第6話能力と重力
「勇気悪いが浮いた状態で聞いてくれよ、重力ってなんだと思う?」
勇気は空中に浮いて逆さまになりながらアダムからの問いかけを考えている。
「えっと、星の中心に向かってかかる力の事じゃないんですか?」
「大体はあってるな、ちょっと待てよ」
そういうとアダムはこめかみを指先で叩き始めた。
「わかった、わかった、勇気の言ったことで大体合ってるな、重力とは万有引力とも言われることがあり、地球の場合では地球の引っ張る力と地球が回る事によって出来る遠心力を足したものらしい」
「らしいってなんか人事みたいな言い方ですね」
「重力関係の話は難しいからな、ちなみに月の重力は地球の何倍か知ってるか?」
「当たり前じゃないですか! 月の重力は地球の6分の1番ですよ」
「そう、6倍だ! それにしてもこうしてお前の体に変化が現れるまで話そうとしていたわけだが全く変化が現れないな」
アダムは壁に埋め込まれている電子時計に目をやりながらそう言った。
「そりゃそうじゃないんですか? 地球とどんどん離れているし、もうΩも無いでしょ」
「お前知らされてなかったのか?!」
アダムは驚いた様子で勇気に声を掛ける。
「知らされてないって何をですか?」
勇気は上下が逆になり、頭に血が上り、ほんのり顔が赤みがかったままそう答えた。
「まだ研究中の事なんだが、俺は断言する。 新元素Ωは地球に元々あったものでは無く、月から飛来してきたものだと考えている」
「え、じゃあ未知の物質って事ですか?」
「そうだ、全く得体が知れない物質を地球では加工して、新しい技術を獲得してきた」
「それって相当危ないんじゃ」
「当たり前だろ! この宇宙船はΩの実態の解明にも重要な役割がある」
「すみません、大事な話の最中に悪いんですけど、気持ち悪すぎて下ろしてください」
「ああ、ごめんごめん、夏! 下ろしてやってくれ」
「うぃーー」
夏はだるそうな返事をすると手にあるゲームコントロラーの様な物のボタンを押した。
…………勇気の体は一向に船内に着かず空を漂っている。
「夏ふざけていないで早く下ろしてやってくれ」
「いや、やってるよ」
夏はもう一度ボタンを押す。
…………体は下がらない。
夏は一瞬機械の故障を疑ったが、毎日朝のメンテナンスは欠かしていないし。 私に限ってそんなミスはしないと思った。
「ちょっとアダムは離れてて、こうなったら逆に重力をかけるから」
夏は違うボタンを押した。
そうすると勇気の体は徐々に下がっていき、自分の席に戻った。
「本当びっくりしましたよ! このままずっと無重力生活かと思いましたよ」
「悪かったな、機械の故障なんだろうか、それとも…………まあ、今日は午後からまた、これからの事について説明があるからそれまでは部屋で休んでなよ、Ωの作用箇所も段々分かってくると思うから」
「手間かけさせないでよね」
夏はアダムの言葉に被せるようにそういうと、重力をかけるボタンをもう一度押した。
「分かったぞ、夏! 待て!」
アダムがそう言ったが時はすでに遅かったようだ。 勇気の体は押さえつけられたバネのように跳ね、部屋の天井に当たり、スーパーボールのように部屋中を飛び回った。
「分かったぞ! 君の能力は重力だ!」
アダムは両手を広げ叫んだ。




