010 美女×青年×美女=国際問題
「今の話ってどういう事?」
「どうした?」
「ん? いやルクスの結婚相手の事だろ」
「そう、今二人って言ったよね?」
何を何でもない風に言ってるのさ。
いや一夫多妻なのは知ってるよ?
望む相手がいれば永遠の命を与えて一緒に暮らすのが僕らの一族だから、選んだ相手が入れば二人だろうとなんだろうと問題はないよ。
でも、十六夜以外にって誰の事!?
「もしかして父さん……言ってないの?」
え、兄さんも知ってるの?
なのに僕が知らないって順番が違わないかな!?
父さん?
「ハハハ、さて、私は日本へ行かねばな――っ、いや、待てリリアーヌ、君が言っていると思ったんだ」
「そういうのは父親であり王である貴方の役目です!」
なんでそんな事になってるんだろうかと思ったら徐に父さんが僕の肩に手を乗せた。
「先方からの申し込みでな、悪い話じゃないと思っていたのだが、相手はお前も知ってるだろう、バートリー伯爵家のお嬢さんのイアンスちゃんだ」
ちょっ!
はぁ?
何言ッテルノカナオ父サン。
「ふっ、成る程、イアンスならば納得できるな、あの態度も常々怪しいと思っていたんだ」
――グギギギギ
僕の首が180度回転できそうな程驚いて軋んだよ。
十六夜の方を振り向いたら何だか凄く落ち着いてて納得してるんだけど、何処をどうしたら納得できるの?
議論ぐらいはするけど、事或る毎になにかと正論で僕を落ち込ませて来たのは彼女だよ?
それに魔力を持ったからこそ僕の事を名前で呼んでくれたけど、これまでは『残念な方』としか呼ばれたこともないんだけど。
何かの間違いじゃないの?
「でも、まって本人が納得してないのは、僕らのような身分なら仕方が無いとは思うけど、本人の意思は尊重してあげてね?」
「それは勿論だ、きちんと本人には確認済みだぞ」
ちょっとお父さん、息子に一言も確認してないのに、何で相手のイアンスは確認済みなのかな、何でかな!?
大事な事だから2回だよ、これは確認させて欲しい。
「父さん……実の息子に確認はしないのになんでかな?」
「それはまあ、実はなお前の魔力の件もあったんだ、彼女は中々に優秀な子だからな、万が一の事があってもお前を守ってくれるだろう、イザヤちゃんもだがそういう意味で私が考えていたんだよ」
「で、彼女はなんと?」
「勿論快諾してくれたさ、魔術や魔法の話でも中々に盛り上がって話す間柄だそうじゃないか」
確かにそうなんだけど、盛り上がって話す間柄……なのかな。
それに、嫌がらなかったの?
いや、神祖相手に断れるのはいくら始祖の一族とは言えど難しいだろう。
「父さん、とりあえずその話は僕が直接本人に聞いて確認するからちょっと待ってね!」
「十六夜だ、フフフ、まあそう羨ましがるな、うむ、うんそうだ聞いたぞ、ハハハ、大丈夫だ、で直ぐに来れるか。よし判った、そうルクスにも伝えよう、ではな」
あの十六夜さん片手にもった通信機器は何でしょうか?
「十六夜?」
「うむ、こうなれば話た方が良かろうと思ってな、イアンスに至急来るように伝えたぞ」
手際がいいね。
それに結婚相手が同時にこんな状況になってるのに変わらない態度だし。
なんというか――
いい顔して言うなあ、男前だなあ……
じゃなくてだ。
「その十六夜はいいの?」
「知っていたし、当然の問題ない」
は?
僕の聞き間違い出なければ今知ってたって言ったように聞こえたんだけど、こんなに若くして耳が遠くなるなんて難聴になるほど音楽も聴いてないぞ。
いやいや×10カウントだよ、現実逃避してる場合じゃないよ。
ちょ、知ってたってどういう事。
出来れば詳しく教えて欲しいなぁ
「どういうこと?」
「なに、恋する者同士だからな、そう云う想いは互いに通じ合うという事だ」
何その竜吟虎嘯というか武道で対峙した者だからこそといった雰囲気。
物凄く格好が良いんだけど、恋する乙女って、あの態度で判るものなの?
うーん……
でもなんかそう言われると、十六夜の態度ってイアンスには柔らかかったな。
あれだ、知らぬは渦中の本人だけだったって事なんだ、いいよ、こうなったら本人に確認するから。
と言う事になって。
「その、イアンスはいいの?」
「この私と結婚出来るという事は即ち最高の女性を手に入れるという事ですわ、お互いの立場も考えればこれ以上無いといっていい組み合わせですもの、フフフ、この事は光栄に思っていただければそれで構いませんにょ、のよ!」
噛んだけど、噛んだけれども言わないのがやさし――
「噛んだな」
容赦ないよね十六夜、やっぱり気にしてないか?
「それは建前っぽい事だよ、確かに光栄ではあるけど、僕みたいな落ちこぼれと結婚していいとイアンスが本当に思ってるかどうかだよ、神祖とかそういうの無しでね」
嬉しいけど、やっぱり本音を聞きたい。
顔を真っ赤にしてるのに聞きだすのは悪いと思うけど、本心は聞いておかないといけないと思う。
「わ、私は貴方を落ちこぼれなんて考えた事は御座いませんわ、情けないというのはそんな意味じゃごじゃい、御座いませんもの、魔力の問題があっただけなのは理解しておりましたし、その真面目な所とか、魔術で私と対等に語り合えるところなど評価しておりましたもの、そ、それにわ、私の唯一の男性のお知り合いですし、こんな気の強い私とにこやかに話してくれるのは、あ、貴方だけでしたの」
正直に言っていいだろうか、驚いた。
御免ねイアンス、悪気は無いのは判ってたけど、そんな風に想ってくれてたのは気が付かなかった。
だけど、個人的な想いよりも大変な問題があると十六夜のセリフで僕は気が付く事になる。
「しかし、我が家の事もあるが、イアンスの実家の問題もあるな」
「そ、そうですわね、事が事だけにどうしたものか考え物ですわ」
「え?」
「「私達の結婚についてだ」」
二人の中ではもう確定事項なのね。
いや、うんいいんだ、それは寧ろ僕が嬉しいことだから構わないのだけど。
何が問題なのか……
「いいか、我が家もその道では知られた極東の大家の一つだが、イアンスの実家もまた同じく有名な魔導の大家であり吸血鬼の3名家だぞ」
「そうですわ、そうなると実際に従魔の契約を済ませている要因の十六夜さんは謂わば既に契りを済ませたも同じと見做される可能性がありますの、ですが正式に婚約の話が進んでおりましたのは私の方だった、となれば我が家と大神家のプライド的な問題が生じる可能性が御座いましてよ」
………………
…………
……
全員がその内容を改めて直視して固まった。
棚上げにしたいと少なくとも僕は思ったし、彼女達も想像して同じ結論に行き着いたようだった。
人狼の上位種大神、しかもその本家と、魔術、魔法の大家バートリ伯爵家の争いとか悪夢だよ!
やめてぇ。
と現実逃避は出来ないな、さて、僕はどうするべきなのだろうか。
一つ目のアイデアは二人を諦める事なんだけど、これは却下だ。
当然だろう。
なら二人のどちらと先に……
そんな悩みに光を指し示してくれたのは一通のメールだった。
「先生からのメールが届いたんだけど……」
『ハッハッハ、凄いなルクス、二人同時攻略とか、どうだ私もいっとくか?』
これだ!
いいよもう汚名でも何でも着るよ。
「決めた! 同時に婚約しよう」
「「え?」」
「それしかないさ、どちらかを立てればどちらかの顔が立たないんだから、僕が頭を下げよう」
「それは確かに解決策だが」
それしかない、うん、だからもう一つだけお願いをしよう。
「但し、朔の魔憑刻印が馴染んだら直ぐにイアンスにもお願いしていいかな、そんなに掛からない筈だし、それから二人分の事実をもって説得したいんだ」
「判りましたわ、では学校はしばし休学の連絡を致しておきましょう、私達なら座学も訓練も必要はありませんし、ルクスは実質的には馴染ませるよりも、その種族魔法について訓練するのでしょう?」
確かにその方が確実だな。
「うん、じゃあそういう事で、手配はイアンスに頼んでいいかな。二人には出来れば訓練にも付き合って欲しいんだけど無理だろうなあ」
「「なんでだ」」
「多分、母さんが手離さないと思うよ、一緒に色々やると思う」
「あー、そうか……」
うん十六夜は思い当たるよね。
趣味とか趣味とか……
どちらにせよ、着せ替え人形化しても、二人ともお嬢様だし問題は無いだろう。
こうして僕は出来るだけ早く問題を解決するべく誠意努力という政治家のような目標にむけて真剣に取り組む事になった。




