第41話
「説得って、オオカミさんみたいに仲間になってもらうつもりですか!?」
それに勝算ゼロって、何でそんな相手を最初に選んだんだろう。
勝ち目がない強い相手こそ今は戦いを避けるべきじゃないのか。
「それが一番良いんだけどそれは望めないかな。だから、鍵を渡してもらう」
「鍵だけを?そんな都合のいいことって」
「普通ありえないけどね。けど仲間になってもらうよりかは可能性はあると思う」
オオカミさんのようにわたしに同情してくれる相手ならそれは可能なんだろうけど、この口ぶりから言うと限りなく成功の確率は低そうだ。やらないよりかはマシ、ということだろう。
「私と将門はそれなりに仲は良いから、その関係性を利用させてもらう。って言い方すると悪いけど別に騙すわけじゃないからセーフよね。それより問題は・・・」
落ち込んでいるサタンに目線を送る。
「目的については正直に話すのはまだいいとして、それがあの評判の悪いサタンが首謀者と知ったらどうなるかは予測できないわね。でもあいつを一緒に連れて行かないと、もしもの時に戦力が足りない。いるからって勝てるとは到底思えないけど」
頑なにわたしたちが勝てないと言い続けているけど、わたしは目覚めたんだ(何言ってんだ私)
あのサタンにも勝ったし、オオカミさんもわたしも知らない秘めたる力が将門を倒せるかもしれない。多分!
「もちろんメサイアの力に期待してる部分もあるわ。けどね、私は組手だけど一度戦ったことがある。その時にはボロ負けよ。為す術がなく傷を負わせるどころの話じゃない、私の作った対悪魔用の銃が全く歯が立たなかった。遠距離の私の方が有利なはずなのにもかかわらず傷一つつける事さえできなかった。それに将門は今も当然のように鍛えている。だいぶ前に戦ったその時ですら手が出なかった私が敵うはずがない。だから武力行使より対話で解決したいの」
「そんなこと聞いたら自信なくなっちゃったじゃないですか」
なんてことを話してくれたんだ。
さっきまで心がイケイケモードだったのに一瞬で終了したよ。
急な不安が押し寄せて一気にブルーな気持ちになったのを察したのをわかりつつも、遠慮せずに厳しいことをズバズバ宣告してくる。
「どっちにしろ将門とは会わないといけないんだから諦めなさい。無駄だったとして、序盤か終盤に絶望を味わうかどうかってだけよ。私は前者派」
「わたしは後者派です」
「うちも前者や。残念ながらな」
急に会話に参加してきたサタンに驚いた。ちゃんと話聞いてたのかよ~流石だなおい。その顔は落ち込んでいた時と違い凛としていて、覚悟を決めた感じに見えた。昔の戦友が変わってしまったかもしれないという恐怖を押し殺して、今はとにかく前に進むしかないと決めた、そうわたしには見えた。
「将門っちゅうやつがどんなやつか知らんけど、神を倒そうとしてるうちらがこんな序盤に尻込みしててどないすんねんっちゅうはなしや。やるしかない、やろ?オオカミ」
「ふふっ、そうね」
オオカミさんの笑みは今までサタンに見せていたものではなく、わたしに向ける笑顔と同じものだった。ちょっとはお互い歩み寄ってきてる(はず) この二人が協力してくれればわたしも居心地がいいんだけど、その日が来るのはもう少し後になりそうかな。
「二対一、決まりね。それじゃあ思い立ったが吉日、ワープして早速行くわよ」
「ワープ?」
「ワープ?」
被った。恥ずかしい。わたしとサタンが同時に疑問を投げかけたのに更に疑問形で返事が返ってきた。
「ん?記憶式転移装置を持ってないの?メサイアはともかくあなた仮にも元大魔神だったのに」
「あーーーなんかそんなんあったような気もしないようなそうでもないような???」
「もーちゃんとしてよ。便利な物は使っていかないと」
何故持っていないのと聞かれると、答えは単純明快「無くした」らしい。
無くすようのものじゃないでしょとツッコミを入れられていたが、実際そのブツを見てみるとその通りだった。ポケットから取り出したそれはデジタル時計のようで、戦闘の時は壊れる恐れがあるから外すらしいが基本的には腕に着けておくらしい。それなりの実力者しか貰えない貴重なものをこうも無くすとは物に対する愛着がないのかこいつは。使い方は簡単で、行った先々の場所で時計にタッチするとその場所を記憶していつでも記録した場所に行け、時計の所有者の半径三メートル以内にいる者を移動できる。いまいち理解できないが、まぁこんな世界ならあるんだろうと自分を納得させる。オオカミさんはそこまで色々な場所に行ったことはないらしいが、将門の場所へは行ったことがあるからすぐに行けるって感じだ。
「もうフェニックスで移動せんくてもええんちゃうんかこれ」
「ちょっと」
やめてあげなさいよ。あっ良い事思いついた、じゃないんですよ。フェニックスはあなたの事が好きで使われることに喜びを覚えているのに。使ってあげなよ。
「冗談冗談、いやいや、嘘嘘、半分冗談。便利に使えるときは使うってことや」
「ならいいけど」
「それじゃ準備はいいわね。どっちに転ぶかは運次第、じゃ行くわよ。あっ、それと絶対に将門の前では笑わないでね。私たち終わるから」
笑わないでとは。笑ったら罰としてケツをバットでしばかれたりするのかな。
年に一度のあのスペシャル番組面白くて毎年見てたなぁ。
世界を壊したら見れなくなっちゃうのは残念だけど、あの人たちもケツをしばかれたりタイキックされたり厳ついオジサンにビンタされずに済むし結果オーライということで許してもらおう。
ピッと時計にタッチした瞬間、目の前の景色が変わった。
どうやら着いたらしい。前回サタンにつかまって移動した時のような気持ち悪さもなくゲロを吐く心配も皆無だった。こっちが正しい移動の仕方で、遠距離の瞬間移動と違い負担がないとのこと。サタンの瞬間移動も十分すごいらしいが、あれはみんなで移動するには使わない方が良き。
しっかし見渡す限り何にもないな。常に薄い雲が空を覆っていて薄暗い。下は整地されずに地面がむき出しの状態で、ゴミ一つ落ちていないのが不気味だ。誰かが生活する場所というよりかは、誰かが生活をしていた場所という状態。今まで見てきた場所と違って殺風景で味気ないし感動できないのが個人的には残念で仕方ない。何でこんなファンタジーな世界に来てまでこんなクソつまんない風景を見なきゃいけないの。将門も何でこんな感じにしてって頼んだんだよ。
「いたわよ」
「えっどこですか」
「よう見てみぃや。あそこに普通に座っとるやろ。つーかなかなかデカいな」
もう一度見渡すと普通にいた。あぐらをかいて瞑想をしているようだ。将門を囲むように周りに何かが置いてあるがそれはよく見えない。
けど普通にいたな。最初見えていなかったのは多分、景色が見れると思って期待していたからそっちに意識が向いていたのだろうか。つーかデカっ!けっこう離れてるのにそれなりに大きく見えるということは、近くにいくともっと大きいんだろう。
「とりあえずあなたたちはここで待ってて。合図を出したらこっちに来て」
「わかりました」
遂に接触する時が来た。上手くいけばいいんだけど。




