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【⑫矢沢拳児】 消えかけて居る奴が来た、聞けば大体同年代、
仕様がないのでおもてなし、お風呂でお喋りリラックス。
▼件の日本人は夕方に到着。同行者は自分のイコしか居ないらしい。「お疲れさん。ボクは貴田宗樹。姫路出身で75歳直後だよ」「俺は矢沢拳児。青森出身で71歳直前だ。
処でアンタは何時此方へ来たんだ?」「10月26日の朝だよ」「俺は11月5日の朝だ」「其れからど~して居たんだい?」「オトコが消滅して居たのが凄いショックでね。
是は悪夢なんだと思い込もうとした。アンタは平気だったのか?」「是は単なる可能性の一つだよ。必ずそ~為るとは限らない」「意味が良く分からないよ」
「未来は変えられると言う事だよ。とにかく来たからにはエンジョイしないと損だよ」「アンタはプラス思考だなあ」「ハッキリ呑気でアホだと言ってくれて構わないよ」
▼「アンタは此方に来てからど~して居たんだ?」「家主の夫婦と仲良く為って、姫路城へ行ったら千姫の子孫と親友に為って、東京へ行ったら支部長のハナと友人に為った」
「なにか凄く此の世界に馴染んでるなあ」「毎日が観光とドンチャン騒ぎで竜宮城みたいな生活だよ」「そ~か。自分は間借りを拒否してイコの健三とホテルで籠城中だよ」
「なにか弟さんみたいな名前だね」「三年前に65歳で死んだ弟の名前を着けたんだ」「そ~なの。ボクのイコも初めは死んだ長男の名前だったんだよ」「そ~なのか。
俺は健三が居てくれなかったらとっくに21世紀に帰って居るよ」「此処へ来たのはど~して?」「アンタも帰りたがって居るかなと思って顔を見に来たんだよ」
▼「ジジイを訪ねて三千里と言う訳か。ご苦労さん。相手が可愛いお姉ちゃまだったら良かったのにね」「アンタは明るいなあ」「全部無料の時間旅行なんてこんな
結構なハナシは滅多にないよ。ボクは是からお風呂に入ってみんなで晩飯だけど貴方はど~する?」「そ~だな、疲れたからお風呂には入りたい」「其れじゃあそ~言う事で。
一姫、二人で入るよ」「イキナリ入るの?」「オトコにはハダカの付き合いと言うのがあるんだよ」一姫と健三は外で待機。暫らくお湯に浸かって彼の張り詰めた雰囲気も
幾分は和らいだ感じ。其れでテキト~な世間話を始めた。処が此処で意外なハプニング。拳児がナニかを見て驚いて頻りに指を差してゼスチャー。其の方向には?。
▼若しかすると何時もの只の生理現象?。湯船に浸かって元気が出たら俄かに宗樹のイサオがハーフエレクト。「あ~是は何時もの事だよ。別に今遣りたい訳ではないんだ」
まあ赤銅色のエレクトしたツチノコでは初めて見たら驚くかも知れないね。「アンタ本当に俺よりも年上なのか?」「そうだよ」とにかくパニックは収束。落ち着いた処でハナシの続き。
「ボクは生まれも育ちも姫路だけど大学は島根で専攻は集団遺伝学。職業は平凡なサラリーマンだった」「俺は青森五所川原。専攻は有機化学。高校教師をして居た」
「吉畿三さんの故郷だね」「ファンなのか?」「ウン大好き。弟に欲しいくらいだよ。ボクは一人っ子なのでね」宗樹は早速歌を披露。
▼津軽平野の挿入歌の『春来れば、田ぜき小ぜきさ水コ出る。ドジョーッ子かじかっ子喜んで』の一節を唄った。「お~津軽弁、知ってるね」「歌詞だけね。ボクは68歳の
誕生日に股関節の故障で歩けなく為って、7ヶ月後には治ったけど其の儘隠居に昇格した」「隠居は昇格なのか?」「そ~だよ。毎日幾らでもスキな事が出来て毎日が竜宮城」
「俺は去年の70歳の誕生月でバイトをクビに為って落ち込んで居たんだ」「70歳まで出来れば立派だよ。教師なら年金は多いだろう?」聞いて見たら宗樹よりメチャ多かった。
湯船の中で大袈裟に後ろへ引っ繰り返って見せたら彼は初めて笑った。そして此のタイミングでお互いをアンタと貴方から宗樹と拳児に歩み寄り成功。
▼処で彼は宮沢賢治の大ファン。成る程名前が良く似て居るね。「宮沢賢治の事は知って居るかい?」「彼は農学校の教師で農業改革に取り組んで居たけど途中で挫折して、
其れでもボランティアで相談に乗って居た。死後に発見された遺稿で一気に評価が高まった人だよ」「良く知ってるじゃないか」「地質学に詳しかったと言うハナシは知って居る?」
「其れは初耳だよ」「土壌の知識がなければ農業指導は出来ないだろう?」「あ~確かにそうだな」「彼は農業指導に先駆けて辺りの詳しい土壌分布図を自分で作って居た。
ボクは其の地図をテレビのブラタモリで見たけどマンマ地質学者だよ」「為る程。そんな視点では見た事はなかったよ」意外にハナシが弾んだみたいだね。
▼「せっかく来たんだから一緒に帰ろうよ。ボクたちが乗って来たディスカスは6人乗りだから一緒に帰れる」「取り敢えず今夜泊ってから考えるよ」其れからお茶を一緒に飲んで、
やがて晩飯に為った。宗樹は4人を紹介。「千秋は何時もボクを尋問するのでハラハラドキドキなんだ」「アラ只のファンなのよ」「ミミは何時も美味しいゴハンを作ってくれるんだ」
「二人共政府の構成員じゃあないのか?」「ミミは関西事務局のナナのパートナーだけど一般人だよ。千秋はナナの仕事仲間で役職は姫路城主」「城主って?」
「お城で働いて居るだけですよ」ハナが此のグループは宗樹のファンクラブだと説明した。「誰が作ったんだ?」「千秋とハナが発起人。と言うか仕掛け人」
▼「へ~、宗樹は社交的なんだなあ」「そんな事ないよ。日常話す相手は殆ど奥様だけだよ。友人は全員音信不通状態」「俺は友人は多いけど私的な友人は居ないなあ」
「案外そんなものだよ。でも今日からはボクが友人で同志だ」「何時から同志なの?」「お風呂で未来人と戦う同志に為った」「戦うの?」「明日から賢そうなオンナの子を
エジキにして遣る心算だよ」「宗樹、話し合いなのよ‼」「向こうが喰い着いて来たら仕様がないよ」しかしまだ拳児は元気がない。「キミは気が着いて居ないと思うけど此の世界では
ボクたちのカラダは強化されて居るんだよ」一姫は慌てて居るが、「強化くらいはイイだろう?」宗樹は賢治を庭に誘って1メートル程ジャンプして見せた。「キミも遣ってみて」
▼半信半疑ながらも彼は同じ様にしたが無意識にカラダを庇って居る。「悪いところはもう全部治って居るよ」すると次第に動きが良く為って来た。「別に何処も痛くはないだろう?」
「あ~ホントだ‼」忽ち拳児は元気横溢‼。其れからみんなの所へ戻って暫し談笑。そして一姫に尋ねた。「一姫、拳児の部屋は?」「只今準備中よ」「じゃあ相部屋に仕様よ」
劃して拳児と健三も合流。其れから皆でテレビやビデオを見て深夜まで盛り上がった。次第に彼の様子も明るく為った。すると一姫が、「画期的に意識レベレが上がって来たわ」
其れを聞いて幾分は安心した。せっかく持ち直した同年代の新たな友人。何とか此の世界に定着して欲しいと思った。 【11月23日】
▼本部の三日目。朝食の前に4人で散歩。近くに1キロメートル四方くらいの広大な公園がある。「拳児、ジョギングは嫌い?」「腰を痛めるまでは必ず毎日走って居たよ。
だけど今は歩くのも辛いんだ」「此の世界ではそんなのは全部治って居るよ。昨日確かめただろ?。じゃあ4人で少し走ろう」結局公園の端まで殆ど全力疾走に為った。
「こんなスピードで走れたらオリンピックに出れるよ」「今の自分が良く分かっただろう?」「そ~だね、殆ど息も乱れない」上機嫌の拳児。其れではそろそろ口説こうかな?。
「是から当分一緒に行動しようよ。会議の合い間に観光旅行をするんだ。日本に帰ってからも一緒に居る方が楽しい」「自分はも~すぐ定期検診があるんだけど」
▼「此処ではそんなのも要らないよ」「あ~そうだな。忘れて居たよ」「今日は朝から会議があるんだ。どんな可愛いお姉ちゃまをおちょくれるか楽しみなんだけどね。何分アホなので
理論的な攻撃には弱いんだ。一緒に出て助けてくれないかな?」「自分はなにも力に為れないよ」其処で宗樹はフランク永井の『お前に』を突然熱唱。『傍に居てくれるだけでイイ。
黙って居てもイイんだよ』案の定彼はアテにされると弱いらしい。明らかに様子が変わった。「せっかく巡り会えた同志だから何時も一緒に居て欲しいんだ」「でもホントに
なんの力にも為れないよ」「だから傍に。も~一回唄おうか?」「分かったよ。でも単なる見物で終わると思うよ」「其れで十分だよ」こ~して我が陣営は12名(イコを含む)に増強‼。
▼更に朝食でダメ押し。千秋が彼に話し掛けた。「拳児、飲み物はコーヒー?」「あ~紅茶です」「宗樹が一緒に出てくれるって喜んで居たわよ。みんなはそんなにオトコの方が
イイのかって騒いで居るのよ」「本当に?」「きっと周りが未来人の女性とロボットばかりで寂しかったのよ。面倒見てあげてね」よお~し千秋良く言った‼。是でほぼ大丈夫。
愈々バトルルームへ出陣。こじんまりした小部屋に通された。すると画面にはワインさんが映って居るが他の学識経験者チームの面々は見当たらない。「ワインさん。他の方々は
覆面ですか?」「イヤ実はあれからロデムとも相談したんですがゲストには引き上げて貰いました。そしてネットで会議を見て適宜意見や質問を出して貰うカタチにしました」
▼「なのでど~ぞ何時もの調子で自由に喋って下さい」「其れならワインさんも此処へ来て下さいよ」「其方へ行ってイイんですか?」「初対面の人の肩書に圧迫感があったのでね。
其れでネットと通訳を介して距離を取りたかったんです」ワインは明らかに喜んだ様子。「其れなら応接室に場所を変えましょう。飲み物とおつまみを出しますよ」劃して再び移動。
ワインさんはすでに私服に着替えて居た。「実はワタシは初めから此処でお話をしたかったんです。其処へ彼女たちが是非参加したいと言い出して、そんな事をしたら貴方は
絶対に嫌がると思って居たんですよ」「ハイ其れでチョッとゴネてみたんです」「初めから此のカタチにすれば良かったですねえ」「随分迷惑を掛けて仕舞いましたね」
▼ワインさんのイコが自己紹介。「司会役のマインドですヨロシク」「お~其れは知性的な名前だね」「初めはマイン(私のもの)だったんです」「凄い進化だね。如何にも本部長の
イコに相応しい」マインドは明らかに嬉しそうだった。しかし此の宗樹の天然のベンチャラでマインドはすっかり彼を信頼して仕舞った。会議の進行と共に其の思い込みが
やがてガラガラと崩壊。宗樹のアホでイチビリでエッチなお人柄にマインドは激しい幻滅感に苛まれる様に為る。でもまあ是も将来良い経験に為るかもね。
結局メンバーはワインさんと宗樹チーム6名。応接室で茶話会的なリラックスした雰囲気で会議がスタート。宗樹の強引な作戦悉く成功。猶更イチビリが恐ろしい。
▼此の世界の基本精神を表す憲章の解説からハナシは始まった。草稿は初代翠川博士自らが執筆と伝わる。未来世界の優先順位。『先ず第一にガイア(地球)の意思を尊重。
無暗に自然を触らない。次に生物界のバランスを護り適切に支援。最期が人類世界の維持管理。安全防災を最優先し人々の生命を護る。経済原理、競争原理、効率選別などの
一つの原理の突出を許さずバランスと調和を重視する。平和共存と棲み分けの為に如何なる文化も宗教も少数民族も尊重して優劣を認めず、差別を許さない』十分にモラルが
成熟した社会で憲章の精神は十分に理解されて居る。従ってプライバシーを犯す者も行き過ぎた自己主張をする者も基本皆無。完全にグローバル且つ平和で公正な世界が実現。
▼宗樹はイコの存在を称賛。「生まれた時から終生自分だけに寄り添ってくれる者の存在がどれほど多くの人々のココロを救って来たかは明らかです。真に理想的な相棒ですね」
「彼らは本当に良く遣ってくれて居ます。正に人間たちのココロのドクターです」「ま~穿った見方をすれば中央アイとイコのネットワークに依る究極の管理システムとも言えますがね。
しかし其処には最も大切な愛があります」「愛があると感じますか?」「捻くれ者のボクですが少なからず感動して居ます。アイとイコは正に人間の良心が生み出した生命体です。
手塚治虫の鉄腕アトム其の儘ですよ」「アナタにそ~言われると余計に嬉しい。アナタは素直で真摯なヒトですよ」イントロは大分イイ感じに推移中かな?。(なにせベンチャラモード)。
▼愈愈此の世界の建設を牽引した初代の碧川、スノーマン、スペアミント三博士の紹介。各々にニックネームがある。碧川はお茶の水博士。由来は碧(お茶)と川(水)かな?。
次にスノーマンが雪杉博士。ナルホド如何にも。そしてスペアミントが槍杉博士で槍や銛由来。しかし巷では専ら行き過ぎ、遣り過ぎとも言われて居る。主な業績を紹介すると、
碧川博士は環境全般。ピースタウンや浮舟タウン、交通システム。イコ(ペロ)等。雪杉博士は機械工学系。宇宙太陽光発電、宇宙エレベーター、ディスカス、タイムマシン等。
槍杉博士はバイオ工学系。エレキング(サイボーグビーの愛称)。人口精子、セロ(ガロ)、マラキ(マッシュ)、クローン等。まあ概ねこんな処。次にカ簡単に歴史的経緯を紹介。
▼地質学者の碧川博士は当時政府の環境設計メンバー。ピースタウンやカプセル軌道構想を提言。同時にイコを世界中の人々に出生時に着けると言う構想を打ち出した。そして
ベビーシッターから看取りまでを只主人の為に奉仕する存在と定義。是で世界は平和に為ると予言。機械工学のスノーマン博士は是に深く共鳴。バイオ工学のスペアミント博士は
碧川博士の人物に強く魅了された。人工生殖技術は22世紀半ばには完成したが当時の最も若い女性はすでに40代前後。正にギリギリのタイミング。当時の宇宙太陽光発電は
まだ小規模で其の間をエレキングの大量飼育が繋いだ。此の時期が言わば未来社会の黎明期。
▼其の内に宇宙エレベーターが稼働。宇宙への資材運搬が劇的に進化。宇宙太陽光発電は十分に増強され人類は一気に潤沢なエネルギー環境を獲得。愈々未来社会が具現化。
世界中で死傷事故ゼロの目標を掲げる碧川博士は大量輸送の飛行機を否定。是を機にスノーマン博士はドローンに依る安全運航システムを提言。マルチエンジンシステムと
飛行中のドローンを見張り番のドローンが常にバックアップする体制で事故をカンペキになくした。そして現在スノーマンラボは非公開のディスカスに次世代の主軸を移そうとして居る。
なお宗樹と拳児を運んで来たタイムマシンに付いては此処では割愛。別途個別会談にて説明があるらしい。
▼碧川ラボは今やロデムと共に政府の意思決定上の重要な相談役。ロデムは今も初代の碧川博士を自分の理想の姿として居る。スノーマン博士は本来は相当な職人気質タイプ。
究極の過剰品質追求型。一方スペアミント博士は確かに大天才だがむしろアブない領域の住人。二人が存分に才能を発揮出来たのは大きな人間性と際立った調整力で
二人を導いた碧川博士の努力の賜物。其れがハナシを聞いた印象。そしてお茶の水博士はアトムの育ての親で碧川博士はイコを全人類に与えた親。如何にも相応しい愛称だね。
此処で突然のサプライズ。ワインさんが一姫に話し掛けた。「初代アトムくん。兄弟のお話を皆に聞かせてあげて下さい」一姫は少し狼狽したが、「ま~何れ分かる事ですからね」
▼「実は世界で初めて製作されたイコが碧川博士に着いたのですが、其の名前がアトムで昔のワタシです」ワインさんが嬉しそうに話した。「図らずもアナタのイメージは初代の
碧川博士と一致して居るんですよ」そして一姫は続けた。「其れを見てスノーマン博士は自分のイコをアトムの弟のコバルトにしました。するとスペアミント博士も自分のイコをアトムの
妹のウランと名付けたのです。此の名前は役職名として今も続いて居ます」ワインさんが説明。「ラボを継いだ時点でイコの名前も是に為るんです。例えば今の碧川ラボ代表は
3代目でイコの名前はアトムスリーです」。「継いだ時に名前が変わるんですね。マインがマインドに進化したのと同じですね」宗樹の此の言葉にマインドはまた顕著に嬉しそうな反応。
▼「こんな処で大昔を暴かれるとは思わなかったわ」「キミが世界最初のイコで初代アトムと言うのは凄く嬉しいよ」「チャンとアタマもボディもバージョンアップして居るから
旧型ではないのよ」「分かってまんがな」(つんくか?)。各ラボのスローガン紹介。先ず碧川ラボ。『如何なるクオリティも完璧為るバランスが大前提』。成る程。次は雪杉ラボ。
『時間もコストも超越して究極の品質を追及する』。アラアラ憲章も無視?。ヤッパし雪杉(行き過ぎ)だね。最後は槍杉ラボ。『芸術的でエキセントリックな成果を目指す』。あ~ヤッパし
槍杉(遣り過ぎ)だね。日本のニックネームは中々傑作。各ラボのスローガンも中々面白い。初代のイメージは十分に健在。劃して和やかな雰囲気で午前中の会談終了。




