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      【⑦昭和昔話(上)】 今日はお家(うち)で雑談会、なんでも喋る宗樹くん、

                ミミと千秋の誘導で、プライバシーが丸裸。


▼本日ナナは不在。すると偶々千秋が家に来て居る。しかし城主不在で姫路城は大丈夫なのか?。何気ない雑談から暮らし今昔物語が展開。「此の世界は全てが電気なんだね」

「貴方の時代はど~だったの?」「電気は電柱の送電線でカミナリで停電すると作業員が雨の中を電柱に登ってタイヘンだったよ。水道と都市ガスは地下配管で水道の屋内配管の

取り換えは高額でメチャ一大事。此の世界では電気も水道も地震でも大丈夫だしキケンなガスもない。理想的だね。土地も住宅も長期レンタルで殆ど無償供与に近い。ボクの家は

25歳の時に親子で協力して二階建てにしたんだが一人っ子で同居だから出来た事なんだ。でも其の家も今年で築50年でもう補修出来る段階ではない」「ではど~するの?」


▼「補強工事かリフォームか、いっそ建て替えるか?。処が更地にする費用が先ずない。多分将来は夫婦で間借り生活か老人ホームだね」「厳しいわね」「ま~其れはともかく

此のタウンのインフラ環境は素晴らしいね。タウン街にクルマは入って来ないので安心だ。買物も通学も通院も全てがタウン内で賄える。亭主はなんの不安もなく仕事に行ける。

正に最高の居住空間だと思うよ」「平和だから出来た事なのよ」「そ~だね。我々の時代でも学べる点は多々あるけど、先ず世界中から紛争や貧困や差別がなくならないとダメだね」

「貴方の子供時代の暮らしを聞きたいわ」「270年前の古代人の暮らしと言う訳か」「イエそんな意味ではないのよ」「あ~是は何時ものジョークだよ」


▼「では転居三回目の小学一年生三学期からの市営住宅時代の暮らしを紹介するよ。其れまでは親戚や他人の家で間借りして気を遣って居たので生まれて初めての一戸建ての

解放感はバツグンだった。十坪平屋だが庭は十分に広かった。気兼ねなく住める家に巡り会って一家三人はようやく落ち着いた。親も喜んで居た。でも一方では通勤は物凄く

遠く為った」「其れはど~して?」「さ~籤運なのか?、初めから勤務先の街の中心部には申し込めなかったのかは分からない。でも今から考えると父の為には間借りでも

近隣の方が良かったのにと思うよ。調理師には市場へ仕入れに行く当番があって其の日には始発に乗って居た。時々は前夜に姉の嫁ぎ先の家に泊めて貰ったりもして居た」


▼「此の家には高校三年生の秋まで住んだ。其れから幼稚園の時に間借りして居た千代田町に偶然帰って来た」「どんな家だったの?」宗樹はパソコンに入れて居る周辺図と

住宅の間取り図を見せた。「チャンと色分けして居てキレイだわ」「先ず此の市営住宅の立地から話すけど、雨が降るとスグに排水溝が溢れて何度かは家の前の道路が小川状態。

床下浸水の一歩手前だった。其の原因は先ず第一は排水機能の悪さ。次に敷地全体が周囲の道路依りも150センチ以上は低かった」「其れは何故なの?」

「多分元水田をロクに盛り土もせずに住宅地にして居たんだよ。此の環境はヤバいぞ‼、と思ったね」「不良物件なの?」「当時の造成レベルはそんなものだよ」


▼「では当時の暮らしを紹介するよ。初めは父の通勤用の自転車も買えなくて駅までは徒歩かバスだった。灯りは裸電球。暖房は木炭を入れた火鉢で煮炊きにも利用して居た。

其の内に練炭が出て来て是に変った。冬は豆炭が入った炬燵を三人で使って居た。炬燵は黒色の陶器製で上は丸く四方に穴がある。是は空気の供給と豆炭の出入り口。

灰が入った花鉢型の容器に豆炭を入れて炬燵に入れた。其処に布団を被せた」「火事に為らないの?」「其の為に炬燵の外郭があるんだよ。だから若しも炬燵が転んだら一大事。

西側が父の布団で東側がボクの布団。北側に母の布団。足元は炬燵の所で集合。詰りT字型にして一つの炬燵を三人で使って居た」「三人で?」「其れが当時の常識だよ」


▼「練炭と豆炭は木炭を粉状にして成型して固めた物だよ。練炭は大きめの筒状で中に沢山の縦穴があるが是は燃焼効率を上げる為の空気の通り道。豆炭はキウイフルーツを

扁平にした様な形だった」「夏はど~して居たの?」「当時は冷房なんかないので建具を開放して自然の通風任せ。団扇が扇風機の代わり。子供はパンツ一丁姿。三人で川の字に

布団を並べて蚊帳を吊って寝て居た」「本で見た事があるわ」「台所は裏口の土間に薪の釜戸があって是でお米を炊いた。ポンプの井戸水は隣と共用で夏は子供のプール代わり。

台所の板場には食卓。早いハナシが卓袱(ちゃぶ)台で食事。床が固くて冷たいので座布団を敷いた」


▼「買物は八百屋さん?」「市営住宅は東芝工場の北向かいにあったので買物は住宅の西の方にある東芝工場の購買部へ行った。飴は二個で一円がフツ~で買い物は

匁(もんめ)の量り売りがメイン。匁とは日本古来の重さの単位で2グラム弱辺りだったかな?。まだグラム単位の秤(はかり)の普及前だった」「二個で一円の飴は凄いわね」

「ほっといてくれよ。当時はタマゴ一個とサンマ一匹の値段が同じで21世紀では想像もつかないくらいタマゴは高かった。だから余計に卵懸けご飯は贅沢なご馳走だった。

有精卵なのでとても美味しかったよ」「今でも有精卵は高価よ」「此の当時は無精卵はまだなかったんだよ。ハナシが方々でズレるねえ」


▼「ヤッパしハナシが噛み合わないな。当時のハナシをして居たらなにかミジメな感じがして来たよ。そろそろもう止めよう」「感心して居たのよ」「其れが堪えるんだよ。是でも

縄文時代や江戸時代と比べると随分進化して居るんだよ」「でも江戸時代でも470年前よ」「キミたちから見れば似た様なモンか。でも江戸は当時世界でも一番人口が多くて、

其れなのに一番衛生的だったんだよ。疫病がダントツに少なかったんだ」「環境の衛生レベルが高かったのね」「特に上下水道が立派だったんだよ。でも其の一方火事は多かった。

其れから土蔵や瓦屋根が普及して来たんだ」「其の前は藁ぶき屋根だったの?」「江戸時代の人が怒るよ。板張りだったんだよ。ヤッパしハナシが噛み合わないね」


▼少し縄文時代の弁護もしたく為って来た。「処で此の世界にも電球色の照明はあるの?」「あるわよ。何故か神経が休まるの。だから何時までもなく為らないのよ」「其れには

或るヒミツがあるんだよ。人間は昼光色の照明が最も良く見えるけど其の反面目も神経も疲れ易い。なにせ是以上の短波長に為るとエックス線や殺菌光線領域に為るからね。

最もバランスがいいのは昼白色か白色なんだ。しかし電球色の波長はもっと長い。明るさは減るが熱エネルギー成分が増える。赤外線の一歩手前だからね。だから文字通り暖かい光。

其のルーツが竪穴式住居の囲炉裏だよ。明るくはないが目を刺激せず暖かく安らぐ。先ずそ~言うリクツがある」「暗いけど目と神経は休まるのね」


▼「其れに加えて太古の記憶がある」「太古の記憶ってなに?。またなにかのギャグなの?」「今日はギャグはないよ。オトコは食料の調達で危険を冒して狩猟や漁や採取に行く。

そして運良くやっと帰って来て我が家で心底安心する。囲炉裏の前で家族に囲まれて食事をしてようやく警戒心を解いて微睡(まどろ)む。そんな生活が何万年も繰り返された。

何時しか囲炉裏は安心と幸せの記憶に直接繋がる場所に為った。其の記憶は永遠に人類の中に存在して居る。だから電球色を見るとココロが休まる」「ホントなの?」

「ウン、エッセンスに為る部分は確かに本当だよ」「確かに暖かくて安らぐ光だわ」此のハナシには千秋も共感してくれた様です。


▼此処で何気なく喋ったハナシが後の『ディスカス墜落狂言事件』の発端と為るのだが、「そ~言えばハナの趣味は江戸文化だと聞いたよ」「日本文化保存協会の世話役なのよ」

「上から読んでも山本山。下から読んでも山本山ってCMがあるんだけど、要するに江戸時代からある逆にも読める逆さ言葉で其の傑作が”島田の狐、鐘撞きの騙し”」

「不思議な言葉ね」「実際には何の意味もない逆さに読んでも同じ言葉。”しまだのきつね”と言う言葉が鐘撞きの”か”の処で反転して居る」二人は逆さに”ねつきのだまし”と読んで、

「あ~ナルホド‼」「此のハナシをしたのはね。此の間のファンクラブ会員の4人全員が逆さに読んでも同じ名前だったからなんだ。是は偶然とは言えヒジョ~に珍しい」


▼其の4人の名前と言うのは、海江田映花(かいえだえいか)、北野多紀(きたのたき)、駒田真子(こまだまこ)。三波奈美(みなみなみ)。「ア、ホンドだ」二人は其れに気がついて

頻りに感心感嘆。「ハナは此の逆さ言葉を知って居るかしら?」「そりゃあ江戸文化のオーソリティだから当然知って居ると思うよ。ハナに此の4人の名前を教えたら

きぅと喜ぶと思うんだ」実は此の一言が事件の引鉄に為る。しかし此の時点では誰もそんな事は夢にも思わなかった。そして和やかな雰囲気も此処まで。唐突に空気は一変?。

「そろそろ此の辺で貴方のパーソナリティがど~してこ~為って仕舞って居るのかを教えて頂戴」ナニか突然警察の取り調べか医者の精神鑑定みたいな雰囲気に為って来たぞ?。


▼「ワタシの何処がイケないの?」「貴方の生い立ちを聞きたいだけなのよ」すると一樹が口を開いた。「ワタシも今までに得たデータで大体の事は分かって来ました」

「なにが問題なのか自分には分かりまっしぇん‼」「突然バクハツする其のエネルギーの源を知りたいのよ」「迷惑なんだね?」「面白いのよ」こ~して俄かに査問委員会が始動。

其処で先ず自分の原点たる親の事から話してみる事にした。「父は11人兄弟の8番目で三男。子供の頃に橋から落ちて片目が弱視に為った。卒業前に学校の先生が態々家に来て

”是非進学させて遣って下さい”。と頼んでくれた。しかし家には到底其の余裕はなかった。父は諦めはしたがあとで土間で暫く泣いた」「余程勉強が出来たのね」


▼「其の後或る有力者が書生にしてくれて勉強を出来る希望が見えて来た。処が此処で食堂を始めた長男の要望で無理やり調理師にされて仕舞った」「落胆したでしょうね」

「更に終戦の前年に突然召集令状が来たんだ。片目が弱視で兵役検査に落ちて居てすでに27歳だったのに戦争末期に為ると駆り出されたんだよ」「酷い状況だったのね」

「其れで急遽知り合いのお寺の娘と年末に結婚して姫路駅南のアパートで出征間際まで暮らした」「じゃあ丁度此の辺りなのね?」「ウン、276年前のね」「不思議な偶然ね」

「そ~だね。そして翌年早々満州に出征した。其の後終戦間際の姫路空襲の二回目で辺り一帯は焼け野原に為った」「お母さんは生き残ったのね」


▼「母は焼け残った実家のお寺に転がり込んだ。父が帰って来たのは年末辺り」「良かったわね」「父が生還したのは計り知れない幸運だった。でも中々定職には就けず

自分の幼稚園時代まで流れ板状態が続いた。お寺も1948年に伯父さんの奥さんが亡くなり、其の翌年には叔父さんまで病死して其の翌月に祖父も亡くなった」

「遊び相手は居たの?」「お寺の従兄は優しかったけど6歳も年上で殆ど大人だった。近所にも同年代の友達は居らず只庭で花や動物を見て居た。秋に虫の音を聞いて居ると

背中に読経の声が聞こえて来た。自分の死生観は此の時期にキッチリ出来上がって居た様な気がする。周りはみんな大人で楽しみはラジオと家にあった本だけだった」


▼「でも漢字は分からないので母に聞きながら読んで居た。すると4~5歳の頃にはなんとなく文脈で漢字が読める様に為った。其れで父は自分の子は賢いと思い込んだ」

「も~すでにかなりフツ~と違うわ」「仕様がないよ。イキナリ幼稚園社会にデビューしたけど全然周りに馴染めなかった。すでに人間社会から遊離して居たらしい」

「幼児教育の失敗ね」「でも誰も悪くないよ」此処で一樹が一言。「感受性と自我意識過剰ですね}『真面目クン、無意識だけど止め刺し』処が宗樹はメゲずに出生秘話を語る。

「自分を産んだ時、小柄な母は身長は145センチ前後。体重は戦後の混乱期で35キロくらいに減って居た。今なら出産自体がキケンな状態だよ」


▼「ホントに命賭けだったのね」「更に生まれた子供は初産でもあり超未熟児てか超軽量。恐らくは2キロあったかど~かも怪しい。でも何故か奇蹟的に順調に成長した」

「生命力が強かったのね」「生まれた時からしぶといんだよ。処が此処で最初の試練。風邪が元で左耳が中耳炎に為って後遺症で殆ど聞こえない。聴覚神経が未熟な時期の事で

今ではも~補聴器でも為す術がない。所謂伝達性片耳難聴で是は大きな弱点に為って居る。おまけに人の声がすると聴き取ろうと無意識に半身に為って悪目立ちして仕舞う。

其れから未熟児だったので網膜も幾分薄い(貧弱)らしい。是が今の末期緑内障のルーツ」「若しも戦争がなかったら随分変わって居たでしょうね」「全部其の性にして居るよ」


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