第43話
「えっと・・・その・・・」
笑わないでってそういう方面のやつだったのか。いやしかし、確かにこの超絶イケメンで男らしい姿からの可愛らしい萌えボイスはインパクトが強すぎた。
申し訳ないが少し笑いそうになったのを必死にばれないように下を向き、一旦自分を落ち着かせて冷静さを取り戻そう。
それよりサタンだ。あいつはこういうのを相手がどう思うのか関係なく下品に遠慮なく笑いだすのではないかと危惧していたのだが、それも杞憂だった。
確かに驚きを隠せずにいる様子だが、その声を笑うこともなければ何も反応することもなかった。わたしの予想は大きく外れ、むしろわたしの方が笑いそうになっていたことにサタンへの申し訳なさと自分自身の愚かさが心を締め付けた。
いじめられていたからこそ、こういう事について理解しなければいけないはずなのに、自分がその立ち位置から抜け出した瞬間いじめられている立場の人についての理解が薄れたのは人間の性と言っていいのかはわからないが、一つだけ言えることは笑おうとしたわたしは最低だ、ということだ。
本質はいじめている人間もそうじゃない人間も表裏一体なのか。
「あれ、自分の声を聞いて笑わないんですか?今まで会ってきた連中は自分の声を聞いては面白がって馬鹿にしてきたやつらばかりで、唯一笑わなかったのはアスモデウス様とオオカミだけだったのに」
「そりゃ笑わへんやろ。何を笑う事があんねん。あれか?お前のその容姿と声がマッチしてへんから笑われると思ったんか。可愛そうになぁ。そんなんで笑うやつは殺して正解や」
ぐはぁっ!!心が痛い、痛すぎる・・・
ごめんなさい。
ほんと笑いそうになってごめんなさい。
「しっかしオオカミよ、なんでこのこと黙ってたんや。別に言っても問題ないやろ」
「誰にも知られたくないから言うなって言われてただけよ」
そう淡々と説明しつつも、わたしたちが笑わなかったことに安堵しているのかその顔は微かに微笑みを帯びていた。本当に笑うのこらえてて良かった。
けどこれで問題は乗り越えたわけで、話も聞いてくれるっていうならもう勝ち確ではないのだろうか。この調子でいけば仲間にも普通になってくれるのではないかと期待が膨らむ。
将門も最初の頃の不愛想な表情と違って柔らかくなってるし、なんか機嫌良き!って感じでもう簡単に落とせちゃうんじゃないかって思う。最低な考えだなわたし。
「それで、あなた方のお願いというのは何でしょうか?オオカミと行動してるということは、それなりに何か理由があるんでしょうが自分に協力できることなら何でもさせてもらいます」
口を閉ざしていた将門の方からまさかの質問きたーーー!
わたしたちの印象も悪くなさそうだし、これは完全に勝ったのでは・・・
その様子を見たサタンも「おっ?これはいけるやん」と感じ取ったのか、ニコッと笑いながら声もいつもより一段高くなりながら言う。
「アスモデウスを倒してうちがもっかい大魔神になるために仲間になってほしい。仲間になるのが嫌やったら鍵だけ渡してくれてもええんやで」
よし、これで難局を突破でき
「は?」
あれっ?おかしいな。ここは「は?」という返事がくる場面じゃないぞ?
「わかった、あなた方に協力します」って返事がくる場面でしょ?
なんか目つきもヤバくなってるんだけど、これもしかしてミスった・・・
そんな様子が目に入ってないのか、勘違いしたサタンは言葉がよく聞き取れなかったと勘違いしたらしく同じ言葉を繰り返そうとする。
これはまずいぞとわたしとオオカミさんは察して止めようとしたが時すでに遅し。
「聞こえへんかったか?ほなもっかい言うからちゃんと聞いときや。アスモデウスを倒して」
うちがもっかい大魔神になる。
そう言いかけた瞬間、目の前にはさっきまで座っていた将門がいつのまにかわたしたちの前まできたと同時に、筋骨隆々のたくましい腕でわたしとサタンの首元めがけてラリアットをしてきた。しかし理解するのに精一杯で、それをガードすることなど不可能なぐらいとてつもない速さ。
何も出来ないまま、わたしとサタンにラリアットが炸裂した。




