自分の行動
その日の放課後。
珍しくナオキとタカがまだ教室に残っていた。
「今日は塾行かないの?」オレは2人に聞いた。
「今日は授業の開始が少し遅いから時間あるんだよ」ナオキはスマホゲームに夢中になりながらも答えてくれた。
「授業前に英気を養っているのさ」
そう言うタカもゲームに夢中だ。
おそらく2人で対戦でもしているのだろう。
2人がゲームしている姿を見ると、少し安心する。
頭が良い人もゲームに夢中になるし、オレらと同じ人間なんだなと。
「オンとオフがハッキリしてるのが学力上げるコツかね?」アスカもオレと同じ事を思っていた様だ。
2人のゲームが終わった様だ。
タカが喜んでいる姿から、どっちが勝ったのかは明白だった。
「すごい名案があるんだけどさ」
スマホを置いたナオキが急に話はじめた。
「大学見学なんだけど、平日に行かない?」
名案というより迷案だ。
「学校はどうするの?」アスカがすぐに返す。
「ズル休み!」なんの躊躇いもなく即答するナオキ
「オレは良いけど、2人は?」
ウチは放任主義な感じなので、ちゃんと理由を説明すれば大丈夫だろう。
体調を崩すした時以外で休んだ事もないので、親も信頼してくれている面も強い。
しかし、タカとアスカの家の事情までは分からないので2人の反応を待つことにした。
「オレも多分大丈夫だと思う。勉強のモチベ上がりそうだし、親に反対されても行く!」
アスカは冗談混じりに答える。
「うちの親、頭硬いからなー。
学校行くフリして、みんなに合流するわ。
塾はさすがに休めないから、塾の前に解散でもいい?」
タカは申し訳なさそうにそう言うが、ナオキの提案が予想外すぎるだけだ。
「タカが気を使う必要ない。ナオキの提案がぶっ飛んでるだけ」
「ありがとな、ユウ」
タカはオレの発言に救われた様だった。
「この学校って無断で休んでも親に連絡したりしないし大丈夫だよ。万が一、休んだのバレたらみんなでタカの家に謝り行こう」
タカの気持ちが軽くなるように、アスカも発言した。
「タカの両親が厳しい事知ってるか、平日休んでも良いか直談判しに行ってみようかと思ってたんだけど。。」
みんなに気を使わせてすまん。と言いたそうな表情でナオキが言う。
「それを先に言ってくれ。けどありがとな」
そう言うタカの表情には嬉しさが見え隠れしている。
幼馴染のナオキだから分かるタカの家の事情もあるのだろう。
タカの親が厳しいのは本人から聞いた事があるが、踏み込んで事情まで聞いた事がないオレとアスカ。
だからと言いてタカとの距離感を感じた事はない。それくらいに、タカは1人の人間として良いやつなのだ。
アスカもそう思っているから家の事情に深入りはしない。
「じゃあ、決定で!」
タカが照れ隠しのためなのか、少し大きめな声で言う。
「日程はグループラインで決めよ。
そろそろ塾に行かないとだしな」
ナオキはそう言うと、タカと一緒に教室を後にした。
「本当に仲良いよね、2人」
並んで歩いていく2人の後ろ姿を見ながらアスカは言った。
「確かに。ナオキが医者でタカが薬剤師ならオレらがいつ怪我しても安心だな」
オレは返す。
「確かに。俺たちも医療系目指す?」
アスカは笑いながら言った。
「そのためには取り敢えずすぐに自習始めないとな」オレも半分冗談で返し、勉強を始める事にした。
今日は体育もあったせいか、いつもより疲れた気がした。
帰宅すると、リビングから良い香りがしている事にすぐ気づいた。今日の夕飯はカレーの様だ。
両親はすでに晩酌を始めていた。
「おかえり。冷めないうちに食べちゃいな」
母はそう言うと、キッチの方に行きオレの分を用意し始めた。
制服から部屋着に着替え、テーブルに着く。
両親は仲良さそうに仕事の愚痴などを話している。
2人の会話がひと段落したタイミングでオレは切り出した。
「今度、学校休んで友達と大学見学行こうと思う」
「おー良いじゃないか!」
「勉強の息抜きに良いんじゃない」
父も母も反対せず、すんなりと認めてくれた。
ウチの放任主義はこういう時に助かるのでありがたい。
父はよく言う
「勉強が大変なら無理に進学せず、働いてもいいんだぞ。けどもし頑張るなら予備校代は出すから遠慮するな」と。
父に素直に話すのはどこか恥ずかしい部分があり、オレはいつも「ありがとう」とだけ返すのだが、この環境は恵めれてるのかもしれないと思う。
両親や自分の環境に感謝しつつその日は終わりを迎えた。
「くそっ、、、くそっ、、」
オレは悔しくて泣いていた。
このままじゃ医学部に行けない。そんな思いで心が支配され、悔しさと自分の学力に低さに涙が止まらない。
机の上には医学部対策の数学の問題が広げられている。
スマホのアラームで目が覚めると同時に、また悪夢を見た事を自覚する。
オレの心拍数は明らかに高く、手汗をかいていた。
その理由は夢の中で泣いていたからではなく、あの部屋に見覚えがあったからだ。
そう。。最初に見た夢だ。
見知らぬ男に暴力を振るわれた場所。
そして今回は机に医学部対策の参考書があり、それから推察するに受験勉強を親に強要されている人間の目線をオレは見ていた事になる。
なぜかオレはナオキの事を連想してしまった。
しかし、共通点は医学部志望というだけだ。
それにナオキの学力は既に医学レベルに達している。
「起きてるー?」
部屋の外からの母の声で現実に戻されたオレは、一旦考えるのを辞めて部屋を後にした。
小刻みな更新ですみません




