どうやら死んでしまったようだ
このTRPGを始めて10回、ちょうど基本シナリオを消化しきった頃にはキャラクターのレベルも10に達していた。
俺の使うヨーンの攻撃は予想通り10回に1回当たる程度。
小鳥遊さんの使うエステルの魔法は相変わらず、ここぞと言うときに苛烈を極める。
佐藤さんの使うブリットはまだ2連劇のお披露目は出来ていない。
鈴木先輩のエイナルの狼化はまだ当分先だったはず。
後輩の田中君が使うエリックも大分、精霊使いとして様になってきた。
同僚の長谷川君の使うヘンリクは、俺の当たらない攻撃に見かねて前衛サポートに入ることになった。
そんな記念すべき10回目のプレイを終えて、反省会と称したチョットした飲み会をするべく、自宅近くの居酒屋に皆で来ていたはずなんだが・・・
気がつくとそこは真っ白な光の空間。そうとしか言えない不思議な空間。
そこにTRPG同好会(会社非公認)メンバー全員がいる。
そして俺たちの目の前にはこちらに向けて、プラチナの髪を垂らし、それは見事な土下座をした少女らしき人物がいた。
なぜらしきかと言うと、おでこを地面にこするぐらいの体制でいるからだ。
顔が見えない。
「本当---に・・・申し訳ありませんっ・・・!」
「「「「「「・・・は?」」」」」」
俺たちは自身の身に何が起こっているのか全く理解出来ずにいる。
俺は代表してその少女?に質問してみる。
「ここはいったい?あなたは?とりあえず顔を上げて下さい。それに何を謝罪してるんですか?」
「私は皆さんのいる世界を司る女神の一柱です。」
と言って顔を上げた。やはり少女だ。一見11歳か12歳位の少女に見える。
とてもでは無いが女神様っぽくない。
「実は皆さんは本来合わなくても良かったはずの事故に巻き込まれて、お亡くなりになってしまっています。」
「「「「「「・・・えっ!!」」」」」」
あまりのことにショックを受けていたが、その自称女神様は話を続ける。
「本来なら皆さんがいた居酒屋の隣にあった空き家で起こるはずだった事故が、当方の手違いで皆さんを直撃してしまいました。で、今皆さんがいる場所は天界の間と言う所でして、救済処置を行うための手続きを行っているところなんです。」
ビックリである。
と言うことは何か?本来死ぬ予定の無かった俺たちが、自称女神様の凡ミスに巻き込まれて死んでしまったと言うこと?
店の親父さんや他にいたお客がここに居ないって事は、巻き込まれたのは俺たちだけってこと?
どれだけピンポイントなんだ!!
他のメンバーを見ても当然ぽかーんとしている。
「それで俺たちは生き返ることは出来るんですか?」
「そ・・・それは・・・・・」
と言って、自称女神様はツイッと目を逸らした。
「ひょっとしなくても出来ないと?」
「・・・ハイ。現場の損壊が激しく魂を戻しても、すぐこちらに戻ってきてしまうことになってしまいます。現場の状態を見てみますか?」
「ちょっ・・・それは見なくて良いです。だけど戻れないのは困る!っていうか、ここにいるメンバー全員会社の同僚で、こんなことに巻き込まれたとなったらって・・・ダメだ・・・俺も混乱してきた!」
「そこで皆さんには異世界へと転生という形で、救済させていただけないかと・・・」
大混乱だ!異世界転生!?会社はどうなる?みんなはそれに納得出来るのか!?
こんな時こそ冷静にならなければ!
ヒッヒッフー・・・ヒッヒッフ~・・・
少しは落ち着いたかな?
「・・・少し皆と相談させて下さい・・・」
「私も女神になって初仕事で、まさかこのような事態になるとは予想もしておりませんで・・・本当に申し訳ありません!!」
また頭を下げられた。ゴチンッ!って聞こえたぞ・・・
「・・・みんな話は聞いてた?」
「ああ・・・言ってることは、おおむね理解した・・・」
鈴木先輩は冷静に・・・
「これって、よくネタになってる異世界転生もの?」
佐藤さんは何かを期待するように・・・
「転生するにしても赤ちゃんからやり直しなのかなぁ?」
小鳥遊さんはその先を見据えて・・・
「記憶はそのまま引き継げるのでは?」
長谷川君は周りの意見をまとめつつ・・・
「いや~まさか自分がその当事者になるとは思いもしませんでしたよ!」
後輩の田中はアッケラカンと・・・
「・・・おい、みんな意外と冷静だな!・・・現世で思い残したこととか無いのか!?聖地めぐりとかコスプレイベントとか??」
「「「「「いや、別に・・・」」」」」
全員さらっと流しやがった!!
「だって、こんなシチュエーション滅多に無いわよ!?あ!だけど、どんな転生になるのかその辺はっきりしてもらわないと!」
う~ん・・・佐藤さんは、どんなことがあっても前向きだなぁ・・・
俺は女神様の方へと向き直し、皆と相談したことを話し始める。
「今、皆と話しはしてみましたが、転生については概ね了解です。ただ、どんな状態で転生させられるのか知りたいです。」
「なにぶん新米女神なもので皆さんへ十分な恩恵を付与することは出来ませんが、私に出来る最大限の付与はさせていただきます。」
と新米女神様は低姿勢で対応する。
「付与とは言いますが、その前にどんな所に転生することになるんですか?」
「転生先については候補は色々とありますが、例えば皆さんが亡くなる直前に遊戯されていた世界に類似した世界へ転生することも可能です。」
「・・・それって、いきなり最強魔法が使えるとか、最強の武器や防具を持って転生って出来るんですか?」
新米女神様にそっと近づき耳元で尋ねてみる。
「いえ、私はなにぶん新人なもので、そこまでの恩恵を皆さんに付与することは出来ません。」
Oh・・・その回答に皆が残念がった。気持ちはわかる。
「私に出来ることと言えば、生前の遊戯に使われた種族やステータスを引き継いだ状態で転生させることぐらいでしょうか?」
「え?ってことは、俺はドワーフで転生ってこと?ん~・・・第二の人生アリっちゃアリか?みんなはどう?」
「私は問題ないけど、太田君、ヨーンで転生は良いけど攻撃当たらないじゃん?」
佐藤さんが痛い所を突いてくる!
「あっ!・・・女神様それって修正出来ませんか?」
「申し訳ありません・・・そこは自力で努力していただくしか・・・」
クッ残念・・・
そこにチョットしたアイデアの光が差し込む。
「あっ!先輩女神様にお願いするって言う手は無いんですか?」
「残念ながら先輩達は皆出払っておりまして・・・」
「「「「「「・・・あっ!これって・・・」」」」」」
メンバー全員が悟ってしまった・・・そしてこれ以上のことは言うまいと、目で合図を送り意見をまとめた。チョット鼻の奥がツンとした・・・
残念女神様かもしれないけど少しは応援してあげよう・・・
だけど、ん~・・・不安が残る。
そんな世界へ転生して冒険者として余生を無事に生き残れるのか?
その辺皆はどう考えているんだろう?
俺自身、TRPGではシナリオをいくつも作成してきた関係で、クリア出来ないような鬼畜なシナリオなんかもよく知っている。
そんな危険な冒険に万が一にも巻き込んでしまったらと思うと、一抹の不安がぬぐいきれない。
そこで俺は新人女神様にダメ元で一つ相談してみる。
「女神様は何を司っているんですか?」
「私は幸運を司っています。」
・・・で、この惨状?信じても良いものか??
だけど幸運を司る女神様なら、不運な事故に巻き込まれるとか回避出来るんじゃ無かろうか?
「女神様、異世界へ同行してもらうってこと、出来ませんか?」
そんなことを言うもんだから、新米女神様よりも先にメンバーがギョッとする。
「「「「「いやいや・・・それはさすがに無理なお願いですよ(でしょ)!」」」」」
全員に否定された・・・
「デスヨネ~・・・」
やっぱりこれは無茶な要求だったか・・・
すると新米女神様は、
「私自身が同行することは出来ませんが、私の神気をまとわせた分身みたいなものを同行させることは出来るかもしれません。」
と、回答した。
「今なら先輩も居ませんしね♪」
((((((・・・あざとい・・・))))))
これは皆の嘘偽りの無い感想だ。




