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012 湯気×お湯=桃源郷

「はぁ、いいお湯だなあー」

 訓練でボロボロになってもこうしてお風呂に入れるなんて、体の傷が治るってすばらしい。

 そんな実感をしている僕の癒しの時間は乱入者によって終わりを迎えた。


「滑るから気をつけてね――」


 え、何が滑るってぇえええ!?


「久々にお姉ちゃんと一緒にお風呂よ!」

「姉さん!? それに、十六夜にイアンスまでどうして!」

「そ、それはこの家の仕来りと聞いて」

「ふ、夫婦になるのですからお背中を流すのはつ、つ、妻の役目ですわ」


 ――ブハッ

 鼻血が、ハッ、それよりもそんな仕来りないよ!


「せめて前は隠して!」

「いやこれぐらいの事で引き下がれん」

「そうですわ、お、夫に肌を晒す事になんの抵抗が」

「フフフ、いいわぁ」


 いいわぁって原因は姉さんか!


「二人とも、確かに父さんと母さんは一緒に入浴するけど、そんな仕来りは無いから!」

「「なっ」」

「もう、眼福でしょうに、ほら鼻血だすぐらいなんだから興味はあるのよ、駄目よ二人とも押し倒すぐらいでないと!」

「なるほど、興奮させるのも重要なのですねお義姉さま」

「お義姉様の言う通りですわ」


 ちょっと待て完全に言いくるめられてるし、『お義姉さま』呼びになってるよ。


「わ、分かったけど十六夜、大和撫子の教えはどうした、イアンス貴族令嬢がそれでいいのかっ、恥じらいは美徳だから、せめて前は隠して」

「ふむ、隠した方が好みなのか、ならば仕方ない」

 ちがうからね?

「成る程、そうですの、ヴィーナスのようなポーズをお望みなのですわね」

 いや、うん白磁のような肌で大変に美しいのは認めるし、ヴィーナスのようだと言われれば納得もしよう。


 だが、僕がソレを望んでいると断言するのはどうなのだろうか。

 あれ、望んでるのかな、いやいや、危ないなんだか誘導されている気がする。

 それに、二人が綺麗なのは認めるけど、僕の理性というよりも羞恥心が限界だよ。


「なかなか好い趣味になったな我が弟は、だが小さい時のように甘えてくれた方がお姉ちゃんは嬉しいぞ」


 何歳だと思ってるんだよ、それに最後に風呂に一緒に入ったのって結構前だよね。


「さぁ、全員で洗ってやるから大人しく捕まれ!」

「綺麗にしてやるぞ、先程奥義を教わったからな」

「真心を込めて洗いますわ、負けませんもの」


 まて、まってぇぇえええ――

 クッ流石にまだ問題が解決してないのに新たに問題を増やす訳にはいかない。


『朔、広範囲に水蒸気を出すから脚力の強化を頼む!』

『承知――』

『今だ!』


「「「む!」」」


 脱出!


「フフフ、私にそんな手が効くと思ってたのルクスちゃん」

 く、やはり一筋縄では、だがそれは身代わりの“朔”だ。

 策とは多重に仕掛けるものなんだよ!


 ――ぶよんっ


 なっこの感触は――

「ッツ、どうしたルクス突然飛び出して」

「あら、先を越されましたわ、えぃ」


 ――ぷにょん


 クッ、何だこの状況は――


「フフフ、全てお見通しよ! えいっ」


 ――ぼよよん


『無念――』

『ご苦労だった朔……』

 僕は失敗した……

 ただ、その後は全身隈なく洗われたという事実だけが残った――

 お婿に行く必要はないので有名なあの言葉は呟けないが、僕は何かを失い何かを得たと思う。

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