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猫が美少女で実は俺?  作者: もこ
腐敗の森
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刀の行方

よろしくっス!



行きは2人で、帰りは1人で。シャルナには申し訳無いけれど彼女は彼女の仕事がある、俺の旅の手伝いをしたいって言ってたけれどね。


「ただいま……」


前と変わらない早朝の宿。木漏れ日が窓から差し込んで、その先には金髪の美少女がむにゃむにゃと寝息を立てながら気持ち良く寝ていた。


「……!!」


不意に彼女の白い柔肌が、布団の隙間から見えてしまう。俺は視線を逸らして見てない事にする。

どうやら少しのズレで隣のノアの部屋に飛んでしまったらしい。ここは起こさ無いようにそっと部屋を出よう。俺は音を立てない様に横を通り過ぎる、そして自室に戻る……筈だった。


「…………セドナ?」


「ひぇ!?」


不意に伸びた手が服の裾を掴んでくる。振り払おうと思えば出来るぐらいの強さだけど、此処で逃げても意味が無い。俺は弁解の為に頭をフル回転させる、けれども言葉は出てこない。


「こ、これは違くて!その……」


「私もう食べられない……むにゃむにゃ。」


「……ごめん!ってあれ……寝ぼけてる?」


ノアは目を閉じたまま話していた。つまり寝言だ。それならば都合が良い、面倒な事になる前に移動しよう。


「ちゅぱっ……んっ……はぁっ……ちゅ。」


「ちょ!?」


「あむ……ちゅ……カプッ!」


「ノア!それ俺の指………って痛ッ!!噛むな噛むなぁ!」


「……ほへ?」


し、しまったーー!!

寝ぼけていたノアはパッチリと目を覚まし、胸元の緩い服を揺らしながら立ち上がる。


「わ、私……な、何でセドナの指なんて舐めてーーってか何でここに居るのよ!!」


シュルリーー

不意に彼女を守る衣服がズレて、上半身が露わになる。


「ひゃっ……!!」


ノアは顔を真っ赤に染め上げながら、両腕で胸を隠す。


「み、見た?」


「見てない!見てない!」


「本当に!?」


「見てないって!!それに見たとしてももう既に1度見てるから安心しーーブッ!!」


「変態ッーー!!」


飛んできた平手打ちを頬でナイスキャッチする。まぁ、ぶたれただけなんだが、そう言い方を変えれば凄さが増すだろう?


「こ、これには理由があってだな!指輪で飛んだ先が何故かここになってて……そう!狂ってたんだ!!魔力の調整は完璧だったし俺は何も悪くないと思う!」


「良いから早く出ていきなさいよ!!」


※※※


ノアは自分の着替えが済んだ後、俺の部屋まで足を運んで来てくれた。俺は彼女と離れていた約2日間の事を端的に、そして自分なりに分かりやすく話をした。


「ふーん……これでまだ旅を続けられそうね、良かったじゃない。」


「うん、けれど何時までもって訳にはいかなそうだ。だから早い所次の神格者に会いに行きたいんだけれど……」


「そうね……ここからならメリクリウスの国かしら、商業の神格者だから解呪の指輪とか持っているかもしれないわ。」


「その考えには一理あるな。商業の神格者ってだけで、各国のレアなアイテムを持ってそうだ。強力な解呪の指輪を持っていても可笑しく無いし、最低でも呪いを緩和する指輪ぐらいは有りそうか。」


ノアは俺の言葉にこくりと相槌をうつ。


「そうと決まれば動きましょう。私、2日も宿に居て飽きちゃったの。」


ノアは2日もの間ずっと宿に居たのか、1人で外に出て危険な目に会うよりはマシだけれど、不健康だな。金髪美少女ニートになる前にさっさと連れ出そう。


「あぁ、そう言えばシャトルーズ・ムーンを見てないか?忘れて行っちゃったんだけど。」


「それなら無いわよ。」


「えぇ!?」


「……んふっ……あははっ!」


「突然笑い出してどうしたんだよ。」


「だって……あんまり必死に言うもんだから面白くって!嘘よ、嘘!でも自分の剣を忘れる神格者ってアンタぐらいしか居ないわね!」


「むぅ……それを言うならノアにも非があるぞ!モノイレロの共有をしてるんだから入れておいてくれれば俺は取り出せたのに!」


お陰でシルバにお前何もして無いなって言われちゃったよ。あのムカつく顔が浮かんだ所で辿っていた記憶の線を切る。


「だって私を1人残して行っちゃうんだもん。ちょっとぐらい罰を与えても良いでしょう?」


そう言ってノアはべーっと舌を出す。


「はぁ……悪かった、もうノアを1人にしないと約束するよ。」


「………は、はぁ!?そ、そんな事急に言われても……」


「これからも旅のパートナーとして頼むな!」


「旅のパートナー……?

んんっ……期待した私が馬鹿だったわ……」


「え?何て言った?」


「何でも無いわよ!馬鹿っ!」


急に照れたと思ったら今度は突然の怒り……ノアは本当に感情の移り変わりが激しいなぁ。


「全く……シャトルーズ・ムーンならそこの戸棚にしまって置いたわ、感謝しなさいよね。」


「あ、ありがとうございます……」


俺はそう言いながらノアが指差す戸棚へと足を運ぶ。


「あれ?」


戸棚には金の指輪が、詰まるところシャトルーズ・ムーンが置いてあるとタカをくくっていた。しかしながら、俺の目に飛び込んで来たのは指輪でも無ければ剣そのものでも無い。1枚の紙切れが置かれていた。


「ノア、本当にここに置いておいた?」


「そうよ、戸棚ならセドナが帰ってきた時に1番分かりやすいし気付くでしょう?」


ノアの悪戯では無い様だ、俺は半分に折られた紙を取り出して中身を確認する。すると、殴り書きでこう書かれていた。


『お借りするっス』


「お借りするっス?」


……??


「ノア、シャトルーズ・ムーンをお借りしてる?」


「はぁ?何言ってんのよ。」


「だよな。」


確かに何を言ってんだ俺は。


「さっきからその紙切れを見てどうしたのよ。」


「はい。」


俺は話すよりも見せる方が良いと判断し、彼女に紙を手渡す。視線を落とす金髪美少女。


「消えた指輪と現れた手紙……つまり盗まれた?」


「ぬ、盗まれた!?」


そして2人で顔を見合わせる。


「「盗まれたぁぁ!!!」


※※※


「帰ったっス〜……」


早朝、抜け出した時と相変わらず奏でられる金属音に身を隠しながら、小声でそんな事を呟く。

外は既に夕暮れの光が落ち着いて、夜が直ぐそこまで迫って来ている事を感じさせる。それでも月の国から取り寄せた灯篭の灯りが、部屋の奥、つまりじぃちゃんの作業場を照らしている。

じぃちゃん、まだ作ってたんスね……

灯りに当てられぬ様、身を屈めながら工房を抜けて行く。地面には空の指輪が散らばっており汚らしい。周りにはこれでもかと屑鉄がほっぽられていて足場も無い。それでも私は、ゆっくりと音を鳴らさぬ様に進んで行く。


「シャンティラ!!帰ったのか!?」


「ひぃッ!!!」


突然発せられたじぃちゃんの声に、私は驚きの声を上げて飛び跳ねてしまう。


「こんっのおてんば娘が!!手伝いもせずに何処をほっつき歩いてる!?ん?鍛冶屋になりたくねぇのか?」


「成りたいっス!成りたいけど毎日毎日、研ぐだけ、磨くだけ、掃除だけじゃないっスか!そろそろティラにも打たせて欲しいっス!!業物を作れる自信が有るっス!!」


「ダメだダメだ!お前は何も分かって無い!そんな奴に刀は打たせられん!!」


「……でも!」


「でもじゃない。ダメなもんはダメだ!」


「…………じぃちゃんのバカ!!」


「おい!おいシャンティラ!!」


私は会話を投げ出し自室へと駆ける。後方で鉄を打つ音が消えたのも一瞬、また耳にキィンっという高音が聞こえ始める。


「はぁ……手伝いばっかりさせて、何が自分の特徴を知れ!っスか!そんなのやってみないと分からないに決まってるっス!」


イラつき、疾る息を押し殺して、自室の扉を開ける。

じぃちゃんは私に厳しい。何年経っても剣を打たせてくれないし、勝手に打って作った剣を見せても駄作だと突き放すだけ、どうやっても私の実力が認められない。


「……でもこれが有れば!!」


ベッドに寝転びながら、私はモノイレロに入れていた金の指輪を取り出す。【シャトルーズ・ムーン】、月の神格者が保有していた筈の刀匠の忘形剣だ。


「ふむふむ……属性は雷、世界で2番目に美しい刀は所有者を選ぶ難しいウルトが持ち味っス。コレと似せて作ればじぃちゃんも満足の一刀が出来るに決まってるっス!」


そしたら私も鍛冶職人の仲間入りだ。皆、私が作った剣を求め、使い、身を守り、そして愛する。


「さぁーて!取り掛かるっスか!!」


自慢のオレンジ髪を結って、腕まくりをする。準備は大丈夫、熱量も充分。じぃちゃんの工房に似せて作った私専用の工房で、絶対に作ってやる。至高の一刀を。





シャルナ「兄さん!?兄さんは!?」


シルバ「彼奴なら元の場所に帰したぞ。」


シャルナ「な、何故です隊長!!私も!私も兄さんと一緒について行くつもりだったのにッ!!」


シルバ「俺の代わりに国を守ってくれ、帰ってきたらご褒美をあげるから。」


シャルナ「?」


シルバ「セドナから伝言だ。やっぱ妹は信頼されてるな。」


シャルナ「ご褒美!!?兄さんからご褒美!?何ですかね!!?デートですか?キスですか!?それとももっと!??」


シルバ「そこまでは……」


シャルナ「隊長!何してるんですか?早く仕事に行きますよ!兄さんが帰ってくるまで、この国は私達が完璧に!華麗に!優雅に!絶対守りましょう!」


シルバ【とっさの嘘だけど上手くいったな。セドナには負担が増えるが、まぁ俺には関係無いから良いか。】


シャルナ「どうしました?」


シルバ「いや、何でも無い。行くぞ。」




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