027 追跡+調査=胃痛+頭痛
でだ、なんか視線を感じるのだけれども。
というか、視線を感じるんじゃなくてあからさまに観察されているというか……
「流石にトイレまで付いてくるのはどうかと思うんだ」
「いや、折角だから生態から知る機会をだな」
あれか、やってみるって実行する、つまりは観察するって宣言だったって、笑えるよね、アハハハ。
ストーカーだろうそれは、美少女が一緒にトイレまで入るってどんあご褒美プレイによる公開処刑だよ。
「何言ってるのかよく吟味してから口にだせ! 聖女どころかそれじゃ痴女だろうが」
「な・ん――」
「それはもういいよ、はぁ」
そうだ、あの説教というかなんというか、一連の出来事の後からずっと、マーリアは僕に付き纏うようになっている。
美女に付き纏われるなら良いだろうと思う人も居るかもしれない。
だけど、僕にはストーカーを喜ぶような性癖はない。
それにだ、十六夜とイアンスがいるのに関係の無い女性まで連れまわしているような噂がたったらどうするんだ、もう手遅れだけど。
学内の裏では既にこういう噂が立っているらしい。
曰く、ドラクル家の三男は隠していた実力でクラスを掌握し、幼馴染の大神十六夜と三卿の一人イアンス・ヘカット・T・バートリを自分の物にしただけでは飽き足らず、その欲望のままに敵対したポラリス聖堂騎士団所属の戦闘聖女、マーリア・ローゼ・ハーマンもその毒牙にかけ、日夜トイレに連れ込んで調教をしているのが目撃されている。
調教かあ、そうだなあ、いっそ調教というか躾をつけたいなあ。
実際、別邸以外の時間では常に3人+1人で行動するようになってきている。
なぜ4人と言わないか……
この状況を4人という程僕の脳はハッピーにできていないんだ。
基本的にマーリアは会話に参加するどころ、僕らの後方2m付近に常に居る。
居るんだよ、もうね、どこかの霊体が背後霊として憑いている方がまだいい、退治できるし。
といって、こうして――
「マーリア?」
――ビクッ
「……」
こんな反応をどう処理しろっていうのだろう。
なので、いっそ気にしない方向でも構わないかと思ったのだけれど、やはり外聞が悪い。
と、言う訳でだ。
「よし、マーリア、どうせ一緒にいるんだから組み手で腕前を見せてくれない?」
「……私なりに情報を集めたが、君は以前まで人間並の肉体だったと聞いているが」
「へえ、よく調べたね、でもその頃から技術だけは、まさに鬼のような特訓を色んな人から叩き込まれているから、問題はないよ」
「そうか、吸血鬼の神祖の力を知るのは私にとっても悪い話では無いと言う事だな」
「そ、それにこうして話している方が余程僕の精神衛生上にとっていいよ……」
いやこれは本当にね、ある種の嫌がらせだよねストーキングってさ。
ジリジリと削られていくんだ。
それなら会話してもう少し互いに打解けた関係を築く方がいいよ。
「私も後で相手をしてもらからな」
「私もですわ」
「順番ね!」
なぜ組み手でまでと思うなかれ……
こういう時にも気を使わないと二人も奥さんは貰えません。
「フッ、吸血鬼は多妻が多いが、ドラクルの場合は惚れられていて結構な事だな」
「まぁ色々あったんだよ色々……」
く、姉さんの送り込んできた意図が未だに掴めない……
見事に柄を躱している、ってことは意図的だと言っているのも同じなんだけどなあ。
まあいい、腕前を見ておくのも何かあった時には役に立つだろうし、模擬戦だし問題は無い。
その筈だったんだけどな……
「なあ、マーリアはどうしたんだ」
「それが着替えを終えて此方に先に向かったとばかり……」
「うむ、かなり早く出たが来ないと言う訳だ」
お手洗いという可能性もあるにはある、が、休み時間一杯というのはね……
何時まで待ってもマーリアは現れず、その代わりに僕の元に訪れたのは葛葉さんだった。




