第3話出発
ついに宇宙へと飛び出します!
「あー気持ち悪い、早すぎだよこの船」
勇気はうなだれた様子で呟いていた。
「そんなんじゃ宇宙空間に出る時の衝撃に耐えれないよ、勇気君頑張って! 辛かったら船内で休んでても良いよ!」
うなだれている勇気にりんごは励ましの言葉を言った後、席を立ちに船外へと出て行った。
「あーー良い眺め」
夏は勇気に嫌味たらしくそう言うと笑みを浮かべ足早に出て行った。
「あのぅ、大丈夫?」
冬美は勇気の肩に手を置き優しく声をかけた。
「うん、なんとかまだ頭がぐるぐる回ってるけど」
「どうする船内で横になって待ってても良いけど?」
勇気は少し口をつむって考えた後にこうきりだした。
「いや行くよ、基地は絶対に見たいし、隊長さんが来るのに俺だけ船内で待ってるわけにはいかないよ」
勇気はゆっくりと立ち上がり出口に向かって歩くがおぼつかない足取りだ。
それを見かねた冬美は勇気の腕を自分の肩に回して体を支えた。
「危ない、今にも倒れそうだったよ」
冬美は自分の取った行動は当然の事だと考えていたが恥ずかしさから勇気の方を見れなかった。
「あ、ありがとう冬美さん、助かったよ」
「ん、冬美で良い、呼び捨てでいい。 気分良くなるまで私の肩使って良いよ」
「じゃあお言葉に甘えさせて貰うよ」
2人は宇宙船からゆっくりと降りた。 基地は大きな洞窟の中にあり、地面は全て灰色のコンクリートで無機質な感じが漂っていた。 勇気が基地を眺めてボーッとしている所を、遮るように宇宙船は、音を立てて飛び立ち基地の奥に行ってしまった。
「2人共、リーダーが待ってるんで早くボードに乗り込んでください!」
基地のスタッフは、2人が降りるとすぐにホバーボードに誘導した。
ホバーボードは、地面からタイヤが浮いていて磁石の反発の要領で動く乗り物だ。
「あのさやっぱりリーダーって怖いの?」
勇気はビビリながら冬美に尋ねた。
「私も余り会った事はないけど明るくて気さくな人だった。 心配する必要は無いと思う」
「そっか、そう言われると少し会うのが楽しみになってきたよ! 夏みたいな人だったら最悪だなと思ってたけど良かった!」
「2人共! もうそろそろミーティングルームに着くので降りる準備をしでください」
スタッフに促され2人は、ホバーボードから降りて大きな扉の前に立った。
大きな蒸気と共に何重にもなった扉が左右に上下に開いていきその先には上半身裸のムッキムキで綺麗な青い目をした男が立っていた。
あまりの状況に勇気は言葉を失って立ち尽くしている。
「ほらね? 見るからに明るいって言うか熱そうでしょ?」
「確かにそうだね」
勇気は苦笑いで答えた。
「よく来た勇気! 俺がこの月面プロジェクトのリーダーの吉村アダムだ!」
名前の通りどこか神々しさを感じる男だ。
「よし! 早く出発しよう、出発! 俺もう滾り過ぎてさっきも基地の中走って来ちゃったよ!」
アダムは勢いよく勇気の肩を叩いた。
「勇気、宇宙は好きか?」
アダムはその曇りの無い目で勇気を見つめた。
「はい! 好きです!」
「なら俺について来い! 最高の旅にしてやるよ」
「よろしくお願いします」
勇気はなぜかこの人なら任せられるという安心感を抱いた。
「固いよ! もっとフレンドリーな感じで行こうぜ男同士! ほら拳だせ!」
「こうですか?」
勇気は拳を少し前に出した。
「そうだ!」
アダムは勢いよく拳と拳をぶつかり合わせ、勇気の拳が弾かれ鈍い音がする。
「痛いよ! アダムさん!」
アダムは勇気の痛がる姿を見て笑っている。
「これがこれからの2人の挨拶な! 拳を突き合わせて、少しぶつける。 わかったか、勇気?」
「分かりました!」
「良い返事だ! じゃあ細かい事は宇宙空間に入ってからと言う事でもう出発だ!」
勇気達が足を止めるとそこにはさっき奥に飛んでいった宇宙船が縦向きで止まっていた。
「乗り込むか、勇気準備は良いか?」
「いつでも大丈夫です!」
「冬美は聞くまでもないな」
「はい! このために準備してきました」
3人は宇宙船の下に着いているエレベーターに乗り込みさっき座ったコックピットでドアは開いた。
勇気は座席に座り深呼吸を2回する。 聞こえてくるのは発射準備に入るため、絶え間なくなるアラーム音。
座席につき船内で機械系の確認をしている船員達の声。
窓から見える走り回る、スタッフ達。
勇気はこの瞬間初めて、自分が月に行く自覚を持った。
ダイラント流体は肩まで満ちていき、少しひんやりとした感覚が火照る勇気の体を冷ました。
「さあ出発だ! 夢を叶える時だ!」
アダムがそう叫ぶとコックピットに映し出されてたのは、ハッチが開き雲一つない綺麗な青空だった。
「カウントダウンは要らない! もう準備は出来ている!」
アダムはそう叫び、赤いレバーを思い切り下げた。
宇宙船は出発した。




