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ハレックの街の冒険者ギルドに行ってみる・・・

 昨夜はあのあと解散し、荷物の確認などをしてから就寝した。

 色々なことが一度にありすぎて気が疲れていたのだろう。

 気がついたら朝だった。

 朝食を取るため皆に声を掛け1階へ降りる。

 そこには昨夜声を掛けてくれたマスターがいた。


「ヨーン。今日は早いな。何か用事でもあるのか?」

「いや、早く休んだもんだから、その分早く目が覚めてしまったようだ。」


 当たり障りの無い受け答えをする。


「折角だし、朝食を食べたら街をブラつこうかと思ってな。」

「おう!朝食だな。支度するから席についてチョット待ってな。」


 席について朝食が席に並ぶまでの間、皆とも話し合う。


「この街の名前はハレックで合ってるな?で、依頼で向かった王都の名前はルステーゼ、で国の名前はルステーゼ王国。」


 俺はTRPGの情報を思い出しながら、皆に向かって話を始める。


 追加情報を言えば、ハレックの街から3日西へ向かうと王都ルステーゼがある。ちなみにハレックから南へ2日向かうとローランという港町だ。


 ここハレックの街は農業と酪農が盛んな街で北と東は山に囲まれている。


 ルステーゼ王国には春夏秋冬はあるようだが、極端に暑くなったり、寒くなったりしない。夏も気温が高いと言っても25度程度だ。冬も冷えると言っても15度を切ることは滅多に無い。


 ついでに言ってしまえば、1年が360日、1ヶ月30日で12ヶ月で1年だ。

 精霊の力で気候が影響を受けるため、山を越えた途端に極寒の地域になってしまったり、灼熱の地域になる場所もあるという。そんな国には行きたいとも思わない・・・


 設定では北の山の向こうが、そのどちらかだったはずだ。


 その気候のことも考慮してここを冒険のスタート地点に据えたんだから。それと、北と東の山の中腹には多くの遺跡が眠っている。


 この街に冒険者がいるのは、その遺跡で一攫千金を狙っているからだ。俺も次回のシナリオでは遺跡探検を予定していた。


 と、話題を振りつつも、俺なりに考えをまとめていると、


「うん。それで間違いないと思う。だけど、どう摺り合わせれば良いんだろう?」


 ヘンリクは不安混じりにそう言ってくる。


 そうなのだ。本当なら知っていて当たり前のことを、確認していかなければならない。記憶が飛んじゃったじゃ済まないだろう。


 その辺のことを確認しようと新米女神様を探したのだが、今日は朝から見当たらない。う~ん・・・常に同行してくれている訳では無いのか?


「取りあえず、冒険者ギルドへ行って確認するのが手っ取り早いんじゃない?」

「それが今取れる最善でしょうか・・・?」


「あと、あの大金どうするの?魔法鞄がパンパンで他に何も入らなくなっちゃってるよ!?」


「それも冒険者ギルドで預かってくれるんじゃ無いのか?冒険者カードに所持金の項目もあったぞ。あれって預かっている金額って事だと思うぞ。」


 冒険者カードを確認してみる。確かに書かれている。ステータス項目にばかり気が行ってて気が付かなかった・・・こういうとき冷静な先輩は頼りになる。


 そんな話をしている内にテーブルには白いパンにスープ、ベーコンエッグとサラダが並べられる。朝食にしては一般的なのだろうか?普段朝食抜き派だった俺には豪勢に見える。



 一同はその朝食を食べ終わると、早速冒険者ギルドへ足を運ぶ。


「あっ!おはようーございますぅ~!昨日はお疲れ様でしたぁ~。盗賊団のアジトを見つけたという連絡をもらって、他の冒険者を向かわせたら、一人残らず縛り上げられていたという報告を貰ったときはビックリしましたよ~」


 元気よく挨拶してくれるのは、冒険者ギルドの受付嬢さんだ。ちなみに頭に垂れ耳がついている。犬の亜人さんかな?盗賊団を逆襲撃したあとの顛末を教えてくれる。


「おはよう。実はその昨日の件じゃが、王都へ運ぶ品を一部奪われてしまったのでのう、奪い返さなければ為らんかったし、ついでじゃ、ついで。それより、盗賊団が集めてたモンもこっちで持っとるんだが、これはどうしたもんか相談に来たんだが・・・」


 少ししどろもどろとなりながら、話をする。


「結構ため込んでました?」

「まあ、それなりに?」


 素直に言って没収されるのも惜しいと思うが黙っている訳にも行かない。


「盗賊団のため込んだ物を冒険者がどうするかは自由ですから~、金貨などの現金や宝石類はこちらで預かりますよ?あと~、魔法の品なんかがあれば鑑定して買い取ります~。量があるんでしたら、奥の方で拡げます~?」


 受付嬢さんがあっけらかんとそう言った。

 よしっ!第一関門クリアー!皆へと振り向き小さなガッツポーズを取る。


「じゃ、じゃあそうして貰おうかの」


 そう言って、受付嬢さんに案内された応接室へ向かう。


「じゃあ~、鑑定の必要な魔法のアイテムや個人の物以外で、盗賊団から回収した物をこの絨毯の上に拡げちゃって下さい~。」


「ん?ここに全員まとめてで良いのか?」


 そこには四畳半程の絨毯と言うより風呂敷が広がっていた。


「ハイ~!あっ!ヨーンさん達は初めてなんですねぇ~!。この魔法の絨毯で合計の金額を割り出して、合計金額をパーティーに均等分配させて貰いますよ~。」


 何もかもが初めての経験だったから言われたとおりにする。拡げてみると結構なお宝が広がった。


 残念ながら魔法の品は出てこなかった。(俺には解っていたことだが・・・)


「わ~・・・結構ため込んでたんですねえ~・・・これを均等割しても暫く遊んでいられますよ~!」


 元々俺が用意したシナリオだったのだ。そうする理由もしっかりとある。


「装備を新調したかったし丁度良かった。」


「あ!それなら必要な分のお金はちゃんと分けておいて下さいね。ギルドと提携しているお店で購入する分には冒険者カードから直接差し引かれますけど、そうで無い所は普通に現金払いですからね~」


 そんな便利機能なの!?と驚きつつも解らないことだらけだ。


「武具店や魔法屋、道具屋は確か提携があったな?」


 ちょっとカマを掛けてみる。こっちは提携店と言われても、どこがそうなのか解らない。


「冒険者が買いに行くようなお店は大体そうですよ~?皆さんが利用してる「鹿の角亭」さんだってそうじゃ無いですかぁ~。ただ、提携してないお店もあるから気をつけて下さいね~。」


 あ、そう言うことか。やはりここはTRPGに都合が良いような世界なんだ・・・何となくそう感じた。


 こちらの世界の貨幣価値は、下から順に、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨だったはず。


 日本円換算で、たしか・・・

 鉄貨=100円、

 銅貨=1,000円、

 銀貨=1万円、

 金貨=10万円、

 白金貨=100万円だ。


 物価は日本とそんなに変わらなかったと思う。露店で買い物する場合は、銅貨で払って鉄貨でお釣りを貰うし、宿泊料は「鹿の角亭で」1泊で銅貨3枚だ。


 そんなことを考えながらも、各自必要な分の金貨、銀貨、銅貨を金袋に収め、それ以外は均等分配して貰った。


「これで、分配は完了しましたぁ~。各自冒険者カードで確認して下さいね~。あと~、何か必要なアイテムや武具がある場合は、値引きも出来るので提携店を利用して下さいね~。」


 しっかりとアピールされてしまった。っと、その場所も確認しておいた方が良いな。


 と思って受付嬢さんに確認しようとしたらエステルの方が先に質問していた。


「魔法屋さんはどこでしたっけ?」

「精霊術士のお店は?」

「・・・皆さん何度か行ってますよね~?」


 案の定受付嬢さんからの突っ込みをいただきました!

俺は慌てて、


「いや~すまんな。王都に初めて行ったからというもの、少し浮かれててな・・・魔法屋も精霊術士の店も頻繁に行くこともないだろう。だから、そのう~・・・」


 フォローしたくても旨くフォローできない・・・


「あ~・・・そう言うことですね~。解りますぅ~・・・王都って素敵ですよね。私も行ってみたいなぁ~。あっ!魔法屋と精霊術士のお店の地図は書いてあげますね~。もちろん提携店ですけどね~。」


 受付嬢さんは勝手に理解してくれた・・・


「私は神殿に行ってきますね。レベルも上がったので、何か新しい魔法の信託があるかもしれません。」


 ヘンリクはそう言って冒険者ギルドから出て行こうとする。

 俺は耳元で、


「場所は解るのか?」


 と訪ねると、


「道すがら人に尋ねながら探してみます。」


 と、回答してくる。確かに、神官衣も纏っているし、邪険にされることも無いだろう。


「ならばせっかく軍資金もまとまったから、今日は各自自由行動と言うことで良いか?」


 と、皆の意見をまとめる。特に異論は無い。日が暮れる前には「鹿の角亭」に戻ることを約束して解散となった。


 エステルは魔法屋へ、エリックは精霊術士屋へ、ヘンリクは神殿へ、エイナルは盗賊ギルドを探してくると言っていた。


 俺は防具一式を買い換える予定だ。レベル10まで使い込んだ防具は、実物を見てみると大分ガタがきていた。


 武具屋の場所は解っている。この冒険者ギルドのすぐ道向かいだ。ご都合だね。


「ヨーンは武具屋に行くんでしょ?」


 そう声を掛けてきたのはブリットだ。


「ああ、防具が大分傷んでいる。持ち込んで新調しようと思ってるんだが・・・」


「ぷっ!・・・あっ!ゴメンゴメン・・・まだ慣れなくて。そのうち慣れるから2、3日勘弁ね。私も実際の武器防具を見てみたいから一緒してもいい?」


 また笑われた・・・そんなにギャップあるのかなぁ・・・ちょっとヘコむわ・・・


「で、良さそうなのがあれば買ってみようかと思ってる。」


 彼女の装備は元々の敏捷性を生かした軽装鎧だ、レベルも上がってその早さはさらに増している。丈夫でもっと軽い防具があれば今まで出来なかった2連撃も可能になるかもしれない。彼女もそう思っているんだろう。


 武具屋に向かうその前に、もう一つ冒険者ギルドでやり残したことを思い出す。世界地図があるかどうかだ。俺の頭の中にも入っているが、すべて同じとは限らない。それと確かめたい。


 さっき預けたお金や宝石を金庫にしまって戻って来た受付嬢さんに訪ねてみる。


「冒険者ギルドで世界地図は扱っておらんか?」

「え~?さすがにそれは冒険者ギルドの力でも無理ですよ~」


 やっぱりか・・・何となくそうじゃ無いかと思っていたんだ。こういった中世ヨーロッパ風の異世界では、世界地図どころか、国の地図さえ出回らない。それを手にできるのは、国の中枢で軍務に携わる物のみだ。


 この辺はご多分に漏れず同様のようだ。異世界転生とはいえ、その内容はリアルTRPG。GMゲームマスターは居ない・・・


 そんなことを考えながら、冒険者ギルドをあとにする。

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