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「なんでEランクのパーティーごときが、栄えある『明けの明星』のサポートに入ってるんだよ?」
マイセキ古戦場へと移動する飛空艇の中。
なぜか俺たちは、見たこともないパーティーから絡まれていた。より正確に言うと、そのパーティーの中の一人から、俺が絡まれていた。アリアン嬢には、この手のイビリの洗礼はまだ早い。
確かにこの飛空艇の中には俺たち以外にEランクのパーティーは乗っていない。今回のサポートで相対する敵が、最低でもCランクと定義されているため、パーティーもそれに準じたC、B、Aと言ったメンツが多い。全部で、二十程のパーティーが参加しているようだ。
俺に絡んできたのは、短く刈り上げた金髪に、緑の瞳を持つ青年だった。正義感の強そうな、きりっとした眉毛をしている。俺よりは年下で、アリアン嬢よりは年上といったところだろう。20歳くらいか?
「そんなこと言われても……『明けの明星』の皆さんに頼まれたから、としか言えないですね」
俺は肩をすくめてそう答えた。他にどう言えと?
俺達に絡んできたのは、Cランクパーティーの『奇跡の泉』という4人組のパーティーだった。男性二人、女性二人で構成されており、リーダーのトビアス・ベックが口角泡を飛ばしている。
ちなみに、俺に向かって偉そうにかたるこいつの能力は、こんな感じである。絡まれた瞬間に確認した。
トビアス・ベック【土属性】 レベル:23
攻撃:85(無双槍(入門) +22)
防御:77(土くれ竜の鎧 +24)
速度:28
精度:30
抵抗:35
運:19
【スキル1】愚かな鳥
敵一体に2回攻撃を行い、それぞれ25%の確率で少しの間、敵の抵抗を下げる。
【スキル2】灰と幻想の童話
ランダムに4回攻撃し、それぞれ25%の確率で少しの間、敵を混乱させる。
【スキル3】万物流転
味方全員のデバフを解除し、解除した数の分、バフをランダムに味方に付与する。
よくいるCランクのリーダー、といったステータスだった。レベルがちょっと低い気がするが、多分Dランクから上がりたてなのだろう。こちらを指さしながら、さらに大声で続ける。
「だから!自分たちの実力が見合ってないと思ったら、断れよ!何勘違いしてんだこの低能が!」
「まあそうは言っても、もうこうして向かっているわけですし……足を引っ張らないよう頑張ります」
「飛空艇から降りたら、そのままもう一度乗れよ!そんで送り返してもらえ!」
トビアスの言葉に、『奇跡の泉』の残りメンバーのうち、男女それぞれ1名ずつが笑った。男は190センチを超える大柄な体格で筋骨隆々。鍛え上げた二の腕と胸板が眩しい。日焼けした肌に、トビアスと同じく短く刈り込んだ髪。色は、黒に近い茶色だった。
女の方は、金髪が混じった赤毛だった。毛先が大きく外にはねている。青い神官服を纏い、目つきが嫌にきつい。印象に残るタイプの顔。
男、女と、それぞれ『鑑定屋』で確認する。
ジン・ローゼンバウム【土属性】 レベル:22
攻撃:83(夜泣鳥戦槌Ⅱ型 +25)
防御:76(三尾狐の鎧 +20)
速度:30
精度:31
抵抗:31
運:22
【スキル1】振り下ろし
敵一体に攻撃を行い、50%の確率でほんの少しの間、敵の攻撃力を下げる。
【スキル2】踏み鳴らされた道
敵全員に攻撃し、その後ほんの少しの間、自分を除く味方の攻撃力を上げる。
【スキル3】過つは人の性、許すは神の心
味方全員の体力を30%回復する。回復前に体力が100%の味方がいた場合、一人につき30%ずつ、自身の攻撃力が少しの間上昇する。
チコ・ラクサニ【火属性】 レベル:23
攻撃:66(黒甲蟲弓 +18)
防御:63(黒甲蟲外套 +18)
速度:31
精度:28
抵抗:25
運:18
【スキル1】連続撃ち
敵一体に2回攻撃を行い、それぞれ25%の確率でほんの少しの間、敵の速度を下げる。
【スキル2】手元狙い
敵一体に攻撃を行い、敵が行動準備中の場合、50%の確率で準備状態を解除する。解除した場合、次の行動の際の攻撃力が1.5倍となる。
【スキル3】鳴いて撃たれた雉
敵全員に攻撃し、30%の確率で、沈黙を付与する。
一人だけ笑わずにこちらをじっと眺めているのは、亜麻色の髪を長く伸ばし、緩やかにウェーブさせている大人の女性だった。大人と言っても、年はおそらく俺と同じくらいだろう。豊かな髪に片目が隠れている。もう片方の瞳とぽってりとした厚めの唇は、濡れているような艶を持っていた。
何かを探るような、不思議な視線だった。あまり見られたくないタイプの。
目を合わせないように、彼女のステータスを確認する。
ヴィクトリア・ノワール【金属性】 レベル:19
攻撃:53(狼牙短剣 +17)
防御:59(水蛙の胸当て +21)
速度:38
精度:35
抵抗:39
運:24
【スキル1】死出の旅路
敵一体に攻撃を行い、40%の確率で少しの間、出血状態にする。
【スキル2】約束された破滅
敵一体を少しの間混乱状態にし、少しの後、呪いをばらまく怨霊を憑りつかせる。呪いは、大きなダメージを与える。
【スキル3】幸福論
しばらくの間味方全体の速度を上昇させ、敵にバフ効果がかかっている場合はランダムで一つ取り除き、スキル再使用時間をほんの少し短縮する。
「『明けの明星』には、俺から伝えておいてやるよ!『黒いメンフクロウは、自分たちの力不足を認め、尻尾を巻いて逃げ出しました、ってな!」
「おいおい、そいつはあまりに可哀相だぜ。『お先にドロンしました』ってのはどうだ?」
「そいつはいい! ハハハハハ!」
俺にとって、『約束』は絶対不可侵のものだ。それを放棄して逃げる? 何を言ってるんだこいつらは。
そうは思ったが、素材とそれに伴う職人への依頼、今後の『明けの明星』との付き合いもある。今揉めても、いいことなど一つもないだろう。俺は愛想笑いを浮かべながら応える。
「はは、まあこの辺で勘弁してください。それでは、お互い頑張りましょう」
「待てよ。だからそれが許せねえって言ってんだろうが。お前らが自分たちで帰らねえっていうんなら、俺たちが無理やり返してやってもいいんだぜ?」
「ねえ、もうそうした方が早くない?こんなEランクの連中なんか、いなくてもいいでしょ?」
トビアスの笑えない冗談に、チコが相槌をうった。
いや、本当に笑えない冗談だよ。見てみ、ちょっと離れたところで心配そうに聞き耳を立てていたアリアン嬢が殺気だってるんだから。
「無理やり返すというと、我々が拒否した場合は、戦いになってしまいますね。サポート前に頭数を減らすのは良くないですよ。やめましょう」
「はあ?お前らなんかいてもいなくても関係ないから!ていうか頭数に入ってると思うこと自体が図々しいんだよ!」
「では、戦うということでいいですか?」
「いいに決まってんだろ!ていうか痛い目を見る前に、謝って帰った方がいいんじゃねえか?」
「ギルドではないので、魔導人形もないですが」
「だから何だよ?」
「死んでも恨みっこなし、ということで良いですね?」
怒るというより、呆れながら俺は笑った。ていうかこいつらのステータスで俺たちに勝てると思われているのが勘に障る。
売られた喧嘩なのは周りの連中が皆見てるしな。まあリザさんも大目に見てくれるだろう。見てくれるといいな。
戦闘になると踏んだのだろう。アリアン嬢が駆け寄ってくる。おう、すげえ目をしてやがる。あれは完全に一人二人殺る気のやつだぞ。シャレにならねえ。
すると、今までずっとこちらを見るだけだったヴィクトリアが、俺とトビアスの間に割り込んだ。
「ごめんなさいね。こっちも気が立っちゃって。別に喧嘩したいとかじゃないの。ふふっ、じゃあお互い頑張りましょう」
「は?おいヴィクトリア!何言ってるんだ、こいつらEランクのくせに」
「だったら格下相手に威張ったって仕方ないじゃない。それより、着いてからすぐ行動できるように、準備とかも必要よ。そっちから取り掛かりましょう」
「だからって」
「いいから。もう行きましょう」
呆気に取られている俺たちを尻目に、そういってヴィクトリアは『奇跡の泉』のメンバーをどこかへ連れて行った。振り返りざま、ごめんなさいね、とこちらに片手を上げて。
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