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転生した先はそのままTRPGの世界でした!?

やっと異世界転生しました・・・。


(・・・ワイワイ・ガヤガヤ・・・)


 賑やかな声がする・・・

 それに、旨そうな食べ物のにおいに、酒の香り?


 あっ!そう言えば、TRPG同好会の打ち上げをしてたんだった。

 いつの間に寝てしまったのか?

 それに変な夢を見ていたような気がする・・・


「ヨーン・・・ヨーンっ!」

 誰かにTRPGのキャラクター名で呼ばれる。


 それが俺に向けての掛け声だと言うことに気付くのに、しばしの時間を要した。

 目を開けあたりを見渡す。

 さっきまでいた居酒屋とは違う景色。

 見慣れない顔。

 ここはいったい・・・?

 窓から見える景色は薄暗い。どうやら夜のようだ。


「ドワーフが酒で酔いつぶれるたぁ、珍しいこともあったもんだな!」


 ドワーフ?俺のことか??

 ふと視線を落とすと太い腕に太い指。

 意識して動かすと自分の体の一部であることが解る。


 そして徐々に意識が覚醒していくとともに、つい先ほどまでのことを鮮明に思い出していく。


 そして慌てて他のメンバーに目をやると、テーブルを囲って俺以外にあと5人居た。


 みんなテーブルに突っ伏して寝こけている。

 それなのにその5人が誰なのか理解出来る。


 白い神官衣を纏っているのは長谷川裕樹ことヘンリク。


 耳の長いハイエルフは、田中健一郎ことエリック。


 狼顔で寝こけているのは、鈴木浩ことエイナル。


 頭から豹柄の耳をつけているのは、佐藤順ことブリット。


 小柄な体で背中から蝶の羽を生やしているのは、小鳥遊萌衣ことエステルだ。



 じゃあやはりあれは夢じゃ無かったのか?

 俺たちは異世界で本物の冒険者になったって言うことなのか!?


 俺は慌てて右隣で突っ伏していた後輩の田中の肩を揺する。


「おい!おいっ!起きろ!」

「う~ん・・・」


 テーブルに突っ伏して、よだれを垂らすイケメン顔のハイエルフ・・・様にならない。


 って!そんな感想はどうでも良い!皆を起こして現状の確認をしないと!


「みんな起きろっ!寝てる場合じゃ無いぞ!」


 なかなか起きなかったメンバーも徐々に目を覚ましていく。


「ん~・・・あれ?居酒屋が変わってる?」


 次に目を覚ました長谷川君は寝ぼけているのか、目をごしごしこすりながら辺りを見渡している。


「そうじゃ無い!ここは冒険者ギルドの居酒屋だ・・・たぶん・・・」


 そう言った自分も自信は持てずトーンダウンしていく。何せ初めて見る場所なんだから。


 長谷川君も事の重大さに気づいたのか、両サイドのメンバーの肩を揺すって起こす。


 全員が目を覚ましたのはそれからもう少し経ってからのことだった。


「おう!お前ら、今回の依頼はそんなに大変だったのか?依頼通りならお前らのレベルで、そこまで疲れるような内容じゃ無かったはずだぞ・・・」


 マスターらしき人物がそう声を掛ける。


 しかし、こちらとしても初めて異世界に来たばかりで、しかも今いる場所もよくわからない。依頼をこなしたと言われたが、それがどんな依頼内容だったのか、皆目見当も付かない。


 パーティーの皆も如何したものかと思案に暮れる。


「今日受けた依頼とは、皆さんが遊戯で遊ばれた依頼と同一のものですよ。」


 突然俺の耳元で声が囁かれる。驚きつつも声のした方へ向いてみると、そこには小さな妖精が俺の顔の前で舞っていた。


「え!?ひょっとして新米女神様?」


 周りに聞こえないように小さな声で確認してみる。


「はい。この姿でこの世界へ顕現させてもらいました。女神としての力は殆どありませんが。」


 驚いた。物に宿るとばかり思っていたから、まさかフェアリーになって顕現するとは思いもしなかった。


 そこには、6cmサイズの妖精が飛んでいたのだから驚くのも無理は無い。パーティーの皆も驚いている。


 しかし、マスターは気付いていないようだ。


「ご安心下さい。私が見えるのは皆さんだけです。」


 なるほど、だから人の大勢いるこんな場所に姿を現したのか。

 いや、それよりも直近でプレイしたシナリオの内容って何だったか?


 確か・・・、冒険者ギルドからの依頼で、王都へ向かう荷馬車の隊列の護衛任務だったはず。


 行きの道中で山賊に襲われて撃退したものの、積み荷の一部を奪われたから取り戻す為に山賊のアジトを逆に襲撃したような・・・そのアジトで何かあった気がしたが・・・


 ん~~思い出せない・・・

 ただ、その後は何事も無く王都で荷を下ろして、真っ直ぐ戻って来たはずだ。


「って事は、今回の依頼は王都へ行く荷馬車の護衛だったって事ですか?」

「ですね。それで合っているはずです。」


 フェアリー姿の新米女神様が答えてくれる。


 となると、マスターに心配掛けるのも悪いし、気が抜けた。とでも言っておこうか。とにかく現状把握が必要だ。早く部屋に戻って今後のことを皆と話し合わないといけない。


「マスター、すまんな。無事に依頼を達成してワシも少々気が抜けてたようだ。今日は早めに部屋で休むとしよう。」


「プッ!クスクス・・・」


 ん?何か周りから生暖かい笑い声が聞こえるけど、俺なんか変なこと言ったか?


 俺の記憶に間違いが無ければ、ここは冒険者ギルドの隣にある「鹿の角亭」のはずだ。食堂兼宿屋になっていて、男女に分かれて部屋を月単位で取っていたはず。


 最初の頃は月単位で払うことは出来なかったが、今ではそれも可能になるくらいには稼ぎも安定してきていると言うことだ。


早速パーティーにも指示をして女性部屋より2回りは広い、男部屋の方に6人が集まって話し合いを始める。


「さて、何から相談しようかの・・・」


「プッ!ヨーン、さっきからドワーフになりきってる。「ワシ」とか「かの」なんてつけちゃって!下で会話を聞いてたとき、笑い堪えるのに腹筋よじれるかと思った!」


「え?そんな喋り方してたかの?全然自覚しとらんのだが?」

「無自覚で喋れちゃうの?」


 さっきから豹耳のブリットがケタケタと笑っている。

 よく見ると他の皆も声には出さないけど同様のようだ。


「あ、それは私のつけた付与の効果ですね。」


 と、新米女神様がフォローする。


「こちらの世界の言葉はあちらと違いますから。会話が出来ないと困るので皆さんにも付与してありますよ。」


「あ~それで・・・なんで日本語が通じるのかと疑問だったんですよ。」


 ヘンリクは納得がいったとばかり、手をぽんと叩く。


「まあ、このままだと話が進まん。この喋りは慣れるまで我慢してくれ。でだ、今ワシ等の置かれている状況をどう思う?テーブルトークの世界で拠点にしていた「鹿の角亭」に、部屋が残っておる。そしてマスターもこちらを認識しておる。予想の範囲が狭すぎるが、そのままテーブルトークの世界に来てしまったようにしか思えんのだがのう・・・」

 

 俺の率直な感想を皆に尋ねてみた。


「ん~・・・すぐに答えを求めても仕方が無いのでは?ひとまず落ち着ける場所があるだけでも一安心ですし、時間を掛けて見極めても遅くは無いんじゃ無いでしょうか?」


 エステルは焦った様子も無く落ち着いている。


「あっ、レベルやステータスの確認って如何すれば良いんだろう?」

「それはさっき確認した。冒険者カードにすべて載っていた。」


 エリックの疑問にエイナルが答える。

 これは俺も心配していたことだったが、各自出来る範囲で調べていたようだ。

 

 俺も自信の冒険者カードを確認してみる。そこには見慣れぬ文字が記載されていたが、何と書いてあるか読むことは出来る。目で見て理解出来なくても頭が勝手に理解する感じだ。確かに直近までプレイしていたキャラクターのステータスがそのまま記載されている。


 モンスターを倒したり、依頼を達成したときに入る経験値は自動的に加算されるのだろうか?


 これは、要検証だな・・・


 ただ見慣れぬ項目もいくつか見受けられた。これはまた落ち着いてからでも確認してみよう。


 そうそう、俺が着用していたスケールメイルだが、初めて脱着したにもかかわらずスムーズに行うことが出来た。異世界でも困らないように、これも新米女神様の付与の効果なのかな?


 こうして皆の姿も確認してみると、キャラクターシートに小鳥遊さん(今はエステルか?)が描いてくれたイラストの姿がそのままの姿になっているのに感心する。当然、立体的にはなっているが、イラストに覚えがあれば一目で誰がどのキャラクターかわかる。

 

 不思議な感じだ。俺のからだがドワーフになったというのもまだ実感が沸かない。


「テーブルトークの時には街を散策ってしてなかったし、明日は実際に皆で散策してみない?」


 ブリットが提案してくる。


 確かに、ゲームの中にはそこまで詳細なマップは無かった。どこにどんな店があるのか、どのくらいの賑わいか?なんて実際見てみなければ解らない。


「わ~!それ良いですね!魔法屋さんがあれば欲しい本もあるし、どんなお店があるか楽しみです♪」


 エステルが同調する。


「そうだの。皆もどうだろう?まずはゲームでも当面の間拠点にする予定だったこの街を探索してみるのもいいだろう?」


「あっ!買い物って聞いて思い出した!今回の依頼で盗賊団のアジトを襲撃した時、あいつらが溜め込んでたお宝を持ち帰らなかった?」


 俺が街の探索に同調していると、ブリットが思い出したように確認してくる。

 

 そうだ!何か忘れていると思ったらそれだ!元々、レベルが10に為る記念にボーナスとして用意してあったお宝だったはず。持ち帰ったはずのお宝はどこに行ったんだ!?


「それなら皆さんのアイテムバックに収納されているのでは?」


 フェアリー姿の新米女神様がそう指摘する。


 そんな少ない量では無かったはずだったけどなあ・・・と思いつつも、アイテムバックを確認してみる。そこには、バックのサイズに見合わない量の金貨や財宝が収まっていた。


「皆さんのアイテムバックは異空間収納になっているので、無限とは言いませんが見た目以上に入るようになっていますよ。」


 おっと!新米女神様の付与いただきました?と思ったらどうやら違うらしい。これは、魔法鞄と言って冒険者になれば誰でも持っている鞄だというのだ。入る量も100kgまでと決まっていて、それ以上は入らない。寝袋や簡易食料その他予備装備品や捕獲したモンスターの毛皮やアイテムを収納するのに使われているとのこと。


 それ以上収納したい場合は、この冒険者ギルドで販売している上位互換(最大200kg)を手に入れる必要があるそうだ。


 この辺はやはり、ゲームと違う所だな・・・ゲームなら所持アイテムはキャラクターシートに書き込むだけだったし・・・


 これは早くこの異世界に慣れないといけないと実感する出来事だった。

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