魔王領とルステーゼ王国の交易路の開拓③
「魔法王国の技術を使って、何か便利な道具が作る事が出来れば良いのだが・・・。」
俺は率直な感想を言ってみる。すると、エステルは、
「それなら、入口と出口に、トンネルのような立て板を用意して、ゲートの魔法を刻印しておく。というのはどうかな?そうすると後は魔法の発動体とそれのエネルギーをどこから補給するかと言う事になるけど・・・。」
エステルはブツブツと自分の世界に入りだした・・・。こうなると俺達に入り込む余地は無いのだが・・・。
「発動体とエネルギーと言ったか?それは具体的にどんなものを言う?」
「・・・うん?発動体は、その人が通る事を認証して魔法を自動的に発動させる道具で、エネルギーは具体的に言えば、魔石のキューブみたいなもの。ただ、魔石のキューブだと、不足する度に交換しなきゃならないから、効率が悪いと思うの・・・。」
「なるほど、魔石のキューブのバッテリー版みたいなものか・・・。」
すると、久しぶりにチョコロールが食いついてきた。
「ば・・・『ばってりー』って何ですか!?」
おう・・・、このやり取りも久しぶりだな・・・。
俺も詳しくは無かったのだが、チョコロールに、バッテリーの事について、解る範囲で詳しく説明する事になった。
「と・・・と言う事は、不足した時に魔力を貯めて、必要な時に消費すると言う事ですね?」
この子は賢い。大雑把な説明だったにもかかわらず、正しく事の意味を理解してくれたようだ。
「チョコロールの言う事で間違ってない。」
「そ・・・そしたら、その『ばってりー』の開発は私に任せて貰えないでしょうか?」
チョコロールはフンスッ!と鼻息を荒くしながら、目を輝かせて俺に訴えかけてくる。
「出来るのか?」
「何となく先ほどの説明でイメージは固まっています。後は、どれほどの魔力を貯める必要があるか?という問題だけです。」
「魔力はどこから貯めるのだ?人から吸い出すなんて言うのはダメだぞ?」
「そ・・・そんな事はしません。魔力は地脈から吸い出す事が出来るかと思います。」
「「「「「「地脈?」」」」」」
皆の頭には?マークが点灯した。地脈から魔力を吸い出すとは、どういう事なのか?地中に魔力が流れているというのか?
「は・・・はい。地中を通る地脈には、微弱な魔力が流れています。それを吸い上げて、貯める事が出来れば、『ばってりー』は出来ると思います。」
すると、いつの間にかトトとの剣術の修行を終えていたティニエが、地脈について教えてくれた。
「地脈とは、地中を流れる力の源です。植物が育つ源でもあり、我々の活力の源にもなっているものです。我々には切っても切れない存在でしょう。」
「と言う事は、チョコロールは、その地脈から魔力を吸い出し、貯める装置を作ると言う事か?」
「そ・・・その通りです。これが可能になれば、馬車に使っている魔石のキューブの負担軽減にも繋がります・・・。」
そっちが本命だな・・・。そんな事を思っていると、
「バッテリーの目処が立てば、後は魔法の発動体の方だね・・・。これはどうしよう?」
エステルはもう一つの問題を皆に投げかけた。
「発動体とは言っても、どれほどの大きさのものになるのだ?それに何の為に使うのかがイマイチ、ピンとこん・・・。」
「ん~・・・ゲートの魔法も四六時中発動させて置く訳にも行かないでしょ?だからゲートの魔法は待機状態にしておいて、通過する時だけに限定して魔法を発動する必要があるけど、そのキーとなる魔道具が必要になってくると思うの。」
「要するに、通行許可証みたいなものか?」
「あっ!それいい!通行許可証!それを魔法の発動体にすれば、持っていない人は通過する事も出来ないし、安全に利用出来るかも!」
エステルは俺に「ナイスアイデア!」と言って、俺の背中をパシパシと叩いてきた。しかし、妖精族の小さな手では痛くも何ともない・・・。
ここまでのイメージが湧けば、このメンツであれば、この計画は何とかなるだろう。
そうなると、キュリーシアを含めて、その後の事も考えなければならないなあ・・・。
特に、商隊以外の人の往来は今現在冒険者に限定されている。これも転移ポータルに頼ったものだ。自力で往来する術は今現在存在しない。
そこで、先ほど出てきた、エリックの話にあった山脈の中腹からトンネルを建設する案だ。これもキュリーシアに話してみようと思った。
翌日は各自作業に入る事になった。エステルとパンナコッタ、チョコロールはカヌレ博士の研究所へ、俺は王城にいるキュリーシアに会いに向かった。事前に遠話の魔法バッジでアポは取ってあったのですぐに会う事が出来た。
出迎えたキュリーシアはそれはもう興奮していた・・・。
「早速交易路の目処を立てるなんて流石ヨーン様ですわ!!」
有無を言わさず、応接室で向かい合ったキュリーシアは、身を乗り出して興奮していた。
「いや待て!一応目処は立ったが、成功するとは言っていない!今、エステル達がカヌレ博士の研究所で、開発を始めたばかりだ。完成もいつになるかは、まだ解らん。」
俺は身を乗り出すキュリーシアを押しとどめて話をした。
「それでも、昨日までは何のイメージも湧かなかったものが、こう具体的になったような感じがするだけで、ワクワクが止まりません!」
「まあまあ、それよりもだ、もしこの計画が旨く行ったとして、その後の事はどう考えているのだ?」
「どうとは?」
「交易路が出来たとして、突然お互いの国の商品が行き交う事は無かろう。お互いの国に、専門の店を用意するとかしなければ、買って貰う事もママならんぞ?
それに魔王国が勝手に交易を始めるというのも問題だ。ルステーゼ王国と何らかの取り決めを行うのが筋だろう。」
「確かに・・・。交易路の事を考えるあまり、その先の事が疎かになっていました。」
「それと、今現在、交易路は魔法的な装置が必要だ。この先、人の行き来に用いるには不便だと思う。そこで、山脈の中腹にルステーゼ王国と魔王領を繋ぐトンネルを掘ってはどうかと思うのだ。」
キュリーシアはピンと来ないらしい・・・。その為地図を引っ張り出して説明する。
「今の魔王領とルステーゼ王国の間には山脈がそびえておる。その麓からトンネルを掘り進めるとえらく長いものになってしまう・・・。
そこでだ、標高1500m程の場所からルステーゼ王国に向かってトンネルを掘り進めれば、もっと短い距離のトンネルが出来る事になる。これが実現出来れば、人と物の交流は、もっと活発なものになるだろう。」
そこまで話をしたところで、キュリーシアも俺の言わんとする事が理解出来たのか、興奮が最高潮に達していた。
「素晴らしいですわ!是非このトンネルの建設を進めましょう!」
「それにはルステーゼ王国とやらねばならん事が山ほどあるぞ?キュリーシアにはその覚悟があるかの?」
「・・・もう、先日のように逃げ出す事はありません!この計画を何としても成功させて見せます!」
キュリーシアの目は決意に満ちていた。一国の王女として何かを成そうという決意だった。
「解った。ではワシはルステーゼ王国に話が出来る人物に当たってみるとしよう。キュリーシアは魔王殿にこの計各区の詳細をしっかり説明して納得して貰う事だな。」
「解りましたわ。父には私の方から、今回の計画の全容をお話しした上で、親善大使として、ルステーゼ王国の交渉をさせて貰えるよう、説得しておきます。」
俺はキュリーシアとの話を切り上げると、その足で冒険者ギルド魔王領支部へ向かった。
受付で、マーリンがこっちに来ていないか聞いてみたが、残念ながら来ていないようだった。
仕方が無いので、転移ポータルの使用許可を貰い、ルステーゼ王国の冒険者ギルド本部へ向かった。
ギルド本部に転移すると受付で、ギルドマスターのマーリンに取り次いで貰った。暫くすると奥の方からマーリンが顔を出した。
「アンタの方から顔を出すなんて珍しいね?面倒事が起こりそうな気配がプンプンするよ?」
「なんでわかった?」
俺は嫌みでも何でも無くさらりと言いのけて見せた。
「クッ・・・!嫌みで言ったつもりが本当に面倒事かい?」
「まあ、面倒事と言えば面倒事だし、ルステーゼ王国と魔王領の更なる発展と言えば発展になる話だ・・・。」
俺はもったいぶるようにそう言ったのだった。




