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030 幸福+終わり=乙女達×俺

 世界には緊急事態でも痴話喧嘩してしまう夫婦はいる、おそらく世界の終焉が訪れようとそれは変わらないのかも知れない。

 だが、唇は流石に拙いと判断して瞳からにしたんだが、その接触さえ怒るとは思わなかった。


「判った、お前たちも後で相手するから、今はジルに集中してくれ、半分に切っただけじゃ吸血鬼は滅びないからな」


 何故俺は奴を相手にしたときよりも疲れているのだろうか。

 だが、それだけ愛されていると言うことで納得する以外に選択肢が存在しない。


「判りましたわ、約束ですわよ」

「あ、甘えさせて貰うのもアリだろうか」

「それはいいですわ!」


 まあいい、喜んでいるし、ダメージを負ったのは俺だけじゃない。


「ワタシヲサシオイテヤッパリィ」


 謎のダメージをジルも負っているからいいさ、もう――



 そんな茶番で時間を潰してしまったからだろうか、突如現れた襲撃部隊に俺は不覚を取ってしまった。


 ――ダダダッダダダッ


 降り注ぐ銃弾の雨と魔法の攻撃、大した威力ではないし、浮遊する金牛の盾で全て防ぎきったのだが、そちらに気を取られた瞬間に、迫った敵に十六夜が吹き飛ばされ、イアンスが捕まってしまっていた。

 それに気を取られた俺には続けて爆発の魔法が直撃してしまう。

 大したダメージには成らないが、完全に隙をつかれてしまったのは痛い。


「十六夜! イアンス! てめえら……」


 即座にイアンスを取り戻したいが、今は殴り飛ばされた十六夜が心配だ……

 俺は瞬時に吹き飛ばされた場所へと移動した。

 直撃した拳によって十六夜はかなりのダメージを負ったが、不幸中の幸いなのか吹き飛ばされた先が細い木々の密集地だった為にクッションとなり、気を失う程度で済んだようだ、きっと姉さんとの訓練で吹き飛ぶのが巧くなっていたんだろう。



 目の前に突如現れたのはフリードリッヒらしき人物と上半身を露にした吸血鬼の男、直接話したことは無いが見知っている人物に似ていた、夜会で見た時よりも変態度合いが増しているが、ジルの兄で間違いはないだろう、ということは……

 つまり今回の件の黒幕だったのはこの二家の息子達が手を結んでいたと言う事か。


「ああ、愛しいイアンス」

「汚らわしい、その手で触るな一族の恥が!」


 フリードリッヒに捕まったイアンスが暴れて逃れようとするが、逃げられそうにない。

 俺の妻の腕を掴むとは、十六夜の怪我といい、許しがたいが――


「やれやれだわね、フリードリッヒ、理解が及ばないわぁ。令嬢にしてはエレガントさに欠けるのではなくって?」

「ヴィクトール、君とは言えど私の最愛なる妹を侮辱するのはやめて貰おうか?」


 そして俺が彼らをらしきと言ったのは彼らの肉体が大きく以前とは違うということだ、ヴィクトールは真祖の一族だから判るが、フリードリッヒは始祖の一族……それが変貌しているとは。

 そっちの意味でも手を組んだということか。


「ああ、其処に居るのはドラクル家の落ちこぼれ、ルクノクスか」

「……」

「あら、この子なの、なんだか雰囲気が違うから見違えちゃったわぁ、ジルのー想い人なのよねぇ、でもぉ、愛する弟を斬った子はちょっとお姉さん許せないのぉ」

「……言いたい事はそれだけか?」

「「は?」」

「お前たちがこの世に残す言葉はそれだけかと聴いたんだ」


 だから早く答えてみろ、本当なら今すぐにでも首を切り落としたくて仕方がないし、死ぬまで首だけにして懺悔させたいんだ、もしも謝罪の言葉を口にするのなら、消滅させるだけで済ませてやる。


「あらぁ、幾ら愚かだからって、私たち三人を相手に勝つつもりよ、この子」

「全く落ちこぼれとは度し難いな」

「ネエサマ……」

「ああ、こんな姿になってしまって……お姉様がきっちりと仕返ししてあげるわぁ、丁度試作が終了したコイツでね?」


 ――ブシュ


 懐から先ほどと同じような注射器をとりだしたヴィクトールは自分ではなくフリードリッヒの首筋へとインスペリン型注射器を押し付けて魔薬を打ち込んだ……


「ククク、これで先日の侮辱のレイヲシテクレルワ、覚悟シロヨムシケ――」

「それともう一本よぉ」


 ――ブシュッ


 ヴィクトールはそう言うと同時にもう一本の、真っ黒なとても薬とは思えない液体――先ほどのモノもある意味薬とは言えない輝くような液体だったが――をフリードリッヒの首筋に突き立てていた。

 

「なっ!? グガァアアアアア」


 驚愕の表情を見せたフリードリッヒ、どうやらもう一本打たれるとは知らされていなかったのか、絶叫を上げながら蹲ってしまった。

 そしてジルは自らその塊と融合していく……

 流石は錬金術の大家ってところか、まさか他の吸血鬼を手に入れて強化するとまでは思わなかった。

 グロテスクとかそういう問題以前に狂ってるな。

 しかも、捕らえてたイアンスを放しても気にしてない、そうか、目的が違う集まりっていうことか……



 そんな緊迫した場面に、暢気というか、場に似つかわしくない声が聞こえた。


「おいおい、なんだこりゃ、事情を知って急いで来てみりゃ、変人どころか化け物がいるじゃねえか」

「ラウラ姉、何しに――」

「お前なあ、いきなり授業前に生徒が5人居なくなれば探すに決まってるだろうがよ、ルクス……お前は私を殺したいのか? よっと、イアンス無事か」


 そう言われればそうか……

 戦闘衣装に包まれて飛来して俺の隣に立ったラウラ姉は精魔の装束に身を包んでいて中々にセクシーだった。

 まったく、戦闘用なら戦乙女用を使わないと小母さんが悲しむって言ってるのに……

 だが、いいタイミングで来てくれたよ、ちょっとあの変異した化け物ッぷりには正直驚いてたんだ。


「うふふ~、なにそのチンチクリン、ロリで美少女キャラですってぇ、受けないわよぉ」


――ブチィ


 おい……

 それは禁句だ。

 というかお前ラウラ姉の美しさが理解できないとか変、ってああ、変態だったな。


「ククク、おいルクス、あの化け物は私が殺っても構わんのだろう?」

「ああ、ラウラ姉の好きにしていいんだけど……その前にお願いがあるんだけどいいかな?」

「なんだ、別にお前のお願いっていうならお姉ちゃんはいつでもウェルカムだぞっ」


 まあ、可愛いから許すけど、さっきのチンチクリンでかなり心が不安定だなあ、でもウェルカムっていったもんな!

これは許されるかどうか判らないけど……


「ならラウラ姉、こっちにちょっと……」


 これで寄ってくる不思議な感覚……

 別に魅了はつかってないんだけど、マーリアといいちょっと無用心だなあ。


「ん?――ッゥ」

「ンッ――プハァ」


 ごめんね、怒られるのは覚悟の上だけど、相手があの蹲りながらドンドン肥大化する魔力の化け物だとちょっと不安だったんだ。

 それにしても、ラウラ姉の魔力は最高だ、すばらしい味わいだよ……

 考えてみたら……家の兄クラスとタメを張るだけの実力者の魔力を完全に取り入れたのはこれが初でもあるのか……

 姉さんは家族だからノーカウトになるしな。


「な! なななな! 何するんだルクス!」

「あ、あなた?」


 但しだ、ちょっとさ、いくら戦乙女の血もひいているからっていっても精魔の血も引いてる癖に少し初心すぎじゃないかな?

 そこまで顔を真っ赤にしてワタワタするなんてイアンス達だってしなかったよ?

 イアンスも騒ぐほどじゃないし、そこまで吃驚するか普通。


「いや、だからお願いって言ったじゃないか? これがお願いだよ」

「だ、だからってそのき、き、チ、チッスをするだなんて聞いてないぞ!」

「だって、お願いだしさ、この方がしやすかったし、ラウラ姉の事は昔から憧れだったからね、それにアレに対抗するにはどうしても必要だったんだ――」


 それにキッスがチッスになってるって本当に初心すぎ、でも僕が憧れてたのは事実だし、この際役得って事で見逃して貰いたいなあ。

 こんな風に、コイツの攻撃を受け止めるのに必要だからさ!


 ――ゴンッ


「なっ、なんでソイツの攻撃を受け止めてるのよ、高が落ちこぼれって聞いてたのに……何よその魔力!」

「ラウラ……あれ、任せていいんだよな?」

「ああ、なんだか騙された上に、やたらと尊大なルクスと納得いかないところだが――アレは私が殺ってやるさ、妙に力も沸いてきやがる、だけどなルクス……ファーストキッスの代償は後でもらうからな!?」


 ………………

 …………

 ……

 ――ハッ


 おい今ファーストキッスって言ったか……兄さんと同じ年月でファーストキスだと?

 おいおい冗談はよしてくれ。


「ちなみに何を考えたか知らんが……冗談ではないからな?」


 うそぉまじで?

 代償って何かなあ……


「お前は戦乙女として一番最初に連れあう相手になってもらおうか!」


 ババーンって指さないで、もう……

 それ可愛いって判ってないだろ?

 さて、俺はその言葉を無視してだな。

 この肉の塊みたいな化け物をミンチというか原子状態にしないとな……


「結婚なら俺から後で正式に申し込むからね!」

「「ナッ」」


 ラウラ姉もイアンスも驚くことじゃないだろう、責任を取るとなればそういう話になるだろ?

 それにだ、ラウラ姉とだったら問題ないさ、俺を小さい時から知ってる一人だし。

 だからそっちも気をつけろよ……


「にゃあああ!」


 あ、ちょっと揶揄いすぎたかも……

 まあ、防戦してくれているだけでもいいし、俺がこっちのデカブツを倒すまで無傷でいてくれればいいんだから……


「従え『ファントムドラゴン』」

『命名はあとだ、頼むぞ』

『ふむ、戦向きの力と言えるかどうか判らぬが、尽力しましょうぞ早速、あちらの十六夜殿を治療しておきましょう』


 へぇ、死者を導く者でありながら精魔として生命に関わるからか?

 属性が命だからか、肉体の活性率が上がった。


「グゥルァアアアア」

「騒がしいな――」


 全く雑音だ……

 騙された事を少し哀れには思うけど、許す気は無い、それに良いのだろ? 

 綺麗に消滅した方がこのままその姿で生き恥を晒すよりは。

 生きてても、家の名に傷が付くし、元にも戻れないだろう。


 だから最高の魔法で屠ってやるよ。

 魔術大家を送るに相応しい世界でも類を見ない最高の魔法でね。


「『五重詠唱魔法(クインテット)』『ディザナス』」

 俺の唱えるのは風の最上級魔法、竜巻を起こし風の刃で切り裂くもの。

『リヴィヴァルス』

 朔が唱えたのは炎、一帯全てを炎で多い尽くし酸素を無くそうが魔力の限り燃える地獄の炎。

『ラナロルロス』

 金牛は全身を貫く溶岩の槍、地面から生えるそれは皮膚を貫き固まりながら纏わりつき動きを阻害する。

『ヴィヴァチェイザ』

 白竜は落雷の複数同時発動の魔法、一本の落雷ですら下級吸血鬼を行動不能に陥れるものを無制限に放つ。

『ヴァディルザナヴローヴァ』

 そしてアーティーは結界、以前にジルが発動させた魔術の物を強力な魔法によって作り上げる牢獄。


 全部最上級魔法だけで構成した攻撃のエネルギーで灰すら残さず消え去れよ。


 ――ゴゴゴゴッグルゴゴゴアアゴゴッ

 

 最初から全力に決まっているだろう?

 ああ、結界に突撃しても無駄だよ、其処に吹き荒れている魔力の攻撃でもびくともしないのに崩れるわけが無いだろう。

 時折聞こえるような叫びが徐々に小さくなり、やがて消え、炭はもちろん灰さえ残さずジルとフリードリッヒの融合した化け物は消えていく。


「まさか、私の最高傑作に何もさせないだなんてありえないわっ」

「てめえは私の獲物だろうがぁ、アアン! 変態が私を侮辱した罪は死ですら生ぬるいんだよぉ」

「ひぃ、いやぁぁぁああ」

「一遍死んで出なおして来いやぁ」


 ――ドッコーン


 あー強化する必要は無かったんじゃないか、さすが、ラウラ姉だわぁ。

 見事に一撃で真っ二つにした上で発動中の魔法の中に放り込んだよ……

 俺は投げ込むなよ?


「フ、フッフッフ、さあルク、いやドラクルさっきの事を説明して貰おうかっ」


 だってこっち向いて笑ってるし、ちょっと怖いよ!?

 これ、説得するのかあ……

 俺は諦めてラウラ姉を手招きした。


「判ったから、説明するよ、俺が魔力を得た経緯は知ってるよね、だから――――と言う訳なんだ、でもね、ラウラ姉が俺の小さい時から憧れだったのは本当だよ、だから一緒にいて欲しいんだ」

「にゃぁ!」


 大事なのはそこだ。

 なおも「だがっ」と言う口はもう一度唇を重ねて黙らせた。

 この人相手には多少強気でいかないと駄目だろうな。




 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



 数日後――

 ドラクル本家の敷地内で僕らは転送陣を目の前にしていた。

 あの騒動はそれなりに世界を揺るがしかけたが、僕の活躍というニュースで塗りつぶし、企みに参加していた者達も眷属の活躍によって一網打尽と相成っていた。


「それで結局はなんだったんだ?」


 若干不機嫌そうにラウラが事の真相を尋ねてきた。

 計画の全貌は判明したが、事は単純で僕らの知りえた事意外に大した理由は無かった。


「バートリ家の長兄フリードリッヒとレイス家のジル、それにヴィクトールが謀って夫々の思惑で動いてたっていうところでしょうか……、フリードリッヒはイアンスを手に入れる為、ジルは僕を、そしてヴィクトールは吸血鬼の頂点を目指した――そんな所でしょう」

「全く迷惑な話だ、その為にわ、私は……」


 その格好で言われてもなあ……


「まあ、ラウラさんも宜しいではありませんか、こうして一緒にいるのも楽しいですわ」

「そうだな、ラウラさんから聞く旦那様の話は面白いですよ」

「わ、私はどうしてここにいるのだろうか、なあ、わ、私は敵としてだな」


 イアンスと十六夜は受け入れるのが早くて助かるんだけど、納得してた筈のマーリアまでラウラの影響をうけて動揺しだした……

 でもな、ラウラもマーリアもその純白の花嫁衣裳を着ている時点で同意してるでしょ、僕との結婚?

 嫌だって言われない限り逃すつもりはないけどね。

 それよりも幻想界の偉い人たちを待たせるわけにはいかないんだよ。


「大丈夫さ、僕がこれから全員幸せにしてあげるから心配しなくていいよ、だからおいで」

「「「「アッ」」」」

 そして今日も俺はこうして彼女達の瞳に唇を重ねて接吻する。

 永遠の愛を誓うために……

 僕らの物語はここから始まるんだからね。

お読みいただいて有難う御座いました。

一応ここで一旦、完結にさせて頂いて貰います。

描写方法とかもうちょっと悩んでみて後日一から書き直すかもしれません。

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