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包囲網からの脱出

アパートの周囲を囲む黒塗りの車は、時間が経つごとにその数を増していた。

窓から漏れる光さえも、彼らにとっては私の居場所を確定させる標的でしかなかった。


「一ノ瀬、裏口のフェンスを越えれば、古い商店街の路地に出られる。……そこなら車は入ってこれない」


佐藤くんは震える手でリュックを背負い、私を促すように短く告げた。


私たちは息を潜め、最小限の荷物だけを持って、夜の帳が下りた裏口へと滑り出した。

冷たい夜風が、雨上がりのアスファルトの匂いを運んでくる。

だが、路地の出口には、既に無線機を手にした二人の男が待ち構えていた。


「……見つけたぞ。一ノ瀬様、大人しく我々と同行していただきましょう」


男の一人が一歩踏み出し、私の腕を掴もうと無機質な手を伸ばした。


その瞬間、私の中で抑えていた「何か」が、防波堤を壊して溢れ出した。

恐怖と怒りが混ざり合い、私の全身から、抗いようのない芳醇な香気と、視神経を焼くような眩いオーラが放たれる。 それは意志を持って放たれた、初めての能動的な「攻撃」だった。


「……っ、……あ、……ぁああ……っ!」


手を伸ばした男の顔が、一瞬で陶酔と恍惚の色に塗り替えられた。

彼は膝から崩れ落ち、私を見上げながら、荒い呼吸と共にその場で果てた。

もう一人の男も、無線機を握りしめたまま、雷に打たれたように硬直している。

彼の瞳からは理性が消え失せ、ただ私という存在に圧倒され、股間を濡らしてその場にへたり込んだ。


「……一ノ瀬……、すごい、な……。……これ、なら……」


背後にいた佐藤くんすらも、私の背中から放たれる圧倒的な美の余波に、意識を飛ばしかけていた。


「佐藤くん、しっかりして! 私を見て、正気に戻って!」


私の叫びで、彼は辛うじて自分を繋ぎ止め、私の手を引いて全力で走り出した。


背後では、男たちが次々と無力化され、静かな絶叫が路地に響き渡っていた。

私の力は、もはや防衛のための盾ではなく、触れるものすべてを物理的に破壊し、服従させる「力」へと進化していた。

私たちは追っ手の包囲網を、文字通り「骨抜き」にしながら、夜の闇へと深く潜り込んでいった。

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