に」
とか、せ、接吻して唾液を飲ませて下さいとか――
言えないよ!
「無理無理ぃ」
「何が無理なんだ?」
「いや、だから――」
――ハッ!?
まて、もうこのパターンには嵌まらないぞ!
「いや何でもないよ」
「でも私の瞳がどうとか言っていなかったか?」
僕の平静を装った演技は無駄骨だったよ。
そこから心の声が洩れてたのかっ!
「あ、アハハハ、いや少し魔力の心配をしてて」
しまったつい本音がぁ。
あ、焦ると碌な事を喋らないな、僕って。
「そ、それは詰まりもう一度私に口付けをしなければいけないという事かっ」
「い、いや一回だけなら枯渇寸前で――」
「ならば、いいぞ、た、但し出来るなら接吻はだな、その、目的は判っていても刺激的過ぎるからだな――」
ラウラ先生、言っちゃったんですかぁ!
いや、まあ魔力があっても涙とか瞳って笑われたけど。
――親指を立ててこっちにいい笑顔してるラウラ先生の顔が幻視できるよ。
ノォォォ!
いい仕事しただろじゃないよぉ……
「私の唾液を舐めるという事で――」
ちょっと待って!
十六夜さんそれは難易度が逆に跳ね上がっている気が小生は致しますのですが?
「だ、唾液を舐めるの?」
「う、うむこうペロってしてくれた方がそのなんだ――という事でいいぞ」
どうして彼女はこんなにも男前に……
僕を男と意識してないからかな。
それはそれで悲しいけど。
うん仕方が無い。
肩を掴んで、し、失礼します。
ああ、プルっとした唇――
「じゃあ、失礼します――ッァア」
彼女の唇を濡らす唾液を舐めとる。
そうだ、これだ魔力が溢れるこの味、もっと――
直接奪いたい。
「ッ――」
あ、危ない、僕は今何をしようとしてたんだ。
信頼してくれている親友の唇を奪おうとするなんて。
「あ、有難う十六夜――さん」
「そ、そうか、やはり魔力量が増えるのだな」
ちょっと照れくさいけどお礼は言わないと。
其れにやっぱりこれで魔力量が徐々に増えていく、一時的な吸血による変化だから長時間は持たないのだろうか。
それより危険なのはこの全能感だよ。
無理やり唇を奪おうとしたり、呼び捨てにしそうになったりと、なんか危険だ。
「ああ、なんだか魔素も取り込めるようになるから」
「一度ルクスのご両親にお聞きしたほうが良さそうだな」
十六夜さんの言うとおり、一度今日にでも詳しい事は聞かないといけないな。
兎も角、これで魔力に関しては大丈夫だ。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「では、折角だ、魔法訓練場なら問題はない、種族魔法の例として――ドラクル見せてくれ」
「落ちこぼれの半端者の魔法なんて」「ああ、どうせ大したこと――」
まぁ、今までが今までだからね、でも朔を見たら驚くよ?
「はい、いきます『ファントムベウル』朔!」
僕の胸の魔憑刻印が光り輝く。
現れるのは朔の巨体、体高だけで4m程はある。体長も10m、今の僕の魔力で現れる事の出来る最大サイズだ。
黒銀の毛も光を反射してたりするし、艶々しててカッコイイよね。
「「「うぉおお!」」」
見惚れていたら朔は首を動かして唖然としている皆の方を睥睨して――
「ヒッ!」
アッ!
僕がそう思った時には一人の生徒を押さえ込んでいた。
「ヴォォォガァア!」
「た、助けて!」
さっきの時間に僕の胸倉を掴んだマグベスに向かって吼える朔。
怒ってたんだね、不甲斐ない主人で御免よ。
「朔! 別に気にしてないから、もう大丈夫だし――ラウラ先生、さっきの時間の事を怒ってるみたいです、ちょっと待って下さいね」
尻餅をついて失禁した彼をこれ以上怖がらせる必要もないよね。
「ヴゥゥゥ『宜しいのか、こ奴は無礼者ですぞ』」
有難う朔。
でも大丈夫だよ。
お礼に撫でてあげると仕方が無いという風に頬を寄せてくれる。
『いいんだ、十六夜さんが直ぐに助けてくれたし』
「クゥォーン『――承知』」
どちらかと言えば大した事は無いって言われたのを気にしたのかな。
狼は誇り高い――
そして主従に従う幻魔だからか、それとも彼女の影響か。
忘れてた訳じゃないけど朔には十六夜さんの魔力も含まれてるんだよね。
「ま、少しアクシデントではあったが、契約でもなくどんな魔法にも属さない種族特有の魔法だ、ドラクルは知っていると思うが神祖の一族だからな、こうして魔法の性能も全然違う。これを見ればキュクロープス如き一捻りだったと判っただろう。それと神祖達の魔法で生み出された幻魔達は総じて主人の為になら自身の判断でこうして動くからな。気をつけろよ」
お世話掛けます……
これで余計な真似をする生徒は減るとは思う。
それでも元から絡んできてた奴とか、誘蛾灯みたいに要らないのは寄ってくるんだよなあ。
こんな風にね。
絶対に寄って来るって思ってたよ。
「オーッホッホッホッホ! 自らの眷属も御していない様ではまだまだですわー、ちょっとマシになったという噂を聞いておりましたのに残念なお方です事」
「あらやだ、落ちこぼれが又もや落ちこぼれてるわ、半端者は所詮魔力を得ても変わらないようね。同じ吸血鬼を名乗るの恥かしくなるのだから、如何にかして欲しいものだわ」
そんな嫌味を言いながら一組の男女が僕の前に現れた。




