011 兄姉-常識=伝説
「ふむ、それで種族魔法について教えて欲しいと云う訳なのだな」
やはり聞くなら父さんだよね。
「うん、魔力がないから今までは頭の中では初歩は理解してたし、実際に従魔召喚はしたけど、この先に進む事とかもっと詳しく知りたいんだ」
「よかろう、但しだ、神祖の種族魔法は従魔を従えるという一面は同じでも他は夫々違ってくる傾向にあるから、そこからは己で研鑽するしかないぞ」
「はい」
頑張らないとね、ずっと学校を休む訳にもいかないし。
「では先ず従魔を呼び出して見せてみよ」
「『ファントムベウル』朔」
「うむ――成る程な、まず従魔の存在が自分の魔力と他者の魔力の結晶であることは理解しているな、そしてその本体はその体に刻まれた魔憑刻印に宿っている。大きさなどは自身の魔力量によって変化するのだが、まあ今のルクスならばこの大きさが限界なのだろう」
「その事なんですが実は――」
一応は涙で魔力量が上がった事を説明した。吸血行為と同じだろうけど一応は言っておかないとね。
「ふむ、それは我らが血から糧を得ると同時に魔力の経路を作るのと同じ、いや、若しかすれば位置からしてもそれ以上の効果が合ったのやもしれんな、まあ、問題はないだろう」
「一応仮説では問題なかったけど父さんがそう言ってくれれば安心だよ」
「フハハ、だが恐らく……ルクスは魔力が無かった訳ではなかったしな、突然そうして魔力が宿ったのがその瞳を舐める行為だったとすれば、更に伸びる可能性は高い、そうすればもっと多くのことが出来るようになるぞ」
父さんも自分の従魔を一匹出して見せてくれたんだけど、最強と言われるだけあって従魔も並みじゃないんだよね。
金色のドラゴン、体高2m程にサイズを変えていてもやはり威厳があるよ、これがもっと大きくなるんだから絶対喧嘩なんてしたくないだろうなあ。
流石公爵にして王だけはあるってとこだね。
父さんの語った内容は一応は僕の知る事の復習にもなった。
基本としての能力がこの従魔の状態。
従魔には司る属性とその特徴を強化する力があるのは知っていた。
だけど従魔の能力がそれだけじゃ無いのを目の前で見せてくれた。
先ず従具になる能力だ、雷属性をもつ金色のドラゴンは巨大な矛に変身した。
さらにもう一つ、融合とも変身とも言える状態への変化だ。
父さん曰く、敵に合わせて変身すれば怖いもの無しだと言うのだけど、普通にその状態で戦う相手なんてまずお目に掛からないのではないだろうか……
というか、父さんの場合その金色のドラゴンだけで全ての能力が底上げされるから変身したら指先一つでキュクロープスを吹き飛ばすと思う。
という事で、朔の事を詳しく知る必要が出てきた。
先ず属性は闇、従魔の形態は魔狼、本質は忠誠、特徴は脚力と嗅覚が一番強化されていた。
そして此処からが次の段階へのステップだった。
先ずは武器化する事と変身が残っている。
「武器化って何になるのかは決まってるの?」
「まあ本人と従魔の相性がいい武器になるから心配しないでやってみるがいい」
気軽にいってくれるなあ。
『朔、武器化なんだけど、父さんのを見て理解は出来たかな?』
『まず問題はないかと、但し、適した形となると……十六夜様にも関係のある武器が一番変化した際の力は強くなりそうですね』
成る程ね、だから本人と従魔のって事になるのか。
だとすれば、これしか僕には思いつかない、正直使いこなせるかは不安だけど。
『朔、形はこれしかないよ』
『まさしく、では――』
僕の手の中に握られたのは一振りの刀だった。
鞘は漆黒、刀身も黒く光を吸い込むような力がある。
「ふむ、なるほど日本の武器だな、扱えるように稽古をつけてやろう」
「「「日本の武器と聞いて!」」」
「と思ったが、ふふ、アーティール、シュテンツ、ヴィルヴァーラ、お前たちに任せよう」
「「「任せてくれ」」」
絶対出てくるタイミングを草むらから伺ってたよね?
日本とか関係なく絶対出てくる心算だったに違いない。
「俺がルクスを一人前の武者にしてみせる」
「ふっ、シュテンツ刀と言えばこの俺だろう?」
「何を言ってるのよ兄さん達、剣術と言えば私に決まってるじゃない」
あーこれは、長時間の特訓も覚悟しないといけない。
3人とも世界各地を巡ってるけど日本が大好きだったそうだ。
あまりいい意味では無いけどそれこそ活躍したらしい。
「ハハハ、何をいうんだ兄さん、俺はあの頼光とやりあって友になった男だぜ?」
「フッ、俺は坂上に恐れられた男だぞ?」
「そんなの実際に綱や金時とやりあった私が上よ!」
「わかったよ、全員から年齢の順番に教えて貰うからさ」
「そうか?」
「折角だしそれもよいかもな」
「フフフ、3人で鍛えれば私たち3人分の強さがルクスちゃんに!? それは好いわね、そうしましょう」
一日ずつ交代で――
と思った時には時既に遅し……
「弟よ、魔力が宿った事で漸く体の強さも現れ始めたということは――」
「うむ兄者、今鍛え上げれば最適な動きをするように出来るという事だな、鍛甲斐があるぞ」
「うふふ、もしかすれば最強の弟が……」
なんで全員笑顔でにこやかに物騒な会話を。
物凄くノリノリなんだけど。
どうしようかこれ。
そして地獄の特訓が待ち受けていた。
「甘い! もっと鋭く振り切れ、その刀で覚えるべきは普通の剣術じゃないんだぞ、今までの常識は捨てろ」
染み付いた人間の感覚を捨てるって凄い難しいところだんだけど?
「俺の闇鴉が一番お前の刀に似ているが、見本を見せてやろう、見ていろ、これだとこういう事も可能だ――フッ」
――シュ
「どうだ、普通にこうして鉄を切り裂く事も可能だ」
――ドスン
いや無理でしょ、それ鉄板とかじゃなくて鉄壁だったよね、え、コレぐらいで普通の世界なの?
「動いたと敵に認識させないで斬り終えろ、挙動はしてもいいが動きを読まれれば隙になるぞ」
それ、なんの奥義なのシュテンツ兄さん。動いても挙動を読まれないってどうやるの。
「こうだ!」
それ、移動が早すぎて見えないだけじゃないかな。
残像残して動くって、まだ僕には無理だと思う。
「刀を己の一部と認識しなさい。振ることも重要だけどその刀が創り出す領域を己の物にするのよ」
あの、ヴィル姉さん……余りくっ付いてだと集中できないんだけどな、それにこれって態と押し付けてるよね。
「ウフフ、緊張するようじゃ駄目よ。誘惑にも打ち勝ちなさい」
言ってる事が一番まともなのに、やり方がまともじゃなかったー。
自分が超絶美人である事をわかっててやるとか性質が悪すぎる、純真――ではないけど弟を揶揄うのはよくないよ。
こうして、僕は一日目からボロボロになったんだけど、兄姉達が嬉しそうだったから……まあ、いいや。




