036話 Aランクへの道Ⅱ
「これは……酷いな」
目の前の景色は散々だ。
荒れ果てた家屋、道端に座り込んだ浮浪者、空気もどこか澱んでいる。
まるで捨てられた廃村のような状況だが、それでも以前は活気溢れる小さな村だったらしい。
「流行病がね……あっという間だったよ。俺も出稼ぎから帰ってきて驚いたんだけど、あれからまた酷くなってる」
とは依頼主元の青年から。
今回は村規模の依頼で俺達はジュノン近郊の小さな村へと足を運んでいる。
魔物襲撃からの村の護衛と村を脅かす流行病の調査、可能なら後処理までを受け持ったAランクの初仕事だ。
まずまずの依頼をこなしてBランクに上がった俺は、朝一番にAランクの依頼を受注して都を出発したわけだが……。
やはりAランクの依頼は違うなと改めて思う。責任というか、状況というか……ぶっちゃけ、かなり切羽詰まってるよね。
「『緊急依頼~』とか書いてあるんだもん。受けなきゃダメ! みたいな感じだし」
「ダメ、という訳でもないが……しかし、優先はすべきだろう。村の危機だからな」
俺に答えたのは横に居たモンさん。
他にもAランクの傭兵たちが3人ほど依頼を遂行している。Bランクは俺だけ。(気にしないようにする)
調べた所、Aランクになるためには別に一人で任務達成する必要はなかった。
点数というか、どれだけ功績を残したか……みたいなことが重視されて、さらに認定試験なるものがあるらしい。
というわけで、今回は初のパーティプレイ。……だったんだけどなぁ。
「ここまで来てなんですけど、こういうのは国の警備隊の仕事じゃないんですか?」
「警備隊はとっくに常駐している。それでも手に負えない……ということなのだろうな」
「それで俺達傭兵の出番、と。ややこしいことになってますね」
「まぁ闇風邪らしいからな。アキヒト君も常にマスクはしておいた方がいいぞ」
重い、重いよ。
お解かりだろうか、この空気。
皆馬車で渡されたマスクを着けていて、各々の傭兵たちの顔も引き締まっている。
俺の足元を歩く白猫も専用マスクを装着していて、通り過ぎる村人たちの表情も暗い。
ついでに言うと、うっすらと漂う彼らの魔力もどんよりした曇り空のように俺には視えていて
「闇風邪かぁ」
村の中を気だるく歩きながら、俺は馬車の中での説明を思い出していく。
闇風邪はともかく感染力が強い。(かなり強調されたので重要なことなんだろう)
病気というより呪いの類だそうだが、症状は風邪に似ていて頭痛、吐き気、発熱、咳……etc。
事の発端は知らないが、ほとんどの村人が闇風邪に罹ってしまい、大変だから助けて、ということだ。
闇風邪の元凶は主に溢れだす瘴気。負の魔力に当てられた人間が罹る病とかなんとか。
こういうのは戦場の跡や血生臭い現場などで見られる特殊例らしいが、問題はそれが何故こんな辺鄙な村で起きたのかってこと。
この近辺で凄まじい戦いがあったわけではないので、その辺の調査と処理に俺達が呼ばれたのだ。要は警備隊の支援だろう。
「……でもAランクの依頼ってことは……意味があるんでしょうね」
「ああ、そもそも闇風邪に罹るのは魔力への抵抗力が弱いからだ。我々ならある程度耐えられる。まあ、それでも安全とは言えないが……」
感染力が強い、とはそういうことか。
「着いたよ、これから中に入って探索に当たってもらう」
青年に続いていた歩調が止まる。
村の外れ、その洞窟がどうやら原因に繋がっているようだ。
視れば普通に中から黒い魔力が漏れ出している。青年、そこ危ないよ。(とりあえず払っておく)
「では行くか」
知らない傭兵の兄さんを筆頭に洞窟へと入っていく。
これからは打ち合わせ通りに5人で手分けして洞窟内を捜査。
中は真っ暗なので松明をこさえての探険だ。わくわくはしない。
・
・
・
「あっつー」
離れて分かる地上の幸せ。
入って数分、洞窟の中は蒸し風呂だった。
熱気が籠もって大変暑苦しいので、水筒の水をがぶ飲みする俺。
「あ、主、そこは天井が低くなってお「痛っ!?」……」
「て~……もっと早く言ってよ!」
「すまぬ」
今の今まで珍しく大人しくしていたディズ。
漸く喋ったかと思えば、また黙りを決め込んで。
こいつの真剣な姿は……その、悪いけど意外だな……。
「うわっ!?」
「どうした?」
「蝙蝠がいた!」
「…………」
あれ、無視!?
う~ん、ディズはここに来て本腰モードのようだ。
本当は俺も見習って緊張感を持つべきなのだろうが……。
「あ……ディズ」
「なんじゃ!?」
「水がなくなった」
「飲み過ぎじゃ!」
ディズが空気の水を集めて水筒に入れてくれた。
「申し訳ない」
「主、もう少し真面目にやれ」
「はい」
でもすごく暑いんだ。
暑くて暑くて、それどころではないんだよ。
そう言いたかったが、俺も良識ある人間だ。今はそんな状況ではないことは分かっているさ。
なので暑さ対策をしてから前を往くディズを追いかけていく。
そのまま少し歩いた所で鍾乳洞の恩恵に出会うことになった。
「ここから先は進めないか」
「ふむ、どうじゃろう。まだ先があるやもしれん」
目の前は地下水が溜まっていた。
垂れ下がった天井が水面近くまで達している。
先に行くには泳いで奥に行く道を探す必要があるようだ。
「丁度いい。このままいく」
「あっ!? いつの間に服……」
「行きます」
俺は躊躇うことなく天然のプールに飛び込んだ。おおー気持ちいいっ!(上半身だけ裸)
飛び込んだ先は真っ暗な水中だ。
強化した視界と感覚でギリギリ判別できる程度の暗闇……あ、道発見。
そのまま浮上して、拡がる視界に少し硬直。
ザバンと横から顔を出したディズもその光景に目を細くする。
「これが魔力の残滓か……相当な“闇”じゃな」
「ダイオキシンが発生しているのかと思ったぜ」
ダイオ……? とディズが不思議がったので、危険な黒煙のようだと補足。
水から上がって、松明替わりにディズは小さな炎を宙に灯した。
それで煙のような黒い瘴気はやはり奥から漏れだしてきていると分かって。
「極式ちゃん、お食事の時間ですよ」
煙が酷くて先へと進めないので、極式を引っ張り出して食べさせる。
「こいつ、やっぱり悪喰だったな」
便利だなと思う反面、美味しそうにくねりながら瘴気を平らげていく鞭を見て黙考。
「腹壊したりしないのかな?」
「この瘴気すら意に介さぬのじゃ。その鞭の方が危険という事じゃろう」
「お前、もう悪さは止めたんじゃなかったのか?」
そうだけど、と鞭が身震い。意味が分かってしまうのが自分でも怖い。
「さて、大分薄くなってきたし、そろそろ行けるか」
「気を緩めるな。何が起きても不思議ではないぞ?」
その前に気を引き締めないと。
なんて言ったら怒りそうなので、何も言わずに行進していく俺。
そのまま何事もなくその元凶へと辿り着いたのは、幸いだったのか、どうなのか。
「なんだここ?」
目の前は大きく開けた空間。
見たことも無い装置がずらりと並んでいて。
中央にはモクモクと瘴気を生み出す謎の物体が俺達を待ち構えていたのだった。
†
松明を掲げてひた歩く。
洞窟内は起伏も多く、探索には想像以上の労力を伴っていた。
それでも徐々に範囲を拡げ、途中何度か罠らしき物も発見して。
「やはり……何かがあるか」
もしくは誰か、だ。
これ程の瘴気は普通隠そうとするものだが、今回はその例にはない。
しかしこの洞窟内には誰も近づけないようにするための罠が仕掛けられていた。
これはつまり……。
「誘っているのか……?」
瘴気が強すぎて通れない道や無理やり崩された場所に、図らずも迂回を余儀なくされていた。
もし私の考えが正しいとするなら、敵(が居るとして)に決められた順路を歩かされていることになる。
先に到着していた警備隊の連中も、勿論洞窟内には入っているはず……彼等は無事に戻ってきたのだろうか。
「……それにしても、暑いな」
一旦思考を中断して、水分を補給する。
額に滲んだ汗を拭って、とりあえず魔法を発動。
自然魔法の結界で、体を包む膜が中の気温を一定に保ってくれるのだ。
うむ、涼しくなった。
最初から掛けていれば良かったな。
そう思い、思ったことでアキヒト君のことが気になった。
確か自然魔法は使えないと言っていたが……果たして彼は平気なのだろうか?
「否、ディズ殿がいるか……」
勝手に呟いて、洞窟内を歩いていく。
「む?」
不審な気配に目を向けると天井に一匹の蝙蝠がぶら下がっていた。
……私はそれを凝視する。
一匹というだけでもそうだが、それ以上にここに居ること自体すでに怪しい。
今、この洞窟内は不穏な瘴気で満ちている。それも奥に入れば入るほどに危険なものだ。
なので普通の動物……否、魔物であってもそうそうこの場所へたち入ることは難しいはずである。
(見張り……それとも……?)
炎で攻撃して蝙蝠を地面へと落とす。
たぶん一匹だけではないだろうが、不安項目は消しておきたい。
そして思った通り、丸焼きになった蝙蝠は次の瞬間、灰になって消え去ってしまった。
……使い魔だったのかもしれない。
いよいよ元凶に近づいてきたということだろう。
私は今まで以上に警戒しながら先へと進み、そして気付いた。
――ゴゴゴ。
鈍く振動する音。
だんだん此方へと近づいて来ていた。
――ゴゴゴゴゴ。
松明を地面に置いて剣を手に取る。
敵か、罠か、それとも別の何かか。
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
全神経を集中させた。
――ドオオオオオォン。
目の前の壁が崩れる。
ガラガラと音を立ててそれは顔を出した。
「……ドリル?」
「ん? 誰かいんのか?」
野太い声が薄暗い洞窟内に響き渡り……。
「ああ、君だったか」
「その声は姐さん?」
壁に穴を開けて現れたのは傭兵だ。
しっかりとした身体つきの、無精髭をこさえた野性的な顔。
身に付けた鎧は動きやすく、それでいて鎧の役割も十分果たせそうな高価な代物だ。
「ありゃ? 合流しちまったか」
最初に洞窟に入っていった男だった。
「君も相変わらずだな。ニーサン」
「……その名前で呼ばんで下せい」
私とは何度か面識があるAランクの傭兵で、一度手合わせしたことがある。
右手に付けたドリルを豪快に振って、事あるごとに壁や地面を穴だらけにするのだ。
私が相変わらずと言ったのもそのこと。あとニーサンと名前で呼ばれるのを嫌がっている。(何故かは敢えて言うまい)
「わざわざ穴を開ける必要があったのか?」
「いや、どうも行き止まりに当たっちまって。薄そうな壁を見つけたもんでさ」
性格もドリルのような男なのだ。
「ふっ、案外当たりかもしれんぞ」
「ほほう、そりゃあ良かった」
その眼は全てを承知している眼だ。
彼もAランクの傭兵なので、不可解な点には気付いているのだろう。
出会ったのも束の間、今度は二人で警戒しながら洞窟の奥へと歩を進めて。
「おおっと、これは……」
二人同時に足を止める。
「まずいな……」
――ォォォォォォオオオオ。
まるで地獄の底からの唸り声のような。
黒いドロドロの体、かろうじて人型を保っただけの。
怪物と呼んでも差し支えない巨大な魔物が、そこに起立していた。
▼
「う~ん」
用途不明の機械(?)が立ち並ぶ怪しい研究施設。
中央にあった瘴気を吐き出すリングは取り敢えずぶっ壊した。
今はマシになった空気の中で、ディズの灯した明かりを頼りに気になる所を物色中である。
俺が調べているのは5本のカプセル。
人間大の大きさで中には瘴気が充満している。
怪しさMAXのその物体が綺麗に横一列に並んでいた。
まあ、調べると言っても俺に分かることなんて少ないのだけれど。
探索もいいが、そんなことより早く地上に戻りたかった。
「ディズ、何かわかった?」
「うむ、おそらくここは放棄された後の様じゃな」
「そうか」
暑すぎてあまり興味が沸かない。
「じゃあ、ここはもう破壊していくか?」
「……否、もう少し……」
――プシューーーー!
「なっ!?」
何の音? と聞く余裕はなかった。
勢いよく地面から噴き出したのは黒い煙……瘴気だ。
丁度俺達の足元から上がったそれは、当然のように俺達を包み込む。
とりあえず息を止めたけど、効果があるかは分からない。ただ立ち尽くすしかなかった。
立ちどころに暗黒に染まった視界で考える。
極式に瘴気を食べさせるが、すぐには治まらないほどの暗闇だ。
「ディズ、無事か!?」
「うむ、主はっ!?」
「大丈夫だ!」
声は聞こえたが、あまり正確な位置はわからなかった。
体を包む黒い煙は滑っとしていて気持ち悪い。……蒸し暑いし。
少し経って瘴気は消えて(喰われて)いく。
見ると、ディズの周りだけ安全地帯のように丸い空白が……!(靄がない!)
「この指輪のおかげじゃな」
俺の視線を受けて、キラッと光る指輪を翳す。
ディズの首に掛けられたそれはかなりの高級品だ。
「呪印石だっけ。それって瘴気にも効果あるんだな」
「らしいの。まさか、これほどの物とは思わなんだ」
指輪については昨日、宿に帰ってから調べておいた。
色々やってみた所、お守りか何かだろうということで。
無論ただのお守りではなく、呪いで呪いを滅する、みたいな。(良く分からない)
加護はないけど、悪いのは払ってくれる。そんな感じの指輪だった。
「高かったもん、それぐらいの効果はあって欲しいね」
「これは使えそうじゃな」
成程。ディズは指輪に救われた。それなら……俺は?
「俺は何で無事だったんだ?」
「分からんが……たぶん鞭の影響ではないのか?」
お前が助けてくれたのか?(鞭を見て)
「違うとか言ってるんだけど」
「主、鞭の意思をくみ取れるのか?」
「うん」
「……ということは……純粋に主の抵抗力が瘴気に勝ったのかの?」
疑問形で言われても。
まさか後からじわじわ効いてくるとか? ……嫌だぁぁ!
「……いずれにせよ、先程のは罠じゃな」
「え?」
「監視されておったじゃろう。敵をおびき寄せるために放置していたが……どうやら此処とは違うようじゃ」
当然、意味が分からないので説明を要求する。
ディズの話では、あの蝙蝠は監視の役割を果てしていたらしい。(その場で言ってほしかった)
使い魔のようだったが、操っていた者は此処にはいないだろうとのこと。
何で別口と判断できたのかは知らないけど、それはほぼ間違いないようで。
――ドカアアアアァン。
今度は何? と二人一緒に振り向く。
俺達が来た方とは逆、その穴の奥から聞こえてきた。
「行くか?」
「うむ」
言ってから気付いたが、カプセルの中が空になっている。
さっきのはあの中身が噴出したのか……。
「あ」
「?」
「……いや、なんでもない」
ディズが振り向いたので首を振る。
そして暑苦しい洞窟を走っていくディズを追いかけながら、俺はあることを思い出していた。
★
「姐さん! 右!」
「わかっている!」
ズシャァァアアア、と通り過ぎていく腕をやり過ごす。
「ち、雷犬っ!」
「神風ドリル!」
雷と風が敵に降り注ぐ。
「グォォォオオオ」
一応効いているようだが、今までの戦いから察するに……。
「くそ、瘴気がっ」
一度止まった体は、溢れ出る瘴気と共に力を取り戻していった。
「ちくしょうがっ」
ニーサンが毒づくが、敵には届いていないだろう。
見るだけでも酷い敵だった。
しかもドロドロの体は瘴気を纏っていて、触れることも難しい。
あれほど強い瘴気に取り込まれれば、私達とて無事では済まないだろう。
攻撃方法は敵から離れての遠距離射撃しか手立てがなかった。
しかし何度も攻撃しているが、その度に瘴気が溢れだしてくる。
洞窟内なので派手な戦闘もできない。さらに逃げ道はいつの間にか瘴気で塞がれていた。
要するに、かなり危険な状況だ。
先見隊もおそらくこいつにやられたに違いない。
奴の足元に落ちている警備隊の服の切れ端が、それを物語っていた。
「ニーサン!」
でも、勝算はある。
「おう!」
仕掛けるのは一度で良い。
準備ができるまでは私が敵の足止めを行う。
「雷犬!」
「ォォォオオオ」
炎犬のような強い炎は使えなかった。
洞窟内で一気に酸素が奪われれば、此方も危ない。
それでも、敵を倒すには炎で焼き尽くすのが有効に思える。
「雷犬、雷犬、雷犬っ!」
「ゥゥウウォォォオオオ」
「準備完了だ! いつでもいけるぞ!」
よし、とニーサンの言葉を受けて走る。
走りながら袋から白い粉末を取り出してばら撒く。
前方にはニーサンが開けた大きな風穴。そこに私は身を滑らせて。
「風神ドリルァア!」
「炎犬・帝王!」
――ドカアアアアァン。
爆発。次いで、爆震と爆風に晒された。
一気に空気が流れ込み、一瞬息が詰まる。
穴の傍で身を低くしながら、私達はその余波に耐えていた。
一定の空間に風で粉塵を巻き上げ、そこに火花を点火する。
粉塵爆発と呼ばれるそれは、通常の魔法の倍以上の威力を有していたはずだ。
「「…………」」
少し経って静かになった。
「……やったか?」
壁に開いた穴の中を覗き込む。
さっきまで戦っていた場所は惨劇の跡だった。
メラメラと燃え残る炎は、バラバラに飛び散った敵を駆逐している……。
「やったな」
「ふー、漸くか」
瘴気はまだ少し残っている様だったが、それもほんの僅かだ。
疲れた体に鞭打って起き上がる。依頼はまだ終わっていない。
だが、先に行くも帰るにしても、帰り道の体力は残しておく必要がある。
「モンさーん!」
一度帰ろうかと思っているとアキヒト君の声が響いてきた。あちらも無事だったようだ。
「……モン、さん?」
と、ニーサンが私の顔を見る。
「……なんだ」
「モンさん?」
「だから、なんだっ」
奴の顔はあからさまに笑いを堪えていて。無性に腹が立った。
そこへ、アキヒト君とディズ殿が姿を表す。
「あ、傭兵の兄さんも」
「…………」
「あっはっはっは♪」
「???」
笑う私をアキヒト君は不思議な顔で見つめる。
隣のニーサンが苦い顔をしていたのが面白かった。
◇
後日の話。
洞窟で見つけた謎の施設。
モンさん達が出くわしたドロドロの怪物。
それに後から戻ってきた他の傭兵さん達の証言を元に、闇風邪の原因は明らかになった。
まず一つ目。
俺達の見つけた施設は瘴気を作りだすのではなく、流用する装置らしかった。(後に判明)
んで二つ目。
洞窟から漏れていた瘴気は、すべてドロドロの怪物から出た瘴気だったのだ。(後に判明)
最後、結論。
原因はドロドロの怪物。それはモンさん達が倒したので、あとは残る瘴気を洗浄するだけ。
これで調査は完了だ。
何故そんな魔物がいたのかは警備隊の調べること。
しかし最後に後処理という鬼のような仕事が俺を待っていた。
聞いて驚くなかれ。
洞窟内の瘴気の洗浄、それを全て俺が行うことになったのだ。(なってしまったのだ……)
一応言っておくが、他にも瘴気を取り除ける人はいる。(いる!)
なのに俺にお役が回ってきたのは何故か……何故ならそれは、俺が一番時間がかからないからだ……!(効率的だから!)
瘴気を取り除ける他の人は、村人達の闇風邪を治しにかかり。(俺もそっちがよかった!)
その間に俺はくそ暑い洞窟内を駆け回って、極式に餌を与え続けたのである。(拷問だったぞ)
今後、俺は洞窟には入らないことにした。何が楽しくてあんな暑くて暗い場所……俺には一生理解できない。
しかもしかもしかも!
その後も、まだ治療されていない村人の瘴気を払ってやったのだ。(もう瘴気を見るだけでストレスが……)
何をやってたんだ他の奴は! 自分の仕事くらいちゃんとやれよ!(と、大声で罵りたかった)
あまりのストレスに、その村を脅かす魔物は俺によって駆逐された。(視界に入ったら瞬殺だ)
所々木々や地面が変形しているのは、極式がお茶目を発揮したせいで。(俺のせいではない)
それでも俺の怒りは収まらず、暴れまわる極式を手懐けることで漸く収束に向かったのである。(お仕置きだ!)
「くそ、警備隊の野郎共め……俺をこき使ったことを覚えていろよ……」
帰りの馬車の中でも棘を吐きながらブツブツと嘆く俺。
皆は腫れものを扱うように俺に接してくる。ディズもなんだか大人しい。(みんな俺のせいか?)
「まあ、国の命令だからな。仕方ないだろう」
「それは、分かっていますよ、俺だって……」
ダメだ、モンさんにまで素っ気ない態度を取ってしまう。
大人げないのは分かっているんだが……。
「うむ。君がそれだけ期待されているということじゃないか」
「そうじゃ、主でなければあれほど早く事態を収めることはできなかったのじゃからな」
ディズにまで気を使われている……! さすがにまずいな。
「……なんか、ごめん……」
謝って、その後もなんだか二人に慰められながら都に到着。
情けない気持ちと煮え切らない思いを抱えて俺は宿へと直行した。
部屋に戻ってもディズが優しいままだったので、俺は戸惑いを隠せずにいたのだった。




