018 裏事情-事情-最強=移動×安全
「順番にどちらかの家に先に行く必要がでるんだけど、先ず最初にイアンスの家に向かうね」
これは二人に相談する事が出来ない内容だ。
だから僕が独断で決めた。
「わかった、それが妥当だと私も思う」
「それがルクス様の決断でしたら私は敵を倒すのみ」
違うよ!
物騒だよ、ちゃんとバートリ家を先にした理由はあるから!
そう、勿論理由はある。僕が知らなかったと言えど正式にドラクルの家とバートリ家の話として婚約の話は来ていた事はかなり重要な事だ。
突っぱねる事になればそれこそ互いの家もだがイアンスの立場もそして両親との仲も悪くなる。
今回のこの婚約もかなり強引に親を説得した上での末だったことは判っている。
となれば筋道を通す必要性の高さでは十六夜の実家よりも大きい。
あちらは幸いな事に小父さん達は賛成の方針であると調べがついた。
分家の中で最も力を持つ勢力の息子が十六夜を狙っていた事から分家を纏めて反対しているのだろうと姉さんの眷族の一人である葛葉からの報告にあった。
あの人の調べなら間違いないだろう。
僕らは正装に身を包み……
まあ正装と言うには繊維だったり素材だったりが特殊だけど、僕は漆黒の吸血鬼の正装を纏った。
イアンスも僕とはデザインが違うが正統な女性吸血鬼といったふうなドレスに漆黒のマント、十六夜は狩衣と袴を合わせたような動きやすい服装になりバートリ家の領地へと赴いた。
若しかしたら襲撃もと考えていたのだけど、一応は何も無く屋敷の前までやってこれた。
バートリ家には僕が一般的な人程度だった事もあって訪れた事が無かったが、あの幻想界との接触後に勢力を拡大し今では旧ドイツや旧オーストリア地域を押さえるヨーロッパの一大勢力だ。
それだけあって、屋敷は我が家に負けず劣らずの壮観な様相を呈していた。
「うーん、何も無かったね」
正直に言えば拍子抜けだった。
何かしらのアクションはあると思って警戒してたんだけどなあ。
「流石にドラクルに表立って行動する愚かな真似はしなかったという事ですわね」
確かにね、バートリ家は何気にドラクル家に恩もあったりするし……
穏便に済めばいいなあ。
まあ、どーしても僕の知らない所で何かはあったと思うけどね……
じゃないと先触れを出してるのに門の前に来て誰も居ないなんてあり得ないんだ。
誰の仕業だろうか……
いや敢えて探らないでおこう。
「実際には中こそが敵地、油断はできんぞ」
僕が壮絶な裏舞台の遣り取りに思いを馳せていたが、十六夜は中こそが危険だと注意を促した。
確かに、中はそれはそれで危険が待ち受けているかもしれないな。
「ああ、じゃあ、行こう」
僕は再度気を引き締めた。
そうだ、婚約という形からは随分と先に進む話になるが結婚の了承を貰わないといけないんだからな。
僕はバートリ家の門を決意と共に潜った、イアンスと十六夜三人でこれから過ごす為に。
余談となるのだが、後日判明した事実を語っておこう……
実際に彼らは数回に渡り僕の暗殺を謀ったようだ。
が、当然のように兄姉達や眷属によって全てが阻止されていたのだとか。
以下は実行者の弁です。
「まあ、地獄の特訓を潜り抜けた今のルクスならば問題はあるまいがな、やはり兄として見過ごす事はできまいとシュテンツと話し合ったのだ」
「あの程度の輩ならばもう問題は無いと言ったのだがな、兄者が『もしも弟の嫁に何かあればどうする』と言われてな、我は思ったのだ、兄と呼ばれるからには兄の務めを果たすべきだと」
「私は当然ルクスちゃんを信じてたけどぉ、やっぱり、愛は体を張るものだもの、ネッ」
「出すぎた真似とは思いましたが、やはり我ら一同ドラクルに仇なすような輩は放置できませんでした、部下たちの忠誠をお汲み頂き、どうか罰は私のみに」
過保護な兄姉達や従者のお陰で助かってました。
父さんと母さん?
兄姉の仕事を全部一人で引き受けて世界を飛び回ってたのが父さんで、実家に現れる不届き者を一人でなぎ倒してたのが母さんらしいよ……
“ドラクルの良心”は愛する家族達皆の愛情で出来てます。




