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028 遅刻+真相=強襲

 訓練場に現れたのはマーリアではなく、犬上を引き連れた葛葉だった。

「ルクス様、まだ確定では御座いませんが至急連絡すべきかと参上いたしました」


 そしてその口から出たのは彼女にしては珍しい台詞、確定情報では無い未確定な情報(もの)を葛葉達は僕らに連絡しないのが普通だ。

 要はその必要性が生じたと言うことを意味している。


 僕の顔も自然と引き締まったものになるし、変わらず同じような家に生まれた彼女達も表情を引き締めた。

 授業前ではあるが、ラウラ先生には目配せだけで事がすんだ。

 長年の付き合いだから助かる……

 僕らは訓練場から離れて報告を聞いた。


「葛葉が確定情報ではないにも関わらずと言うことは緊急事態か」

「犬上の報告から調べました所、マーリア嬢誘拐の可能性があり、レイス家が動いた模様です」

「何!?」


 流石にマーリアの遅刻が実は誘拐であり、それがレイス家によるものだと告げられて声を上げて驚いてしまった。

 いや、でもここは冷静に対処すべきだ……

 僕は自分にそう言い聞かせることで心を落ち着けて報告の続きを聞いた。


「犬上がルクス様をお待ちしておりました際に、校内から運び出される荷物から暴れる音と嗅ぎ慣れた匂いを嗅ぎつけ、その者達に誰何した結果抵抗を受け戦闘状態の発生。結果一名を拿捕したものの荷物を乗せた車両はそのまま逃走、我が家の監視網からの連絡によりレイス家と判明しました」

「ジルが動く理由……吸血鬼を目の敵にはしていたが、ジルには近づきたくなさそうだったのだけれどな」


 そこまで判明しているならば事実なのだろうけれども、マーリアが拉致された可能性ってなんだ?

 イアンスと十六夜が夫々の考えを話す。


「あなた、これはそうした理由以外の可能性も」

「そうですわ、あの変態ならあなたに近づく女性を強制的に排除する可能性も」

「――その可能性を否定できない恐ろしさがある」


 なんて嫌な可能性だろうか、しかも否定できないとか、想像するだけで身震いしそうだ……

 くそっ、あの変態が、確かにあいつも授業にはいなかったけど問題に思っていなかった。

 しかし奴は本気か、仮にも相手は人間側の代表的な退魔機関で代表ともいえる組織だぞ、裏事情を知らない子供だったとしても浅慮に過ぎる行動だろう。


「大丈夫ですわ、あなたの貞淑は守って見せますもの」

「そうだぞ、その逆は起こらないだろうが、旦那様は安心していればいい」


 二人とも僕が考え事をしているのを別の悩みだと思っていたようだ。

 確かにその可能性は恐ろしいけど、違うからね。

 あ、そうだ、今回は犬上のお手柄だったね。


「犬上、君のおかげでいち早く対処できそうだ、よくやったよ」


 働きには褒美を……

 さて、犬上に褒美かあ、何がいいのかなあ。

 まずは正式な雇用からか、そうだな、そうしよう。


「もったいないっす、あっしは結局足止めも出来ず」

「いや、一人拿捕しているのだからそれで十分だ、もしも気がつかなかったらそのまま失踪事件として処理されていた可能性さえあるさ、今度正式に大神本家を通じて犬上家に君を雇い入れる申し込みをしよう、なにか褒美の望みはあるかな」

「いえ、あっしはご迷惑をかけた身、まずはその罪をすべて返すっす」


 完全な中堅モードすぎる。

 うーん、何かいい武器か何か兄さんあたりに譲ってもらおうか……

 そうだな日本刀も何本か眠っている筈だからそれでいい。


「わかった、じゃあ今後も期待しているね」

「はいっす、もっと精進するっす」


 後はマーリアの救出をどうするかだね。


「それで葛葉、そいつ等の動きはどうなっている」

「はい、ハルモニアから現在も逃走経路を移動中であるのを追跡中、おそらくですが、転移門かもしくは空路を使って移動するものかと」


 空路ならまだいいけど、転移門だと目的地まで聞き出すのには苦労しそうだ。


「構わないからドラクルの名で転移門の使用停止措置、それと――」


――バッバッバッ

――ヒュンッヒュンッヒュンッ


 移動手段についてどうするかと相談しようとした時に独特の風を切り裂く音が頭上からしてくる。


「移動手段はこちらにヘリを――到着いたしました」

「流石だね、じゃあ、僕らはそれで追いかけよう」


 優秀な人って手際が良くて助かる。

 まあ、僕もまさか我が家で保有してる強襲用隠蔽ヘリを手配しているとは思わなかったけどね。

 思わず苦笑しながらも、乗り込んだ僕らは急いで我が家の情報網が示した地点へと飛び立った。

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