004 精魔×戦乙女=美人教師
「おい、どう言う事だよ、何でルノアが転校してんだよ。教えろ、お前何やったんだよ」
翌日、教室に入った途端に僕は級友の一人に迫られた。
胸倉を掴まれてしまい体が少し浮き上がるが、直ぐに足が床に戻った。
僕を掴みあげたその手を捻り上げたのは十六夜さんだった。
「おい貴様、私が先生に聞いたのを話して、彼の名誉が傷ついてもそれでも聞きたいのか?」
「何だよ、アイツは俺の親友だったんだ、ソレが突然何も言わないで転校なんてありえねえ」
「ならば所詮はその程度の友だったと思え」
十六夜さんがそう言ったのに、いや、そう言ったからこそ更に声が上がる。
「そうよ、カインも突然の転校よ」
「ルッツァもだ、何かあったんでしょ」
彼女達は残り二人の知り合いだったのかな。
あの時逃げ出した時の事を教えていいのか。
僕も彼女も一応は被害者なんだが、彼らが転校した裏には僕の実家が関わってそうだし。
「そこの半端者のせいで――」
「そうだ、演習なんかに連れて行くからルッツァが」
「やっぱりテメエなんだろ? 言えよ! 何でだ」
これは言わないと収まりがつかなさそうだなと思った所に丁度扉が開かれた。
――ドンッ
黒板を叩く音で注目が其方に向く。
非常に凛々しい姿だけど背が足りないからね。
「おら、お前ら取り合えず着席しろや、そこで話してる件どうせ転校の件だろ? 説明してやっから」
本当にラウラさん、流石片親がヴァルキュリアだけあって男前すぎると思う。
「昨日付けで転校した生徒三名だがな、あれは己を恥じての転校だ。昨日の演習訓練にキュクロープスが出現しちまったのは知ってるな。あいつらは其れに怯え逃げ出す際にやっちゃならん事をやった。それが発覚した事で自主的に転校だ。いいか、普通なら転校じゃなく退学処分でも足らない位だ、そうせずに自主的な転校処分で済ませているのはドラクルと大神からの嘆願があったからだ、以上」
うわぁぶっちゃけちゃったよ。
いいのかなぁ。
凄い睨まれてるなあ。
「それと言っておくが――キュクロープス、一つ目を処理したのはそこのドラクルだからな? 妙な事をするなよ」
「「「――なっ」」」
それも暴露ぉ!
一斉に皆が好奇心で見るって云うよりも、疑いの眼差しが突き刺さってるんですが。
「馬鹿な」「そんな半端野郎が」「アイツはハンパイアだろ」「ありえない」「でもそう言えば魔力が」「おいおいアイツの家系で魔力持ちになったら」「嘘よ」「アイツのせい」
凄く騒然としちゃったんですが、ラウラ先生。
あ、これはやっちゃったと思ってる顔だ。
澄ましてるけど間違いない。
この人昔から澄ましてる時程焦ってるんだ、兄さんとの言い合いでもそうだったし。
そうなると、大体が腕力で――
――バァーン
まあこうなるよね、でもそんなに叩いてると黒板って割れるんだから気をつけてよ。
「よし、黙れ貴様ら! 授業を始める」
ブッ――
力尽くだよ、ノープランだよ。
こっち見んな、なにその後は任せた的な眼差し。
僕と十六夜さんは思わず顔を見合わせて溜息を吐くしかなかった。
「いいか、貴様ら、魔力があって事象改変能力が便利だからって魔術が役に立たない訳じゃあない。夫々に一長一短がある――――――」
流石ヴァルキュリアだけあると言えばいいのか、統率力は凄いし、こうして真面目に授業していると先生だなあと思える。
でもなあ、あの適当な性格は間違いなく精魔《リリスの血族》の影響が出すぎだと思う。
こういうのを残念美人――
「ドラクル――見とれるのは構わんが、そんなに私の顔をみてどうした」
「いえ、美人の顔は何時見ても心が表れるなあと思っただけです」
「ふむ、うむ、そうかだが顔より教本を見るようにな、魔法と其れに順ずる種類を述べろ」
ほ、本当に読唇じゃなくて読心術を使えるんじゃないのかっ。
「発現方法として魔法、陣形魔術、刺刻魔術、挙動魔術、符陣魔術、魔導式、魔道具、魔法薬があります。内容は大きく分類して、種族、契約、熱量、力量、元素、形成、源力、生命、結界、次元時空、精霊、召喚転移、付与神代、古代、幻想の種類があり発現方法等は向き不向き、利用出来ないものがあります」
魔術にしろ僕にできる事はこれしかなかったからね、特に付与や術符、魔導式や魔道具作成には興味があった。
実際には厳しいけど魔力が無くても魔石を使って作る事ができる。
それなら家族の為に、彼女達の為に何も出来ない僕でも力になれる可能性もあると考えたんだ。
これからは自由に研究が出来るんだもんなあ。
「本当は種族魔法の例として使わせたかったんだが――」
ちょ、まだ試してないんだけど?
「教室が破壊されたら拙いからな、この後にしよう」
結局試すのか――
いや、まあその方が何かあった時に助かるか。問題はないと思うけどね。
『大丈夫だよな』
『我ならば、顕現するだけなら問題は在りませぬ、主の素晴らしさを是非披露しましょう、しかし――』
良かったこれなら安心して使えそう。
そして順調に授業は進み、最初の休み時間が訪れた。




