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024 勝利×躾=舎弟

 十六夜の実家、大神家の問題だった分家筋を納得させた―結果的に力を見せるといった方法になったが―事で取り合えずの問題はなくなったので僕らはハルモニアへと戻ってきた。


 一応は寮という名目の別邸を構えているわけだが、別邸の時点でもおかしいのに、眷属から選ばれた従者と侍女が数名いるから、もはや寮と言えるかどうか大いに疑問をもつ所だけど気にしたらいけない。

 ともかくだ、早速両家からも――そう当然だが彼女たちも別邸仕様の暮らしだったのだが――僕の別邸へと移ってきた。


「おはよう、ございますあなた」


 え、十六夜どうした――


「おはようございます――あ、あなた」


 イアンスもか!

 耳が狂ったのかと思ったよ。

 二人であなたって、十六夜までしゃべり方が変だし!


「二人ともまだ前のような喋り方でいいと思うんだ、ほら挙式はしてないしさ」

「そう、そうか、な、でも妻になるという事は、やはりこうした呼び方も必要ではなかろうかとイアンスと相談したんだ」

「そ、そうですわ、あなたと呼べるのは妻の特権でしてよ、多少最初はぎこちないかもしれませんけれど、あ、“あにゃた”と言うのも定着いたしますわ」


 噛んだけどな……

 赤面してるのが可愛いからよし。

 僕は指摘しないぞ、どうも緊張した場合に長い言い回しをするとイアンスは噛むからね。

 しかし、定着かあ、うーんそう主張されるとそんな気もしなくもない……


「ルクス様、宜しいでは御座いませんか、お二人も徐々にルクス様の妻として振舞われる機会に慣れるべきで御座いましょう」

「うーん、じゃあ僕も慣れようか……」


 葛葉さんがと言う訳では無いけれど、やっぱり流れとしては普通なのだろうか。

 ちなみに彼女がこの寮の中を全て取り仕切ってくれているのだけど、先日の活躍でわかるように彼女も只者ではない。あらゆる意味で彼女が最適だろうと姉さんが幼少の頃から僕につけた、護衛をメインにした乳母であり侍女でもあるという多才な人だ。


 十六夜の伏さんと同じ乳母だったけど、一人で全部やってるのは凄いと思う。

 話によればどこかの令嬢かお姫様だった筈なのに尊敬してしまう。


 こうしてご飯も時折準備してくれるんだけど、これが美味しいんだよねえ、本当になんで姉さんの眷属やってるんだろうか、兄さんあたりと結婚しててもいいぐらいなのになあ。


「うん、美味しかった、ご馳走様でした」

「ええ、本当に葛葉さんの料理は見習わなくっちゃ」

「さすがドラクル家ですわ……侍女でこのレベルの料理を提供するとは」

「お褒め頂き恐縮で御座いますが、長年やっておりますのでこれぐらいは当然ですよ」


 いやいや当然じゃないからね、本当に謎だ……


 そして登校と言う事になるのだけど、先日から襲撃が多数発生したのをどうするかと言う事になるのだが、一応そこはここも学校の敷地内、専門の警備員を増員して強化もしてもらっている。

 イアンスの兄フリードリッヒの事はあるけれど、今の僕ならばまず問題はないだろうと兄さん達からも言われた、実際、この男も一撃に近かったんだよねえ。


「兄貴! ささ、お鞄をお持ちししゃっす!」

「あのさ、その兄貴ってのは止めようよ」

「いえっ! 出来ればこれだけはお許し頂きたいっす」


 そう、今回の解決に唯一の誤算があるとしたら、何故か僕に懐いてしまった犬上雅貴の問題だろうか……

 許すかどうかという問題も本当はあったのだが、それ以上に困惑の事態に陥っていると思う。


 同年代に負けたことの無かった彼は僕を『兄貴』と呼んでこうして常に学校の送り迎えをしてるんだけどさ……

 自身の仕事はどうしたよ!


「はぁ、ねえ、犬上さん――」

「そんな兄貴からさん付けなんて恐れ多いっす」

「じゃあ、一応年齢も近いし、諦めたから犬上でいいけどさ。ねえ、確か実家でそれなりに仕事はあったんでしょ、大丈夫なの?」

「問題ないっす、実家を継ぐのは弟に任せたっす、俺、いえあっしは兄貴についていくっすよ!」


 この調子なのだが、いいのだろうか。

 というか、手加減したし、頭を殴ったというか顔は最初の一撃だけだったんだけど、どこか打ち所が……

 やってしまったのか僕は。


「まあ、ルクスも驚くのは無理は無いが、これは犬上の本能みたいなものだからな、あまり気にせず接してやってくれ……」


 え、習性とか本能なのこれ?

 あれか、負けたら従うとかっていう感覚なのだろうか。

 野生のボス決定戦だったと思っていいのだろうか、あの戦いって。

 生殺与奪も含めてある意味お詫びも兼ねてお使いくださいてきな感じじゃないかこれ。


「もしかしてさ、“俺様状態”で完膚無きまでに吹っ飛ばしたのが――」

「あれで完全に上下関係が刷り込まれたと思う、まあソロソロ父上が躾けるかと言っていた頃合だったのだろうが、結果は見ての通りだ、私の方からも問題はないのかと確認はしておいたんだが、是非使って欲しいと頼まれて……」


 そこで目を逸らさないで!

 はぁ、付き人かぁ、執事見習いみたいな感じでいいのかなあ。


「よろしいではありませんか、あのルクス様に吹き飛ばされたのです、こうなるのも無理はないと思いますわ」

「そうなのかなあ……ちょっと不安だよ」

「問題ございませんわ、寧ろその、夜はあの状態でもいいのではと……おもいますにょ!」

「噛んだな……だが私もその意見には賛成、していいと思っていると言っておこう」


 女の子の考え方は理解が出来ないよ……

 諦めるしかないのだろうか。


「行ってらっしゃいっす!」

「――これってさ言葉遣いの訂正もした方がいいのかな」

「まあ、その方が良さそうだな、周りの目が痛い……」

「ちょ、ちょっと個性が強いですわね」


 はぁ、どうしてこうなったんだろうか。

 僕はため息を吐きながら校舎へと足を踏み入れた。

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