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【完結済】妹の最期の嘘を、世界の真実に書き換える ~チェルノブイリの真実を偽造したKGB数学者の陰謀~  作者: 寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
白い花

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4/30

証拠を置きに

1週間後の夜明け、レフはモスクワ・キエフ駅の3番ホームに立っていた。


キエフ行きの夜行列車は定刻より3分遅れていた。ソ連の列車はいつも遅れた。誰もそれに文句を言わなかった。


レフの荷物は小さなリュックサック1つだった。中身は着替えが2日分、医薬品のキット、水と非常食、ガイガーカウンター、カメラ、予備フィルム10本。そして、英語の刻印が入った小さな金属プレートが3枚。表面には「BURN3 TEST UNIT DO NOT REMOVE」と彫られている。実在しない装置の、実在しない識別タグだった。


3枚あるのは意図的だった。1枚は現場に置く。1枚は将来、物的な提示が必要になったときのための予備。もう1枚は破棄する前の最終検証用。KGB冶金研究所の製造ラインは、1枚だけを作るには手間が大きすぎた。同じ工程で3枚を鋳造する方が、痕跡は残さない。


プレートの素材は3等級のマグネシウム合金。KGB冶金研究所が3カ月かけて、鹵獲したアメリカ製軍用部品の残骸をリバースエンジニアリングして製造した完全な同等品だった。刻印の書体はヘルベチカ・コンデンスド、深度0.4ミリ。1980年代のレイセオン社製識別タグの仕様書と、寸分違わない。素材分析にかけられれば、「アメリカ製軍用部品の仕様と一致する」という結論が必ず出るように、レフが素材から設計した。


「BURN3」という文字列にも意味があった。CIAの過去の作戦名の命名パターン――動詞または名詞に数字を組み合わせた3〜6文字――を模倣した造語で、実在しない。しかし実在するとしても矛盾しない造語。アメリカが「そんな作戦は存在しない」と否定したとき、「存在しないことを証明しろ」と返せる形の名前だった。


そして、書類の束。ウクライナ共和国保健省の職員証と合わせて使う書類セット。偽造ではなく、保健省の黙認の下で発行された、汚染状況調査のための特別通行証だ。目的は「チェルノブイリ周辺の長期的な土壌汚染調査への同行取材」という名目だった。完全な嘘ではなかった。彼はその調査に実際に同行し、正式な調査報告書作成に貢献した。その見返りとして、今回の単独潜入のための書類が準備された。


列車は午前1時過ぎにキエフに着いた。翌朝、プリピャチ行きのバスに乗り換え、さらに小型のミニバスに乗り継ぎ、合計6時間かけて禁止区域の南側ゲートに着いた。書類は問題なく通過した。


禁止区域の中は、静かだった。


静かすぎた。


プリピャチの街は廃墟だった。かつて4万9000人が住んでいた街が、事故の翌日午後に完全避難し、それ以来無人だった。窓は割れ、壁には蔦が這い、道路はひび割れて草が生えていた。観覧車が錆びたまま空に向かって立ち、そのゴンドラは風もないのにわずかに揺れていた。


レフはガイガーカウンターを取り出した。毎時200ミリレントゲン。正常値の数千倍だ。発電所に近づくにつれ、数値が跳ね上がった。マスクを着け、アイゴーグルと手袋を装着した。ガンマ線は防げない。できることは内部被曝を最小限にすることだけだ。


4号炉の上に建てられた石棺は、想像より遥かに巨大で、遥かに不完全だった。コンクリートのパネルの間に隙間があり、そこから鉛色の何かが漂い出ていた。


石棺の南側に、まだ使われている通路があった。保健省の書類を持って、「4号炉の汚染調査のため内部サンプル採取を行う」と告げた。監視員は渋い顔をしたが、通した。


「3分だぞ。線量計を返却して、記録用紙に署名しろ」


内部に入った瞬間、世界が変わった。廊下の壁には黒ずんだ染みがあった。床には砂のような灰色の粉が薄く積もっていた。ガイガーカウンターは狂ったように鳴り続けた。


蒸気分離器のフロアは、4号炉建屋の中層部にあった。設計図はKGBのアーカイブに存在した。レフはそれを事前に記憶していた。補助階段は薄暗く、踏面には破片が散乱していた。3フロア上がったところで、ガイガーカウンターが警告音を変えた。毎時1.5レントゲン――即時退避が必要な線量。


蒸気分離器のフロアにたどり着いたとき、まず匂いが来た。金属の焼け焦げた匂いと、コンクリートの粉塵と、その下に、かすかに何か有機的なものが混ざった匂い。それが何なのかを考えないことにした。


フロアは爆発の衝撃で大きく変形していた。しかし奥の角に、アーニャが「見た」と言っていた場所があった。蒸気分離器の本体が、コンクリートの柱の陰で辛うじて原型を留めていた。


レフはそこへ向かった。床に膝をつき、分離器の基部を懐中電灯で照らした。


何もない。


当たり前だ、とレフは思った。ここには最初から、何も存在しなかった。それは4年かけて確認済みだった。今この瞬間、床に何もないことは、この計画の前提であって発見ではなかった。


それでも、レフは立ち上がらなかった。


理由はなかった。ただ、体が動かなかった。


数秒だけ、そのまま座っていた。膝の下のコンクリートが冷たかった。


それから、手袋をはめ直した。リュックから、3枚のうちの1枚のプレートを取り出した。分離器の基部の下、床のコンクリートと支持フレームの間の5センチほどの隙間。そこに、プレートを滑り込ませた。

角度を調整する。懐中電灯を当てたとき、偶然見つかったように光る位置。だが普通に歩くだけでは気づかない位置。


証拠は、発見されるものではない。発見されたように、配置されるものだ。


レフは数秒間、その小さな金属片を見つめた。爆発で主要部分が失われ、識別タグだけが残ったように見える。


「BURN3 TEST UNIT DO NOT REMOVE」


最後の単語は、削れていた。英語であることだけが重要だった。


レフは写真を撮った。角度を変えて、もう1枚。露出を変えて、もう1枚。最後に、プレートの周囲に付着した灰と錆を少しだけ指で馴染ませた。


残る2枚は、リュックの底の耐熱ケースに戻した。


暗闇の中で1秒、目を閉じた。


アーニャ。世界に、見つけさせる。


もう1つ、必要なものがあった。テープだ。医務室は別棟にあった。石棺の外、発電所の敷地内の別の建物。そちらは立入制限が緩い。レフは外に出て、発電所の敷地を横切った。


線量が下がった。まだ高いが、石棺内部よりは遥かにましだ。


医務室の建物は、無施錠だった。扉を押すと、軋んだ音と共に開いた。中は薄暗く、4年前のまま時間が止まっていた。通信システムの端末は壁際にあった。そこに、カセットテープの棚があった。消えかかったラベル。スラブ語で「4/86」と書かれたもの。レフはいくつかをポケットに押し込んだ。


その瞬間、廊下で音がした。


足音。複数。


レフは棚から離れ、壁際に張り付いた。しかし足音の調子が違った。巡回なら、もっとゆっくり、のんびりした足音のはずだ。しかし今聞こえているのは、低く、素早く、明らかに何かを警戒しながら近づいてくる足音だった。


訓練された者の歩き方だ。


レフは処置台の下に身を滑り込ませた。シートの陰に隠れた瞬間、ドアが開いた。懐中電灯の光。2条。2人いた。


ロシア語ではなかった。何か別の言語に聞こえた。断片が漏れ聞こえる。


「……ここではない」


「記録だけ取れ。長くいるな」


処置台の下の暗闇の中で、レフの頭は目まぐるしく動いた。あれは英語か。ドイツ語か。ウクライナ語の田舎方言か。それとも、あまりにも「英語だったらいい」と思っている自分の耳が、そう聞かせているのか。


区別する術は、なかった。


区別する必要も、もはやなかった。


「英語を話す男を医務室で見た」という事実は、これで存在することになった。


足音が遠ざかった。レフは処置台の下で、3秒間、息を殺し続けた。心臓の音が、ガイガーカウンターより大きく聞こえた。


レフは処置台の下からゆっくりと這い出た。非常口は医務室の奥にあった。扉を開けると、外の空気が流れ込んできた。


走った。発電所の外壁に沿って走り、南側の金属フェンスへ向かった。事前に確認していた地点、フェンスポストが根元から腐食していて引き倒せる場所まで、105メートル。


背後で叫び声が上がった。銃声のような音。しかし弾が着弾した場所は、右側のコンクリートの壁だった。低い。あまりに低い。威嚇だ。おそらく通常の警備員が、無許可の侵入者を追っただけだった。それ以上でも以下でもない。


レフは走り続けた。腐食したフェンスポストを全体重で押し倒し、有刺鉄線の上を飛び越えた。右の手のひらが切れた。痛みは感じなかった。


外に出た。禁止区域の外周道路が見えた。振り返り、2人の追っ手が走ってくるのが見えた。100メートル以上離れていた。


レフは道路に出て、左へ曲がり、草原の中を走り続けた。


5分後。10分後。追跡の音が消えた。


レフは野外の水路の陰で止まった。荒い息を整えた。ポケットの中に手を入れ、カセットテープを確認した。あった。リュックの底の耐熱ケース。プレート2枚。あった。


右手のひらから血が出ていた。じんじんと痛み始めた。放射線のせいか、有刺鉄線のせいか、あるいは両方か。


現実は、語られた瞬間に、そう語られた通りのものになる。


それがレフの発見だった。


「BURN3 TEST UNIT DO NOT REMOVE」――これは、アメリカが「やっていない」ことの証拠になる。

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