魔王領とルステーゼ王国の交易路の開拓②
俺はエステルがリリの勉強が終わるのをノンビリと待っていた。最近は大きな事件に巻き込まれる事も無く、平和な日常を過ごしている。
先日は、庭先にある桜が満開になった事から、木の下でお花見大会を行った。
料理や飲み物は、魔王領の物からルステーゼの物まで、色々な食材を取りそろえた。
メンバーも、この際だからと、テーブルトーク同好会のみならず、トトとリリはもちろん、この料理を準備してくれた女中衆、魔王や近衛騎士長のクシュラーデにティニエ、新竜王のガスト、ダークエルフの村のクシュラーダまで招待してのものだった。
メイドゴーレム達は初めての体験だったようで大はしゃぎしていた。見た目が14・5歳だから微笑ましい事この上なかった。
酒の入った席で議論になったのが、誰が一番強いかというものだった。すると、戦ってみれば解ると誰かが言い出した。
そこからは剣術大会の始まりだった。くじ引きで対戦相手を決めて戦っていった。最後に勝ち残ったのは、エクレアだった。
俺は初戦にティニエと当たってしまい、そこで体力を使い切ってしまった。2回戦目にブリットと対戦したがフルボッコにされた・・・。
魔王や新竜王は初めて俺達の戦いを目の当たりにしたせいか、唖然としていたのが印象的だった。一般人には目で追う事すら出来ないだろう。
クシュラーダやキュリーシアは俺達の戦い方は見ているのでそんなに驚いてはいなかったようだ。
そんな中でトトだけが目をキラキラさせていたのが印象的だった。
そんな他愛も無い事を思いだしていると、こちらの居間にバタバタと飛び込んでくる音が聞こえた。
こんなに慌ててくるのは誰だろうと振り向くと、ヘンリクとエクレアだった。
「皆さん!大変な事が起こりました!!」
ヘンリクは息を切らせながらエクレアの手を引いて駆け込んできた。
「なんだ?そんなに慌てて?」
今更余程の事が無い限り驚かんぞ?そんな心持ちでヘンリクに投げ返すと、
「エクレアに・・・、神の奇跡が宿りました!!」
「「「「・・・は?」」」」
俺、ブリット、エリック、エイナルは思わずポカーンとしてしまった・・・。
「ちょ・・・チョット待て、エクレアに神の奇跡が宿ったという根拠は何だ?」
「エクレア、さっきの奇跡を皆さんに・・・。」
「はい。」
エクレアは頷くと、俺の前に来て跪き神の印を結ぶ。すると、ほのかな光がエクレアの手のひらに収束していくのが解る。
これは確かに、サイズは違うものの、いつもヘンリクが使う奇跡と同じものだった。
「これは一体・・・、何故エクレアに神の奇跡が宿ったというのだ?」
俺は疑問をヘンリクに投げかける。
「私にも良く解らないのですが、何時ものように魔王領に建設している大地の神の神殿でお祈りを捧げていたら、エクレアが、光の神殿に行くようにと言う声が聞こえたと、言ってきたんです。それで、何かあるかも知れないと思い、エクレアを連れて光の神の神殿へ連れて行ったのですが、そこでエクレアが祈りを捧げると、ご覧の有様という訳でして・・・。」
う~ん・・・イマイチ良く解らん。
「エクレアよ、ヘンリクの話では良く解らん。何故光の神の神殿に行く事になったのだ?」
するとエクレアは、
「それが、いつものように、ヘンリク様と一緒に大地の神の神殿に行って、そこで最近日課としているお祈りをしていると、天と言えば良いのでしょうか?から声が聞こえたのです。『貴方が祈るべきはここでは無く光の神です』と・・・。」
「それで、光の神の神殿に行ったと?」
「はい。そこで祈りを捧げたら、私の頭に直接声が届きまして・・・」
メイドゴーレムでも、信じれば神の奇跡は降りると言う事か・・・?
「神の奇跡が宿ったと言う事か。」
「はい。・・・私はどうしたら良いのでしょうか?」
エクレアは、自分の身に起こった事にどうしたら良いのか解らない、と言ったようだった。
「良かったでは無いか。エクレアの祈りが神に届いたのだ。ヘンリクと一緒にこれからも精進すれば良いと思うが?」
メイドゴーレムとは言え個人として自覚を持って行動出来るのだ。これからはマスターに付き従うだけで無く、自分の意思を持って行動して欲しいと思う。
「明日からは、大地の神殿と光の神殿へ行って、お祈りをしていきましょう。」
ヘンリクも嬉しそうにそう言った。その表情にエクレアも嬉しそうに頷いたのだった。
「そうなると、アプリコットもエリックに教えて貰えば精霊魔法が使えるようになるのかも知れんな。」
俺は冗談のつもりでそう言った。するとアプリコットは、
「マスターの使う精霊語は何となく言葉は理解出来るかなぁ~。」
そんな事を言ってきた。それを聞いたエリックは驚きながらも、試しに初級の風の精霊を呼び出した。
「アプリコット、この精霊と契約出来そう?」
「ん~・・・やってみる。」
そう言って、精霊語を話し始めた。すると、アプリコットの手に風の精霊の御霊が収まった・・・。
「「うそ・・・本当に出来ちゃった・・・。」」
アプリコットとエリックの言葉がハモった。
その後もエリックは次々と精霊を呼び出し、アプリコットは次々と精霊の御霊を手にしていく。最終的には上級の精霊まで、この短い時間で契約してしまったのだ。
「今度は精霊にお願いをして力を行使する練習をしましょう」
エリックはそう言うとアプリコットを外に連れ出して練習に付き合っていた。
流石に精霊を呼び出して力を行使するのには勝手が違うようで、アプリコットも苦戦しているようだった。
しかし、精霊を呼び出す事は出来ている。後は精霊語をマスターすれば自在に行使する事は出来るようになるだろう。
「いやはや・・・冗談のつもりだったのだが、まさか精霊魔法が使えるようになるとはのう・・・。」
「その冗談が本当になっちゃうんだから凄いよね・・・。」
ブリットも唖然としているようだった。
「ワシ等は魔法は使えんからな・・・その代わり連係攻撃なんか編み出したらどうだ?」
「ヘヘンッ!私とモンブランは既に連携はバッチリだから問題ないんだよ♪」
「そうです!僕とマスターの連携は完璧です!」
ブリットは普段着姿のモンブランを、後ろからぎゅっと抱きしめて自慢して見せた。
「それは失礼したな。しかしそうなると、エステルとパンナコッタのコンビも魔法が使えるようになるのかも知れんな・・・。」
「どうなんだろうね?リリの勉強が終わってこっちに来たら話してみたら?」
ブリットはそう言う。しかし、エステルには他にも話さなければならない事がある。先ずはそっちが優先すべき事だろう。
その後に時間があれば、話してみても良いかもしれない。きっとエステルも興味を持つ話題なのだから。
それから少しすると、エステルがこっちの居間にやって来た。
「リリの勉強が終わったよ。で、さっきの話なんだけど、詳しく聞かせて貰える?」
「ああ、お疲れ様。実はキュリーシアから、魔法で魔王領とルステーゼ王国の交易を行う為のルートを、作る事が出来ないか相談されてな・・・。」
「うん。それはさっき聞いた。で、ゲートとか転移ポータルを使う方法だと、出来なくは無いけど、問題が色々とあるの。」
「どんな問題だ?」
「まず、転移ポータルだと、馬車1台分くらいしか転移出来ないという問題。ゲートの場合は、その都度、魔法を唱える必要があるという問題。」
「どっちも一長一短と言ったところか・・・。」
「まして、ゲートを使う場合は、常時入口と出口の両方に、魔法使いが常駐していないといけないだろうから、もの凄く効率が悪いと思うよ。」
う~ん・・・、ド○え○んの『どこでもドア』のようには、いかんという訳か・・・。




