035話 Aランクへの道Ⅰ
「え? みんなギルドの方に行っちゃったの?」
あの後、迷っていたのが嘘のように迷路を抜けてギルドに辿り着けた。
それでも帰るのに大分苦労して、やっと着いたと思えばディズにどやされて。
辺りはすでに暗くなっており、エトラナ家の夜食の時間も終わっている頃合いだった。
「それでアキヒトはどうしますの? 今日はもう遅いので泊る用意はしていますが……」
「う~ん」
部屋に案内されて、キャルルからみんなが居なくなったことを告げられた。
確かにここのギルドは興味深い。サービスは良いし、人選も良い。悪い事は一つもない。
「主、わ、儂はキャルルの家の方が良いのじゃが……ダメかの?」
ディズはどうにも乗り気ではない様子。俺は少し考える。
「実は俺もギルドに行こうかと思ってたんだが……」
やはり当初の計画通りに事を進めることにした。
「あ……やはり、そうなのですね」
「……そうか」
しゅんと項垂れるキャルルとディズ。
いや、二人ともそんな顔はしないで欲しい。
「……俺さ、予選大会の決勝で大変な目にあったろ?」
「え……ああ、ドン・ガジェロとの戦いですか?」
「うん、あれってさ、俺がCランクだった所為だと思うんだよね」
出来るだけ判り易いように切り出す。
あれは俺に負けたくないというよりも、Cランクの奴に負けたくなかった故の行動だと思う。
もしそうなら、今度の大会でも俺がCランクのままだと同じ事が起きるかもしれない。みんなプライド高そうだし。
「だから次の大会までにAランクくらいまで傭兵ランクを上げときたいんだ」
自爆とかはもうゴメンである。と、そんなことを沁み染みに言う。
「……たしかに」
「それで、キャルルさえ良ければその後にでも世話になろうと思ってたんだけど……どうかな? ダメ?」
Aランクになってしまえばギルドの方に用はないので、キャルルの家の豪華な部屋で寛ごうと思っていたのだ。
まぁ招待されたのに出ていった後なので、あまり期待はしていない。風呂に入れなくなるのは結構残念だけど。樽あるし。
「いえ! 大丈夫です! 是非入らして下さい、今いる部屋はそのままにしておきますわ!」
「いいの!? 助かった!」
快い返事が貰えたので一安心。
さっさとAランクになって、ゴロゴロするとしますか!(あれ? 他にやることがあったような……)
「ディズには悪いな。少しの間だけギルドの方で我慢してくれるか?」
「うむ!」
別にそのままキャルル邸に居てくれても問題はないのだが、こいつは俺に着いてくるだろうからな。
「ま、とりあえず今日の所は泊ってくよ」
「ええ、わかりましたわ!」
元気を取り戻した快活な声でおやすみの意を告げられる。
そのまま風呂に入って、客室に戻った時には体は眠りを欲していた。
「そういえば主、今日は何処に行っておったのじゃ?」
「ん~……観光~……あ、そうだ」
と、忘れかけていたディズへのプレゼントを思い出す。
「ディズ」
「ん?」
重い瞼を擦りながら、ネックレス型の金貨10枚もした(金は払っていない)指輪をディズに渡す。
「……ぬ、主……」
「ほら、欲しがってた指輪だ。すっげー高かったんだからな? 失くしたりすんなよ?」
「これを……買いに行っておったのか……?」
「ん~そうだよ~(眠過ぎてまともな受け答えはできない)」
ベッドに入って、そろそろ本格的に休眠に入ろうかとした所だった。
「主ーーーーっ!!!」
「うわっ、抱きついてくんな! あとうるせぇ! こっちは散々歩き疲れて眠たいんだっつーの!」
言うが、ディズは喜びを行動で表現し続ける。
「主、主、ぬしーーーー!!!」
「うぜぇ、眠てぇ……うぜぇ……ねむてぇ……」
「絶対失くさんぞ! 大切にするぞ! 主ーー!! 主ーーー!!!」
「…………ぐか~」
ここで俺の意識は眠りに着いた。
なのでここから先のことを俺は覚えていない。
この後俺の身に何かあったのか、なかったのか。その事実は白猫のみが知っている――――。
☆
次の日の朝になった。
今日からギルドに詰めてAランクを目指す。
俺としてはなるたけ早く終わらせて、キャルルの屋敷でゆっくりしたい。
よって依頼は安全で時間がかかるものよりも、危険でも早く終わるものが望ましい。
「この依頼でお願いします」
「はい、承りま……えっ、お一人様でですか!?」
朝一のギルド。(ギルドは基本24時間営業だが)
俺のランクはCなので、手っ取り早く次に上がるためにBランクの依頼を受けた。そしたら驚かれた。
「あ、いえ、その、依頼は『食人植物群の掃討』……で、ですよね?」
「? はい……」
なんだろう? 意味が解からない。
受付の気の弱そうなお嬢さんは、取り乱しながらも俺に何かを問いたげだ。
「あ、あの、本当にお一人で大丈夫なんですかっ?」
「……あぁ」
そうか、ランクCの俺が一人でBランクの難しそうな依頼を受けたものだから……。
「その、こうゆうことを言うのは、いけないことなのは分かっているんですけど……」
「大丈夫ですよ。こう見えても俺、ジュノンの大会に出ますから」
「え?」
「心配はいりません。予選じゃAランクの奴も倒しましたし、それに……」
言って、足元の猫を抱きあげる。
「一人じゃありませんからっ」
……言ってから気付いたが、これでは説得力がないかもしれん。
猫がいるから大丈夫だなんて、一層不安を煽ってしまった感が……。
「す、すみません。私っ、知らなくって……余計なことでしたよねっ、あの、本当にすみませんっ」
「……いえいえ、心配してくれてありがとうございます」
・
・
・
恐縮しまくっていた受付嬢と別れて、俺達は依頼人と馬車に乗った。
ひとまず都を離れて南下する。3時間ほど揺られて行き着いたのは見渡す限りに繁茂する巨大な植物群を有する敷地。
俺が受けた依頼は『食人植物群の掃討』、Bランク上位の依頼。
食人植物というのは通称グーストと呼ばれる植物系の魔物だ。
その名の通り人をも飲み込む程に花開く口のある花弁と、複雑に絡み合った茎が特徴の3,4メートルはある大きな植物である。
植物なのでその場を動くことはないが、茎や葉はうねうねと動いて敵を捕えそのまま目標を飲み込むのだ。
「一月ほど前まではまだ畑だったんだがな」
苦々しくそう言ったのは依頼人の男である。
一月でここまでになったのだから繁殖力も凄いらしい。
町人総出で焼き打ちにしたり、何度傭兵を雇ってみてもどうにもならなかったようで。
「そろそろ報奨金を上げて、Aランクの依頼にしようと思ってたんだ」
「そこまでですか……」
「何せ奴等はしぶといからな。一体だけ仕留めても意味がないし、炎にも耐性がある。前に来た傭兵団は奴等の餌になってしまったほどだ」
成程。受付嬢の態度はそれも込みだったか。
「それにしても……まさか一人だけとは思わなかったよ。否、任務を果たしてくれるのなら文句はないがね?」
その顔は今回もダメっぽいな、という表情で。
「何ぃ!? 貴様、主に不満でもあるのか!」
「ドードードー」
にしても、俺ってそんなに弱く見えるのか……見えるよなぁ。
思いつつ植物群を見渡して少しウンザリ。これは結構時間かかるかも、なんて。
「見える範囲全部を倒せばいいんですよね?」
「見えない所も、だ。一体でも残せばまた繁殖してしまうからな」
面倒くせぇ……。
「まぁ気長にやってくれたまえ。2,3日くらいなら待ってやらんこともない。それで無理ならこの話はなかったことに……」
「貴様ぁ……!」
「はいはい、それじゃ始めようか」
いきり立つディズを宥めて馬車を降りる。
俺としては何とも言えない。まだアレがどの程度のものか判らないから……。
「まぁ、やってみれば判るか」
呟いて、袋から例の鞭を取り出す。
漆黒の形容、柄の部分は少し太くなっていて、他の所も目立った装飾は少なくシンプルなものだ。
材質は……なんだろう? ゴムでもないよな……直接蛇を握っているみたいな感じと言えば伝わるだろうか?
長さは2メートルとちょっと。でも伸縮は自在とかなんとか言ってた気がする。(婆さんとオロウが)
「ぬ、主っ、それは……!」
俺が手にした鞭を見たディズが茫然としていた。言ったのは指輪だけだっけ?
「ほら、結構良さ気だろ? これも昨日見つけたやつなんだ」
どうやら俺を主人と認めてから、むやみやたらに害を及ぼすことは無くなったようだ。
もう周囲に迷惑をかけることはないだろうから安心じゃ、とも婆さんから言われたが……。
実はこうして握っているだけでも俺の魔力は吸われ続けている。これも主人の役割……なんだろう。
「……なんとも禍々しい。主、これを一体何処で見つけたのじゃ」
「うーん、そういや名前知らんな。魔導器とかなんとか言ってたから魔導器屋(?)かな」
「魔導器……ふむ。しかしこれ程の……」
何やらブツブツ言い出したディズ。
魔導器は知ってるっぽいな……くっ、まだ俺の方が世間知らずだったか……。
「お前に渡した指輪もそこで貰ったんだ。だからそれも似たようなモンじゃないか?」
「何じゃと!?」
金貨10枚だぜ。きっとなんかあるに違いない。
……今さらだが俺もその指輪に興味が沸いてきた。後で調べてみよう。
「ところで」
「ん、何だ」
依頼主の意見を確認。
「ここらの土地は滅茶苦茶になっても?」
「無論だ。奴等を駆除できれば後はどうなってもいい。……すでに滅茶苦茶だからな」
目を向けた先はグーストに栄養源を搾取された荒れ果てた大地。
確かに、これ以上悪くなることはないか。
「で、どうなんだ? やれそうか?」
男の目は達観していた。
最初からダメ元と言う事だろう。(それでいいのか?)
「楽勝ですね」
俺も気軽に答えた。
その調子で右手に握った鞭を遊ぶ。
俺が鞭を探していた理由……それは俺が数の暴力を苦手としているからだ。
過去の蜂の巣駆除然り、ドン・ガジェロのゴーレム然り。やっぱり弱点は克服すべきだろう、と。
条件として、一度に大勢の敵を相手にできて、俺の手から離れず、加えて丈夫なものが好ましいかった。
それで悩んだあげく鞭が候補に上がったと言う訳。
まぁ他に思いつかなかっただけだが、良い物が見つかったので良しとする。
「さて、片っぱしから片付けましょうか」
横目でディズを見ると、いまだに何か思案中。ちょっと残念。
俺の雄姿を見に来たんじゃなかったのか……別にいいけどな。
パシパシと軽く地面を叩いてから魔力と力を一気に込める。
「いけ、極式」
名前を呼んで、右腕を振るった。
――ドゴォォオオオオオ!!!
「うおっ!?」
「むむっ!?」
「……………」
あら不思議。巨大植物群の一角が見るも無残な光景に……。
「……え?」
半信半疑で振った一撃が植物を叩き潰していた。
距離的に言ってもここからは100メートル以上離れているんだが……。
しかも直撃の瞬間、鞭が巨大化したようにも見えたが……俺の目の錯覚かな?
もう一度やってみよう。
――ビュン!
――ドバァァアアアアア!!!
やっぱりでかくなった!
「……すげぇ」
「……これは」
「?????」
感動する俺。感嘆するディズ。言葉を失った依頼主。
「凄すぎ。ここまでとは思わなかった」
「……なんとも、出鱈目な鞭じゃのぉ」
「極式だぜ」
やばい、これ楽しいわ♪
――ビュンビュンビュン!!!
――ドカァアアアア! ブシュゥウウウウ! ズゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!
・
・
・
「依頼達成~♪」
予想以上に早く終わった。
鞭を何度か振っただけで殲滅完了とは、恐るべし極式……!
さらにやってみてわかったが、こいつは敵の魔力も食らってるみたいで。
中々にあくどい。食欲旺盛なのはいいが、そういう所はちゃんと躾けないといけないようだ。
「時間もあるし、今日はもう一つくらいはできるかな」
「うまくすれば二つはいけるかのぉ」
太陽は真ん中を少し回ったくらい。
半ば放心状態だった依頼主から、最大級の賛辞とそこそこの銀貨を頂戴し、俺達はギルドへと帰ってきた。
今はテーブルに腰を下ろして、ディズと一緒にどんな依頼があるのかを検索中。
周りには傭兵さんがいっぱいいて、彼らも同じように各々テーブルを囲んで会話を楽しんでいる。
「パーティかぁ……」
それを見て、俺が思いを馳せたのは傭兵団のこと。
今までギルドには何度もお世話になったが、思えば皆パーティを組んでいたように思う。
珍しいとまでは言わないが、一人身の方が少ないのは確かで……。
「……男は邪魔だな。女だけの……ハーレム……その場合……」
「主、主」
「ん? 今大事なことを考えているんだ。もう少し待て」
「ハーレム」
「!?」
こ、こいつ……俺の心を読んだ!? 読めないんじゃなかったのか!?
「ハハハ、面白い事を言うなぁ?」
「主が言っておった」
声に出てた!?
「『はぁ~ねむ~』と言ったんだ。眠かっただけなんだ」
「女だけ、とも言っておった」
「無駄話はいい。さっさと次の依頼を見つけるぞ」
無理やりな方向転換。
ディズは俺を一瞥してからテーブルの依頼書へと目を向ける。
チラッと垣間見た奴の瞳は、一切の感情をそげ落した色をしていた。
「…………」
「…………」
……何この無言の重圧、耐えらんないよ。
「……言いたい事があるなら言って」
「無駄話は良い。さっさと次の依頼を見つけるぞ」
何でそんなに怒っているんだ。俺、そんなに悪い事した?
「アキヒトさん! やっぱりアキヒトさんもこっちに来たんですか!?」
気まずい雰囲気の中、俺の名を呼ぶ声があった。
「よう、元気かオスカー」
御苦労、いい働きであったぞ。
「昨日の今日ですが、僕は元気ですよ」
律儀なやつ……だがその律儀さは救いにもなると俺は知った。
「今何してるんです?」
丁度オスカーも依頼をこなしてきた所らしい。
あの魚は強かったです、と魚如きに苦戦を強いていた様子。
俺は可愛い植物を愛でていたよと告白し、花はいいですよね、と返事を貰って。
「ではな、俺は行くぞ」
「僕も一緒に行っていいですか?」
律儀な男は害にもなるんだと俺は知っていた。
「お前が来ちゃランクが上がらないだろ」
規定に寄れば、一人で依頼を受けることに意味がある。
ディズは俺の使い魔的存在なのでスルーされるが、二人で依頼を受けてはいけないのだ。
「行くぞディズ。ついてこい!」
「うむ!」
適当にテーブルから依頼書を取って、受付に向かう。
何故かディズの機嫌が通常モードに戻っていて、何故かオスカーが俺達の後ろにいた。
そのまま俺は何も言わずに依頼書をお嬢さんに渡して……あ。
「あっ、今朝は大変失礼しました。私、その、まだ新人で……」
「いえいえ」
「あの後、調べたんです。すみませんでしたっ。アキヒトさんのことを知らなくて」
知ってる方が驚きだが。
「あの、ジュノンの大会、頑張ってください! 私、応援してますから!」
「あ、ありがとう」
まさかの応援。非常に気になる俺の知名度。
予選で優勝したことはどれだけの意味があったのか、俺にはまだ良く分からない。
「あっ、あはは、依頼でしたね。えと『水魚ブルーティスの捕獲』でよろしいですね?」
「はい」
「了承しました。それでは依頼主に連絡いたしますので3番ゲートでお待ちください」
「どうも~」
笑顔がカワイイ受付のお嬢さんであった。
言われたとおり、俺は3番ゲートへと向かう。
昨日散々歩き回ったので場所は分かっていた。
因みにゲートってのは特別な待合室のこと。
ギルドは広いからね、依頼人(傭兵も)が迷子になる可能性もあるのだ。
「ブルーティスって、僕がさっき倒したレッドティガーの天敵じゃないですか!?」
依頼についてはゲートへ歩いていく途中、オスカーが解説してくれた。
「体長4メートルはある湖の主ですよ? 牙には猛毒があると聞きますし、確かに鱗は素材として一級品ですけど、倒すだけならまだしも捕獲は難しいと思います」
へぇー、へぇー、へぇー、へぇー。(『へぇ』ボタン連打)
「そもそもあの湖は……あ、今朝僕が行っていた所でカラー湖と言うんですが、七つに区分けされていてそれぞれが湖の底で繋がっているんですよ。一つ一つの湖には主が居て、ブルーやレッドは危険区域に指定されていますから、他にも危険な魔物もいます。僕も何人かの傭兵達と合同でやったのですが……」
お、そろそろ3番ゲートかな。
「アキヒトさんなら大丈夫かと思いますが、その、できれば僕も一緒に行っていいですか?」
「やはり着いてくるつもりだったか……」
その粘着気質はもはやストーカーのレベルにまで及んでいる。
毒がないやつだから余計に扱いに困る。うざい男の勲章は伊達では無い。
「う~ん」
経験則から言って、何を言っても着いてきそうだ。
依頼は俺一人で受けているから手は出してこないだろうが……邪魔な事に変わりはない。
「オスカー、お前は強くなりたいんだろ? こんな所で油を売っている暇はないんじゃないのか?」
「いえ! アキヒトさんの戦いを見ることは決して無駄ではありません!」
ダメだ。早くなんとかしないと……。
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・
・
「ここが、ブルー区域ですね。気をつけましょう、湖だけじゃなくて、周りの森にも魔物は潜んでいます!」
うざいから黙って。
「さっさと終わらせよう」
即行で依頼を終わらせて、即行でギルドへと戻る。
今の俺にできることはそれだけだ。後はもう宿で寝る。決めた。
「おばちゃん、もっかい聞くけど生きたまま捕獲すればいいんだな?」
「ああ、できるだけキズものにもしないでおくれよ。無駄な所のない、貴重なやつだからね」
「OK」
言って、さっさと馬車を出る。
後方の馬車の荷台には捕獲用のネットと、機材がぎっしり積まれている。
相当な大捕り物を予想されるが、所詮魚一匹だ。俺の計画にはなんら支障にならない。
「サーチ」
湖の端に足をつけて、魔力の網を引く。広さはあるがなんとかなるだろう。
水は魔力を流し難いんだけど、今回は力技だ。手っとり早く目標を見つけるためにはこれしかない。
あと言っておくと俺は水着姿で、腕を組んで浅瀬に起立している。(今回鞭は使わない)
「わくわく、漸くアキヒトさんの戦いが見られるんですね!」
「ふふん、しっかりと見ておけオスカー。主の実力をなっ!」
ディズはオスカーの意見を推している。
ここにオスカーが来てしまったのも、最終的にはディズが反対しなかったからだ。
「信じるは己のみ」
悲しくなった俺は一言嘆いて。
「……ヒット!」
続いて妙にデカイ生体反応をキャッチした。目標のブルーティスだと思われる。
そのまま魔力の網を囲んで……ちっ、気付いたか……だが甘い……む、やるな……これならどうだ……よし、掌握。
「あ、何か浮かんできました! あれは……ブ、ブルーティス……?」
「ふむ、終わった様じゃな。凄まじい戦いであった……」
「ええっ!?」
俺は湖の中腹まで泳いで意識を失った魚を引き上げる。
強化しているとはいえ、泳ぐのは苦手だ。抵抗の多い水中に少し手間取って。
「もう、終わり……ですか」
「文句あんの?」
「いえ、ないですけど……成程、僕の実力ではまだ何が起きたかも分からないレベルだったと……さすがはアキヒトさんですね」
こうゆう思考展開がきっとストーカーに繋がるんだろうな、と思った。
「ありゃ? もう終わりかい」
「一応麻酔は打っといてください。何時目覚めるかは分からないんで」
「そうかい、わかったよ。アンタら! 早く麻酔打って囲んじまいな!!」
数人の男手の方々が巨大な魚に四苦八苦。あ、オスカーが手伝いにいった。
「それにしても凄いねぇ。こんなにあっさり終わったのは今までで初めてだよ。次もあんたに頼もうかねぇ」
「ははは、そりゃどうも……っとと」
力技を使った反動か、疲れがどっと押し寄せて足元がぐらつく。
「おい、大丈夫かいっ!?」
「大丈夫っす。ちょっと足元がふらついただけなんで……」
「……あたしには分からなかったけど無理してたんだね? 早く馬車に戻って寝てな。体は大事にするもんだよ」
ポンポンと俺の背中に手を置いてくるおばちゃん。やべ、一瞬天使に見えた。
「じゃあ遠慮なく休ませてもらいます」
「ああ、後はあたしらに任せな。ゆっくりお休み」
俺は馬車に戻ってディズの看病(奴はそう言い張って聞かなかった)を受け。
オスカーも色々思う所があったのか、どこか憂いのある深い表情を漂わせながら。(ごめん、適当)
そんなこんなで癒され絆され、おばちゃんの差し入れのオニギリを頬張りながら、俺達は帰りの帰路に着いたのだった。




