016 謀÷元凶×嫁=覚醒
「兄さん……融合の練習はどうやってやるの?」
少し行儀は悪いが動けないから膝枕からの質問になった。
「そうか、基本の変身もルクスはやった事がなかったら想像がつきにくいだろうな」
アーティール兄さんは思い返すように屋敷を見ていた、きっと昔の僕の相手をしてた時の事でも思い出しているのだろう。
そう、今まで魔力がなくて一般人レベルだった僕には変身というのは見てて出来るとわかってはいるのだが、自分がどうやって変身するのかが理解できてない。
「本来は本能でまず吸血鬼化する訳だがな……」
シュテンツ兄さんもどう説明するか考えてくれる。
「そうなんだよねえ」
そう、兄姉達は子供の時に母の乳房に噛み付こうとする事で吸血鬼化を果たしている。
吸血鬼化という意味では……
あれか、あれが僕の吸血鬼化なのかっ。
たしかに牙が鋭くなっていたとは思うけど、二重人格のようになるんだよね。
衝動をもっと抑えていられたらなあ。
「それはなんとなく魔力を得る過程で判ってるんだけど、衝動がね」
正直に内容を打ち明けてみた、兄さん達なら何か経験があるかもしれない、なにせ何百年の年月を経ているのだから、それにアーティール兄さんは全員の子育てを知っている。
そして流石と言うべきだろうか、アーティール兄さんは思い当たる事があると言って何かを考えながら答えてくれた。
「成る程、それは眷属が通る道と似ているな、我の眷属は人間からの転魔が多い故にそうした悩みはよく聞く。必要以上に吸血を求める場合もあれば、力に溺れて挑んでくるような者もいたな、けして以前はそのような者ではなかったが別人のようになるのだが――ルクスのは多少毛色が違うだろうな」
そうなのかな、話を聞く限りでは力に溺れている感じがするんだけど。
「元が神祖の肉体をもっているのだから、その辺りは押さえも聞いているのだろう、ならば先ずはその状態に慣れることだ、我らも赤子の折に通った道だ、シュテンツもヴィルヴァーラも母の乳房に吸い付いて離れなかった程だったのだぞ、勿論この私もそうだったらしい」
それってつまりは――
「僕に四六時中あの状態でいろと?」
「それが最も適した方法だろうな」
「ウフフ、お姉さんがしてあげてもいいのよ?」
「いえ、お任せ下さいお義姉様、ここは私と十六夜という妻になる者が必ずや……」
「そうです、教えていただいた様々な技術……このように膝枕をこなしたからには次の段階に」
姉さん、何を教えたのかな?
顔を僕から逸らしただとっ、ちょっと大丈夫だよね、普通の内容だよね。
「姉さん?」
「何かしらぁ」
「こっち向いて喋ろうか」
「あ、そうそう、おやつの用意しなきゃ、じゃあねぇ」
逃げたよ!
クッ動けない――
そう僕が思った時には既に策は発動してしまっていた。
「では足腰が立たないルクス様はこのまま私共が連れてまいりますので、アーティールお義兄様、シュテンツお義兄様、失礼致しますね」
「それでは失礼致します、アーティール義兄上、シュテンツ義兄上」
え、凄く納得しそうなテンポで挨拶した所を悪いのだけど、これって話題を流した?
「フッ、お兄様、兄上か……悪くない」
「うむ、これは良いなお兄様、兄上、うむ!」
「「でかしたルクス」」
そこか、そこが気に入ったんだね兄さん達っ。
いや判るよ……
わかるけどだな。
この流れで僕が連れて行かれるのは――
アー――――――――――――――――――――――――――ッ
お前達って絶対同時にっていった俺を恨んでるんじゃないか?
ゆるさーん!
「きゃぁ」「ぽっ」
「お姉ちゃんも混ざるぅ」
「元凶、覚悟!」「えっ、アレェ?」
そして夜は更けていく――
――カッポーン




