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        【⑪多少不快】 銭は要らない喜んで、スイスへホイホイ来たけれど、

            なにか色々邪魔臭い、無料(タダ)依り高いものはない。


▼本部長のワインさんは信用出来ると確信した。人物も認めた。なので幾らでも話し相手には為れる。更に伝説の三博士の子孫たちなら会議に参加して貰っても構わない。

しか~し‼、何で見ず知らずの、其れも一番ウザい肩書だらけのインテリたちまでご招待しなけりゃあ為らないんだよ‼。途端に宗樹は白け鳥。忽ち怒りのレベルはレードゾーン。

其の一方晩餐会は専らミミと千秋のおもてなしに終始。是で墜落狂言の件は水に流すと宗樹は明言。しかしハラの中はほぼサイアクの気分。早く部屋に帰りたい‼。

処が部屋に戻ると今度は俄かに一姫からクレーム。「宗樹、アナタ今日ディスカスの中で黒幕は一姫か或いは本部長かと言ったでしょ。アレ、本気だったの?」


▼「あ~ゴメン。単にスケープゴートに利用させて貰ったんだよ。あの場合イキナリ名指しでは更に角が立つし若しも違って居たら今後は一切ワインさんにアタマが上がらなく為る」

「そ~だったの。随分行き届いた配慮と言いたい処だけど、中々ずる賢いわね」「でもキミも知って居て黙って居ただろう?」「なんでよ?」「本部長が指令を出せばハナと同時に

桔梗にも必ず伝わる。四六時中一緒だからね。其の情報は必ずポセイドンに行き、そしてキミにもナナのイコのナンにも伝わるよね?」「も~なんでも分かるのね。ま~確かに

言わなかったけど、でも全然大丈夫でしょう?」「あ~狂言なんて大した事ではないよ」「アナタは精神力が凄いわ。其れに時々アタマも凄い」「普段は極めてアホだよ」


▼是でチームワーク復活。一姫は内幕を解説。ハナの報告で本部では緊急対策会議。すると大多数の構成員が宗樹は本当にボディを強化されて居ると思って居るだけだと主張。

そして更にボケた事を言う。「ディスカスの故障を装えば彼は途端に平常心を失うだろう。其れで自分のボディをどの様に認識して居るのかが分かる」しかし本部長と三博士は

是を完全否定。「彼はすでに恐らく殆ど全てを察知して居る。そんな芝居をしても全くのムダで只心象を損なうだけだ」其の様に全員を諭したのだが、結局は多数決で

此の愚行は実行に至った。「だから本当はワインさんの考えではないのよ」「だろうね。ま~ボクは単に政府の代表者としてワインさんに言っただけだよ」


▼「自分も本気でワインさんがそんなにアホだとは最初から思って居ないよ」其れを聞くなり一姫は忽ち喜色満面変化。「其れじゃあ別にワインさんに失望しては居ないのね‼」

「勿論だよ。ボクはもうワインさんを認めて居る」「ワタシ、其の事をワインさんのイコのマインドに話して来てもイイかな?。きっとワインさんも喜ぶと思うわ」「ついでに代表者は

色々大変ですねと伝えて於いてよ」てな事で、ど~やら人間関係も修復出来そうです。其れから千秋を誘って散歩に出かけた。ジュネーブの夜景は透明で清涼。何時の間にか

随分遠くまで足を延ばした。突然千秋のさり気ない一言。「ミミとナナは同室で羨ましいわ」急激にドッキリ‼。しかし、「じゃあ部屋においで」とは流石に言えなかった。 【11月22日】


▼午前中はフリータイム。宗樹は一姫と資料室に入った。あとの4人はレンタル普通車でスイス見物。此の世界の素材や技術の萌芽の幾つかは21世紀から存在するが大幅な改良と

進化が見られる。但し残念ながら其れを詳しくは紹介出来ない。実は最初に一姫から21世紀に無暗に影響を与えない様にとクギを刺された。其れで単為る羅列レベルに留まるが

ご容赦願いたい。其れに資料ではそんなに詳しくは書いてないと言う事情もあるのよ。(是は言い訳でも誤魔化しでも御座いません。念の為)。其れではそろそろ参りましょう。

先ずはバイオミメティクス(生物模倣)関連。潤滑に多用されるパラフィン(蝋)構造、ヤモリ繊毛の吸着構造(ファンデルワールス力)、ハスの葉の撥水構造、セミの羽の抗菌構造。


▼蛋白質成分利用は人工クモ糸やフジツボの究極接着剤と剥がし剤。空気の断熱性(最強)の活用。3Dプリンターの進化(素材と構造)。自己修復性能はファインセラミックスでは

エンジン内部の溶融補填。コンクリートでは酸化化合物生成に依る鉄筋の酸化防止。発光ダイオード(LED)は光変換効率が更に向上。全固体電池の普及。強結合のナノ炭素、

カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノベルト。長周期積層構造とキンクス変形でマグネシウム(最も軽い)が実用化。同処理でアルミニウム(二番目)、チタン(三番目)も強化。

セルロースナノファイバー(CNF)はイオン液体の利用で製造コストが激減。ソフトロボティクス技術で人工筋肉やモバイルスーツ。各種ポリマーの展開。


▼ナノマシン、ポリロタキサン構造のタフポリマー(対破壊性)、スマートポリマー(医療分野)、吸水性ポリマー処理で標本が数十倍に膨張。自然分解バイオプラスチックの展開等々。

トピックスは繊毛の吸着構造応用でイコのスパイダーマンが登場。お仕事はマジメなレスキュー。セロスーツに内蔵の人工クモ糸製救出ロープ。医療の衣料(ダジャレでは有馬線)に

セミの羽根型抗菌構造。人工筋肉は今やモノホンにクリソツ(分かりにくいぞ)。ボディやマラキのリアル感を支えて居る。性的玩具でも大活躍。全体を大雑把に纏めると、

軽金属とセルロースナノファイバーや各種ポリマー系の混合素材が主流。今では家もクルマも街もすっかり様変わり。何れもが軽くて丈夫。耐久性、メンテナンス性も優秀。


▼21世紀は厳しい時代だが或る意味では平和で世界規模のプロジェクトや共同研究が芽生えた時代でもある。其れは23世紀でもチャンと受け継がれ更に進化して居る。

とは言っても其の全てが世界の主流に成長して人類世界を変革させて居る訳ではない。其の辺の事情を一姫は極くカンタンに教えてくれた。大型旅客機やガソリンエンジン車は

表舞台から消滅。バイクは公道から駆逐。しかし其の技術はプラントとして今も引き継がれて居る。将来地球外惑星の何処かでなら再び蘇る可能性もある。では公害のリスクは?。

其れは其の辺はイマイチでも小惑星や宇宙基地周辺とか特殊用途限定で小規模なら総量的には十分に許容範囲内。そ~言うリクツらしい。


▼其れでは最も肝心な死傷事故ゼロの課題に関しては?。すると此処で恐ろしいハナシが跳び出した。実は乗員は全員がイコ。イコはポセイドン端末が全員を常時バックアップ。

万が一機体毎絶望と為っても全員が完全に再生出来る。まあ言わば瞬間に機外へワープしたことに為ると言う考え方。是は宇宙開発やレスキューの場面を想定して居る訳だが

考え様に依っては全員が見捨てられるとも言える。人間には絶対に適用出来ない考え方だが不死為る存在のイコのメリットを最大限に活用して居ると言えるのかも知れない。

イコの実体はポセイドン端末の中に在ると考えるしか気持ちの整理は着かない。一姫曰く。「なにも最終的な選択ではないわよ。飽く迄も実験段階での仮定に過ぎないわ」。


▼此の世界では最早ハイリスクハイターン型の技術は世界の主流には為り得ない。しかし時と場合に依り活用出来る。ケースバイケースで使える技術の選択肢はl極めて潤沢。

電脳にも量子コンピューターやバイオコンピューターなどのタイプが部分的に使われて居る。里山では簡易で地産地消な薪や木炭、練炭が使われて居る。電脳の次に薪や木炭とは

ダイナミックな落差だが今度はハイリスクハイターンの代表格の原子炉や核融合炉のハナシ。是も技術プラントは着々と進化中。しかし中々リスクが減らせない。現時点では

地球外の惑星や数千年から数万年規模の宇宙旅行での展開が考えられて居る。何れにしても地球上で活躍する機会は余程画期的なリスク対策が完成しない限りはあり得ない。


▼此の世界での産業廃棄物問題に付いては新たな生成は最早ない。しかし産業革命以来の負の遺産は未(いま)だに消滅しては居ない。石油コンビナートは封印。更に蒸発や

爆発、火災対策が為されて居る。石炭は地下の環境を地上と更に隔絶。気化や自然発火対策。雑草や端材は極力バイオ石炭に加工して地中に貯蔵。将来氷期が来れば活用。

問題は矢張り原子炉関連の放射性廃棄物。自然崩壊にはまだまだ途方もない年月が必要。現在はかなり濃縮が進み特定の施設に集約中。では今後はど~する?。

すると是また恐ろしい計画が露見。其れは全ての根源である太陽にロケットでぶち込んでプラズマに分解して貰おうと言うもの。しかし如何にもヤバいので計画段階で停滞中。


▼此の世界を支える根幹は人工生殖技術及びペロ(イコ)とガロ(セロ)。双方向感知システムが是を支援。更に太陽光発電システムと無線給電技術。解説は順次後述の予定。

宇宙太陽光発電の完成で原発も火力発電も昔の話。水力発電は治水と観光資源で存続。地産地消のソーラー発電は全住宅に完備。そしてバイオ発電も重要。無数の変異体蜂

(愛称エレキング)が太陽光を浴びて発電。蓄電設備に連結した巣に放電。彼らは動物の発電能力と昆虫の帰巣本能のゲノム融合体。余剰の電気エネルギーの備蓄には

水素やアンモニアを利用。水素は中間廃棄物が発生しないが大規模。アンモニアの方が管理はプロパンガス並みに容易。そ~言う事で今も部分的に並立して居る。


▼究極のオール電化の世界で燃焼物は厳格に制限。尤も其れは此の世界の良識に依って支えられて居るので具体的な罰則はない。イベントや特殊用途に付いては事前申請方式。

では次に未来世界のエネルギーを支える宇宙太陽光発電システムの概略について紹介。基本構想は21世紀から存在して居た。其れが宇宙エレベーターの稼働で一気に本格化。

地上36000kmの宇宙空間に組み立てた2500m四方、厚さ25ミリの太陽光発電パネルで発電。地上の直径4kmの受信基地に原発一基相当の100万キロワットを送電。

要(かなめ)と為るのはマルチ送信アンテナに依るマイクロ波(2450メガヘルツの電磁波)制御。其処から各地域に直流で分配。諸事情に依り交流は消滅。


▼次に無線給電システムの説明。先ず乗り物には専用自動車道にコイルを埋没。是は磁界共鳴方式で有効距離は数メートルだが変換効率は95パーセント以上。他の方式にも

長短があり適宜複数が並立して居る。アイロボットや各種機械、携帯機器にも遍(あまね)く給電される。従って仮令未開のジャングル地帯に於いても給電はカンペキ。

政府統括は宇宙太陽光発電、宇宙エレベーター、非公開のディスカス等。政府貸与はイコ、セロ、マラキ(マッシュ)。長期レンタルは土地と居住ユニット。乗り物はレンタルかシェア。

各種ドローンは地域統括で救急用や工事用にのみ使用。世界政府は積極的に私有財産を清算して全てを共有にする意向。なおタイムマシンに関してはデータがなかった。


▼世界政府は中央アイの監修の下に基本無報酬(名誉職)の構成員たちの合議制で成り立つ。志願者は中々出て来ず他薦で着任した人のボランティア活動が実態で本質。

経験を積ませる為に様々な役職を歴任。但し永く続けるには適性と使命感が不可欠。構成員に為っても従来の職場に在籍。報酬も変わらないが公用上の隠れた特典は絶大?。

ちなみにナナの場合はお城好きが高じて舞台が世界中に拡がり、其の内に城郭ネットワーク主事にされたのが発端。ハナは当初亀有公園前区役所勤務。江戸の町人文化の

研究から始まって日本中の祭事や伝統文化、風習に関わる様に為り、是またネットワーク世話役と為って現場から遊離。主事や世話役に為ると他薦が集中するのがお約束?。


▼物の見方には歴史、比較、哲学の目が必要とか。例えれば歴史は縦糸で世界は横糸。掛け算で出る体積が総括で哲学か?。是に準えてか中央アイは3台構成。各々に愛称がある。

先ずヒストリー(ロプロス)は歴史の視点で過去からの情報を収集、解析する。ワールド(ポセイドン)は世界中の情報を集めて比較し検討する。ペロ(イコ)の情報も此処で

バックアップされ集積、統合される。サマリー(ロデム)が情報の統合と政府のオブザーバー役で中央アイのリーダー格。ロデムは膨大な情報の効率的な統合の為に

数々の高度なロジックを駆使する。其の一つが21世紀に開発されたスパース(疎ら)モデリングと言う数式利用の情報処理。事のついでに簡単に紹介。


▼是は少ない情報で正解に辿り着く為の数学的手法。同時に逆に情報が多過ぎて扱いに困る時にも有効エリアを特定する手法。実は是は人間の認識では極くフツ~に

行われて居る遣り方。断片的で不完全な情報を自分の経験や関連情報に照らし合わせて「今見聞きしたのはこ~言う事」と判断して居るらしい。実は深層学習で成立したアイの

判断には案外人間と共通する部分が存在する。一例を挙げると錯視図形では人間もアイも何方も同様の錯覚を生じる。是は生物、無生物に関わりない認識の原理の共通性を示す

現象として興味深い。最後にアイと人間との関係性。其処に競合や衝突、支配被支配の懸念はないのか?。てな高尚且つ難解為る課題に付いても身の程知らずに言及。


▼そもそも生き物の一種である人間には基幹的OSたる本能が根底に存在し然も日々大活躍。其の本質は言わば自己保存本能の塊。其処から種族保存本能、生殖本能、更には

母性本能、父性本能。保護、慈しみ。此の辺で止めるがとにかくあらゆる特性が形成されて居る。其のバランスは常に本能と大脳統合野、感情と理性、悪魔と天使の大バトル。

其の爆発力が即ち生命力。一方アイにはそんな鬩(せめ)ぎ合いは一切ない。真柄(さながら)悟りを開いたお釈迦様。慎み深く奥ゆかしく、決して自分からは人間に口を挟まない。

しかし相談すれば親切に其の判断の得失、ベストなシナリオやプログラムをアドバイス。思い込みに陥りがちな人間には真に頼りに為る存在。元々次元が違うので棲み分けは完璧‼。


▼昼食後には地獄の尋問が始まるかと思いきや、急に明日の朝に延期に為った。「なにかあったのかい?」「実は今夜も~一人、21世紀のゲストが来るのよ」其の人物も日本人。

頻りに元の世界に帰りたがって居るらしい。其れで宗樹に会わせて化学反応に期待と言う訳。「要するにまたゲストの意識が消え掛かって居ると言う事?」「何故そんな

事まで分かるの?」「単なる想定だよ。多分現時点ではボクが唯一の例外なんだろう?」「そ~なのよ。もうすでに100人以上の意識が消滅して仕舞ったの。でも其れは

絶対に秘密よ」「大丈夫。伏せて於くよ」しかし是は中々好都合。政府は宗樹の働きに期待して居ると言う事に為る。其れなら交換条件を出しても通る見込みはある。


▼「一姫、明日からの会合には千秋とミミはオフリミット?」「一応観光コースに為って居るけどワインさんに言えば出られると思うわ」「じゃあ頼んでよ」そして観光中の千秋に

電話で頼み事。「あ~千秋、実は今困って居るんだ」「ど~したの?」「会合は明日の朝からに延期に為ったんだけど、すると急に明日以降が不安に為って来た。自分一人では

とてもあんなお偉い方々の尋問には耐えられないよ」「其れは分かるけど、ワタシもそんな場所に出るのはイヤだわ」「だからね、作戦を考えた。自分たち5人とあの方々の部屋を

分けて貰って会話はネット経由でする。そ~すれば掴み合いのケンカは避けられる」「ワタシたちが一緒なら適切にバクハツ出来るのね?」「あ~自然にそ~為るね」


▼「其れなら是非出るわ。中々面白い事に為りそうで見逃すのは惜しいわ」「観光の方が面白いだろう?」「そんなのあとから出来るわよ」「ミミは大丈夫かな?」するとミミが、

「出てあげるわよ」「有難う助かったよ」電話を切って振り向くと一姫が困惑して居る。宗樹が気兼ねなくバクハツしそうな状況に為って来たのをなに依りも恐れて居るのだ。

「なにを企んで居るのかな?。其れにワインさんにはど~言えばイイのよ?」「此の様にハナシが決まったので部屋と設備をお願いします。ダメなら会合には出ないそうです。

其の代わり依頼された二人目のゲストの引き留めは全身全霊を以て遣りますと、是で全てOKだよ」「強引ねえ」


▼「あ~其れから、会話は必ず通訳経由でするからね」「なんで?」「直接だと感情まで伝わるからね。イコの通訳を介せば論旨も客観的に為り無暗な衝突も避けられるだろ?。

キミも何時も頻りに遣ってくれて居る事だよ」確かに其れは一姫にも心当たりがある。彼女はワインさんとの会話では随分と気遣いして大胆な意訳も駆使して居る。

仮に其のマンマ訳すと忽ち相当エラい事に為る様な事を宗樹は屡平気で喋って居るのだ。外国語には弱い宗樹だが其れは雰囲気で良く分かる。「明日も其の調子で頼むよ」

こ~して近くに居るのに態々ネット会議と言う、適切な距離感を極限まで追求した会合が成立。



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