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閑話 ヤヤとクロノス

本編とはなんの関係もない話。読み飛ばしても大丈夫!

ヤヤが後宮に上がる前のある日の一コマ。

その日はどんよりとした空模様で、ベルーラ邸の小さくも丁寧に手入れのされた中庭も心なしか精彩をかいた物悲しい雰囲気をしていた。


そんな中、ヤヤは一人中庭を見渡せるように備え付けられているベンチに腰掛け、ぼーっとしている。読書も好きだが、なにもせずにただ空や庭のその日にしか見れない色の変化を眺めるのも好きなのだ。


重い感じの曇り空ではあったが、雨は降りそうにないなと思っていると、わずかに雲の隙間ができ、光の筋がさぁーっと差し込む。その少しばかり幻想的な光景にヤヤの頬は自然と緩む。光の筋に照らされた中庭の一角が他の場所と対比され、まるで静と動、光と影を現す絵画のように見える。


しばらく見とれていると光の筋をまるで舞台のスポットライトのようにして、一人の人物が姿を現した。スポットライトがまるで似合わない全身黒色の顔面は真っ黒い包帯に包まれたクロノスである。


(に、似合わないわぁ…)


ちょっとした視界の暴力に眉を下げるヤヤであったが、クロノスがこちらを見ているのに気が付いてなんだろうと首をかしげた。

いつもならヤヤを脅かすような登場の仕方をするクロノスに何か違和感を感じる上に、あまりいい予感がしない。


(逃げた方がよさそうね…!)


頭の中でけたたましく警鐘がなるが、もちろん逃げられるとは思っていない。無駄だとわかっていても本能はどうしようもない。すくっと立ち上がりはするが、それより先にクロノスが動いた。


クロノスはヤヤを見つめながらほとんど外すことのない黒い包帯をおもろに外すと、その爛れて引き攣れた顔に満面の笑みを浮かべ、絶対にしないであろうスキップをしながらヤヤに向かって歩を進めだした。


(いやいやいやこわいこわいこわいいぃぃぃぃ!!!!)


普段はクロノスの素顔を見ても動じないヤヤではあるが、クロノスとは思えないとても嬉しそうな満面の(傍からみると、化け物が獲物を前によろこんでいるような)笑みに加え、スキップとはいえどもありえないほどの歩幅でヤヤの目の前に!


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ~っ!!!!」


これはホラー以外のなにものでもない。淑女とは言えない悲鳴をあげるヤヤはもはや半泣き状態。

そんなヤヤの叫び声もなんのその。クロノスはむしろ都合がよさそうに片手でガッとヤヤの顎を固定し両頬をわし掴むと、もう片方の手で持っていた小瓶の蓋をその手で器用に開けヤヤの大きく開いた口に素早く中身を流し込む。流し終えると小瓶を手放し、ヤヤの鼻をつまみ、顎を固定した手を動かしヤヤの口を塞ぎ、


「飲め」


と一言楽しそうにヤヤの耳元で囁いた。


クロノスの暴挙にヤヤは目を白黒させ、口の中に広がるおおよそ人が口にするべきではない苦みと臭みに加えしつこく粘ついた甘味に吐き気を催すがクロノスに鼻も口も押えられては吐き出すことはおろか息をすることさえままならない。


そんなヤヤにクロノスは容赦なく飲み込ませようと手を動かし、ヤヤの顔を上に向かせ、


「早く飲ぉ~めぇ♪」


と繰り返す。


息もできずに吐き出すこともできないヤヤの顔は恐怖で青くなり、目からは滂沱の涙が溢れるが、クロノスはおかまいなしだ。


(私の死因は……毒殺っ!?!?)


パニックになっているはずなのに妙に冷静さを発揮するヤヤであったが、体はなんとか生命を維持しようと口の中の得体のしれない地獄の物体Xを飲み下す。

それを見届けたクロノスはすっと鼻と口を押えていた手を放すと、両腕をヤヤの体にまわし呼吸ができるようになり咳き込みだしたヤヤを支え、


「吐いたらもう一回な」


と恐ろしいことを真顔でのたまった。


ゴホゴホと咳き込みながらこみあげてくる吐き気と口から漂う異臭、それととも恐怖しかないクロノスの発言。クロノスの狂気は尋常じゃないと遅すぎる悟りがヤヤの中に舞い降りるが、それとともに徐々にブラックアウトしていく視界。


「2、3日高熱やら低体温で苦しむが…、大丈夫だ。死にはしないからな」


クロノスはゆっくりと意識を手放すヤヤを、先ほどとは打って変わって優しく抱き留め、また満面の笑みを浮かべ満足そうに息をついた。


(違う…ぅっ!そうじゃない…!)


最後にヤヤが思ったのはそんなことだった。









ヤヤはその後、3日間高熱と低体温を繰り返し(本人曰く20回は死地への扉を開いたらしい)、2日間の休養を経て、すこぶる疲れにくく健康的な体になる。

が、クロノスのヤヤ健康管理計画に終わりはなく、ヤヤの試練はまだまだ続く。


後日、ヤヤはクロノスになぜあの日わざわざ包帯を外しスキップをしたのか問うと、自分でもびっくりするくらい出来のいい一押しの薬(ヤヤ専用健康維持剤)が出来たため、テンションがぶち上がった結果だたと答えた。ただ、ヤヤが寝込むのは気に入らないようで、あの薬は二度と使わないらしくほっと胸をなでおろしはしたが、薬の味の変更はなく今まで通りまずいものしか作らないことを宣言され、ヤヤの胃がキュッと悲鳴をあげるのだった。

本編じゃなくてすみません(;´Д`)再開宣言からなかなか本編を投稿出来ずにいるので、待ちくたびれた方々へお詫びのような…賄賂のようなものでした(´°ω°)チーン

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新、ありがとうございます! クロノス大好きなのでご褒美です 定期巡回で嬉しい再会
[良い点] 相変わらずヤヤちゃん妃が不憫で、愉悦部でした(笑) クロノスくん変わんないねぇ [一言] いつもはそこまでチェックしない「お気に入りユーザーの新着小説」に見覚えのあるタイトルがあったので、…
[一言] 更新ありがとうございます! ヤヤたちのお話の続きが、読める幸せを嚙み締めており、 作者様のペースで構いませんので、更新楽しみにしております。 段々寒くなっておりますのでご自愛くださいませ。
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