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013 涙×喜び=誓い×言葉

 ある意味開き直った。

 うん、どうせ二人と結婚するんだ、だから互いの肌を晒したぐらいなんの問題も――

 あるに決まってるだろうがっ。

 全く、姉さんには困る。


 がだ、こちらとて姉さんの行動ぐらいお見通しなんだ。

 姉さんがソレぐらいで大人しくなる筈が無い位は此方とて予想している。

 絶対夜に部屋に進入してくるだろう。




「まだ月も細いな……」

「よく分かったね」

「ふっ、私もルクスとは長い付き合いだからな、きっと此処に来ると思ってたよ」


 先手を打って屋根の上で暫く身を隠そうと思ったのだが、十六夜は見事に探し当てて先回りして待っていた。

 参った、これだから幼馴染は困る。


 屋根の上に腰掛けると彼女は闇夜を見つめた。

 横顔を見つめていたのだが、意を決した感じで今回の事を話し出した。

「ルクスは、その、なんだ、従魔の件の責任を取る為に私と結婚するのではないよな」

「当然だろう、僕はずっと十六夜が好きだったんだ」

 どうしたんだろう、確認はしたと思ってたんだけど――

 あの結婚の話が出た時って周りの騒ぎできちんと言ってなかったかも知れない。


 なんて事だろうか、情けないなあ僕は。

 でも情けないと思うよりも、僕は自分の想いを彼女に伝えなければいけない。

 僕は改まって、左側に座っている彼女の方へ体を向けて、顔をしっかりと見つめた。


「十六夜――君が居てくれたから今の僕が居る。小さいときからずっと一緒に過ごした君を手放すだなんて考えられない。十六夜、僕は君を愛してる、僕と共に永遠の時を共に歩んで欲しい」

「はい、喜んで――私は貴方と共に永遠の時を共に歩みます」


 僕と十六夜は互いに顔を近づけていく、これ以上は言葉だけじゃ足りない。

 彼女の艶やかな黒髪を掻き上げる、凄く滑らかな髪が暗闇に揺れる。

 互いを求めるように口付けを交わした。

 口付けで交す契約――

 

 最高に美しい、俺の大事な――

「十六夜――」


 そして彼女の瞳を覗くと潤んでいた、なんて素敵なんだろう――

 僕はその潤む瞳へキスをする、幸せの味とはこういう味なのだろうか。


 でもこれ以上は――

 僕は瞳へとキスをした所でなんとか押し止まった。

「ァ――」

「はぁ……どうしても吸血の衝動を経験してなかったからか、耐性が低いみたいだ、襲い掛かったらそのときは止めてね、話し合いが済んでないのにキスしただけでこんな風になるのは危なすぎる」

 まさかこんな事まで計算にいれて悪戯してない……と言い切れないな、あの姉さんだから考えた上でやってそうだね、ありがとう姉さん、あの事態に比べれば理性でどうにでも出来そうだよ。


「わ、私は別に構わないが、確かに私も気をつけよう、なによりその前にルクスにはもう一人告げねばならぬ相手がいよう」


 どうしてここまで凛とした女性でいられるのだろう、これ以上僕を惚れさせてどうするつもりだろうか。


「ありがとう十六夜」

 もう一度僕は彼女とキスを交わすと朔の力を使って姿をかき消した。




 ――コンコン

「すまない、イアンス起きてる?」

「ルクス――様、お、起きてますわ」

「済まない、令嬢の部屋に夜遅く」


 客間に泊まっているから夜着は――

 何故僕のシャツなのかは後で姉さんか母さんを問い詰めるとしてだ、兎に角、やる事をしなければ、その為に、失礼を承知で訪れたんだ、僕は必ず今日中にこれを告げておくべきだから。


 彼女の前に立ちその手を取って僕の思いを言葉にする。

「イアンス、ややこしい話になったし、順序も逆になってしまった――謝罪と共にとは情けない限りだが、どうか私と永遠の時を共に歩む伴侶になって頂きたい」

「あぅ、わ、私こそ、このような性格ですが貴方を愛しています、どうか共に永遠を共に歩んで下さいませ」


 こんなにも可憐なイアンスは初めて見る。

 僕はその手を引き寄せる。

 ――ァッ

 微かに零れる可愛い声。

 彼女は僕の力に逆らわない。

 身を任せられ、右腕で腰に手を添えて抱き寄せ、顎を持ち上げてキスを交す。


 彼女の涙が僕と彼女の唇を濡らしている。

 なんて可愛らしいのだろうか。

「イアンスが心配しないで済むように立派な神祖になろう――」

 あぁ、これがイアンスの魔力(ウィスクラフ)、そうか、同じ吸血鬼と言えど彼女とは系統が違うのが魔力で判る。


「これがイアンスの魔力なんだね」

「え、血を飲んで無くても其処までわかるのですね」

「うん、僕はどうやら普通じゃない分血以外の成分から経路を作る事に長けているみたいだ」


 ふふ、ちょっと色気がないけどこうした話ができるのもイアンスらしくて悪くない。

 それにしてもなんだか不思議な感じだ。

 あのイアンスと僕がこうしてキスを交わして魔力を得ているだなんて。


「イアンス、折角だから今日を記念にする為にも今から庭に出よう」

「え?」

「この魔力でそのまま従魔を作るんだよ」


 折角の記念だもの、もう朔の魔憑刻印も問題は無いだろう。

 なら、二人が気にしなくてもやはり同じ方が好ましい。

 僕はイアンスの手を取って部屋を後にした。

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