変化
「お待たせー」
オレが到着した時にはすでに3人とも集合していた。
平日の昼間から私服でみんなと会う事に少し違和感を感じるが、大学生になったらこれが普通になるのだろう。
「案内は俺に任せろ!」
今回の企画の立案者でもあるナオキはスマホの地図アプリで大学の場所を再確認している。
「地図なくても大学っぽい人の流れについていけばつきそうじゃない?」
タカが周りを見渡しながら言う。
「その方が面白そうじゃない?時間もあるんだし、迷子になりそうなら地図見れば大丈夫でしょ!」
アスカもタカの意見に賛成のようだ。
「開拓しながら行こう」
オレもその意見に賛成した。
ナオキも納得したようで4人は歩き始めた。
駅を出ると大学のある方向はすぐに分かった。
大学を経由するバスが出ていたり、多くの若い人達が同じ方向に歩いているのがすぐに分かるほどだった。
「この流れ絶対にそうだよな?」
聞くまでもないレベルだが、一応オレはみんなに確認を求める。
「だと思いたい。」
ナオキがそう言うと、タカとアスカも頷いた。
大学の外観や敷地内の様子などはネットの画像で見た事あったが、最寄り駅の様子などを実際に目の当たりにしたのは初めてで、自分達が急に周りから浮いている気がして来た。
年齢的にはそんなに差がないのにみんな大人っぽく見えてしまう。
みんなオレと同じ事を考えているからなのか歩き出そうとしない。
「行こうぜ!」
そんな空気感を打ち破る様にオレが声をかける。
「だな!これなら迷子になる心配はなさそうだ」
タカはオレ達の先頭を歩き始めた。
キャンパスまでは徒歩15分位だった。
駅前に小さい商店街があり、それを抜けるとキャンパスの建物が見えてくるので分かり安かった。
商店街には学生向けの安い飲食店も多く、すでに学生で賑わっていた。
そんな様子を見ていると大学生って楽しそうだと漠然と思った。
オレ達4人はキャンパスに着くまでの間、
どの店が美味しそう。可愛い人いた。
大学生絶対楽しいなどの話題で盛り上がった。
多分周りから見たら高校生なのが丸わかりなのかもしれないが、そんな事どうでもいいと思う位テンションが上がっていた。
そんなこんなで歩いていると、運良く正門に到着した。
「広すぎだろ、、。どんな順序で回る?」
タカは正門を入ってすぐ脇にあった案内板を見ていた。
「兄貴が言うには、学食食べたいなら早い時間に行かないとかなり混むって言ってたな」
ナオキのありがたいアドバイスとりあえず従う事にした。
帝東大学の大まかな作りは
敷地の中央に7階建ての近代的なガラス張りの建物があり、その中に大きな講義室が何個もあり売店などもある。
その建物を取り囲むように食堂や図書館がある。
敷地の右端に理系の学部がメインで使う研究棟がある。
左端には医学部や薬学部がメインで使う建物があり、敷地は別になるのだがその隣には大きな大学附属病院が併設されている。
周りの人達は、何の迷いもなく歩いているがオレ達にとっては迷路の様に思えた。
「ようやく見つけたぞ、、。」
先頭を歩いていたタカが言った。
中に入ると高校の食堂とはレベルが違う作りでみんな驚いた。
大きなガラスの窓が室内に太陽の光をしっかりと取り込み明るく、綺麗に規則正しく並べられたテーブル達。
食堂というよりカフェといった方がしっくりくると思った。
ナオキのお兄さんのアドバイス通り、お昼前の食堂は人が少なく静かで過ごしやすいと感じるほどだ。
「メニューの数多くね?」
券売機を見たオレは驚いた。
「すご!しかも安いな。何食べるか迷うな」
アスカに続く様にみんな券売機と睨めっこを始めた。
結果、みんなジャンルが被らない様に一品を選びシェアする事にした。
受け取り口で、受け取り窓際の1番端のテーブルに座り食べ始めた。
「この後、どういう順序で回る?」
カレーを食べつつタカが言う。
「医療系の所はどこまで入れるか分からないし、最後でいいよ。」
そう言い、ナオキは自分の焼き肉定食を食べている。
「1番近い、中央棟見てから理系の方に行って最後に医療系の方にけばいいんじゃない?」
オレは自分の味噌ラーメンを食べている。
「ユウの意見に賛成」
賛成してくれたアスカは麻婆豆腐定食を食べている。
この後の流れも決まったあたりで、急に食堂に人が増えて来た。
さっきまで静かだった食堂は一気に人で溢れかえり始めたのでオレ達は逃げる様に食堂を後にした。
その後のキャンパス見学は順調だった。
自分たちのペースで周り、どんな雰囲気なのかを知る事ができた。
キャンパス内には自然も多く歩いてるだけでも楽しかった。
最後の医学部棟を見て回る時、
ナオキとタカはさっきまでと違って少し緊張しつつ真剣な表情になっている気がした。
2人は来年、この大学じゃないにしてもこの環境にいる自分をリアルに想像しているんだろう。
そんな2人の後ろ姿をオレとアスカは黙って見守る。
「もっと中に入って見たいけどな、、。
兄貴が言うには医療系って人数少ないから部外者いるとすぐに分かるって言ってたしなー」
悔しそうなナオキ
「それは来年のお楽しみって事にしようぜ」
そう言うタカも本当は中を見たいのだろう。
「2人とも待たせてすまん!
最後に附属病院の外観だけ見てから帰りたい」
そう言ってナオキはオレとアスカの方に戻って来た。
オレとアスカもこの提案を快く受け入れ歩き始めた。
外観しか見れないがそれでも附属病院の規模や迫力には圧倒された。
敷地の外周を歩いていると
「やっぱり医者かっこいいな」
とタカがポツリと言った。
「一緒に医学部目指す?」
ナオキは決して茶化す事なく真剣に言っていた。
「いやー、今からはまにあわない。
かっこいいと思うからって自分がなりたいかは別だよ」
タカは作り笑いで誤魔化す。
「オレからしたら2人ともかっこいいよ。
さっきの後ろ姿とか真剣だったし」
オレはさっき思った事を伝えた。
「受かればの話な?
これで落ちたら笑ってくれ」
ナオキは謙遜している。
「2人を見て俺も勉強頑張ろうと思えたよ。
もちろん今回のキャンパスを実際に見ての影響もあるけどね」
アスカも続く。
みんなそれぞれで秘めた思いがあるのだろう。
なんにせよ、みんなの受験に対するモチベが上がったのは確実で充実した日になった。
「母さんがお小遣いくれたからさ、駅前にあった商店街で何か食べて帰ろうぜ!オレの奢りだ!」
そうしてオレ達は帰路に着いた。
次回から結構話が動き始めます




