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猫が美少女で実は俺?  作者: もこ
腐敗の森
51/53

閑話〜圧倒〜

(・ω・)

激しい頭痛と嘔吐感に襲われ、逃げ場すら無い現状。いや、逃げる為に背を向ける事すら出来ない。


「剣技ィ!!」


「《剣技》『エレクトジャスト』」


「……ッッ!!」


足掻きにも似た7つの刃は、虚しくその雷の前でこうべを垂れる。ミスを取り戻すようにすぐさま食い付くが……激しい凌ぎ合いの中、徐々に押し込まれるのが分かる。


「お前さ、俺達の事舐めすぎ。」


見下してはいるが、舐めてなどいない。敵を欺き自らを虚の殻で守りながら万全の態勢で幻覚に陥れた。

敵はたった2人。

2人を落とせば後はエサだ……なのに何故……

セドナ・フルムーンが突きつける刃は僕の首元へ、勝負は刹那、世界は何時だって不条理か?くそッ……これを発動する事になるなんて……


「……ハァァァァ!!《リング》『メタロードゴーレム!!』」


世界を変えると決めた時から今現在まで、毎日欠かさず魔力を注ぎ込んだ金指輪だ。それを撫でた次の瞬間、地が揺れ身体の力を根こそぎ持って行かれる。ノイズの混じった轟音を響かせながら地が割れ、望んだ土偶が姿を現す。

褐色のボディに点灯する紅の光、バラバラと土を落としながら標的をロックオンし、身体の節々から威嚇の様に蒸気を噴射する。


「幻覚じゃない……本物の土魔法だ。残りの魔力全てを込めた最大最強のゴーレム相手に、お前は潰されリタイアーー」


リタイアだーーそう言い放とうとしたその瞬間だ、世界は揺らぎ、意識は途切れ消え失せる。


そして暗転。


その直後、僕は世界に舞い戻る。


「……再生!?」


首を落とされたーー

しかし、今の僕はコイツとリンクしている、コイツを倒さなければ、僕は倒せない。


「メタロードゴーレム!!」


咄嗟に出した指示に沿って、ゴーレムは岩を精製しブン投げる。投げられた岩は、地面を削り取りながら空を裂く。先までの魔法とは比べ物にならないスピードと威力、セドナ・フルムーンを無視して背後のリール・ニルバーナへと唸り飛んでいく。

しかし、それは届かない。セドナ・フルムーンが素早く移動し、岩を粉々に砕いてしまう。


「お前に手を出せなかったのは幻覚の対処法が定かで無かったからだ。それが分かった今、お前はもう【狩られる側】だ。」


「僕が狩られる側?コイツを倒してから言え!神格者であってもこのメタロードゴーレムは遅れを取らない。狩られるのはお前だ。」


「いや、お前だ魔格者。但し狩るのは俺じゃ無いけどな。」


「それはどう言うーー」


「こーゆーこったァァァ!!」


「……!!!」


「おぉ!硬いなぁ!!ヤワなボディならバラバラだったんだが……」


いつの間に?何故お前がそこに居る?

メタロードゴーレムのボディに付けられたクセのある斬撃痕は、切り込みを生業としたワナ・テンポの特長!!奴等、僕の檻を抜けてきたのか!?


「ッ行け!!」


「おっとッ!!ハッ!!そんなんで捕まるかよ!」


「オイ!ワナ・テンポを潰せ!!なんの策もなくヌケヌケと飛び出てきて僕のゴーレムに勝てると思ってるのか!!」


「《剣技》『六雷・轟!!』」


「ーーづっ!!?」


目前。雷の枝から桃髪の女がしゅるりと身を翻し、剣技を繰り出してくる。鋼鉄の剣で受け止め、息もつかせない戦いを繰り返す。


「押されていますよ、広範囲に広がる土魔法でも如何ですか?」


僕を馬鹿にしているのか!?

……神格軍副隊長ディアナ・フルムーン、その気持ちを逆撫でする挑発に乗ってやろう。


「《リングーーー」


ーー!?何故指輪に触れても発動しない!?


「……!!…………光の拘束魔法!!何でッ!!」


「魔法、使わないのですか?」


「…………!!」


……クソッ!副隊長の忘却の剣かッ!!記憶操作の間にバルトロイゼが鍵を掛けやがった!!


「身体の自由を奪い、手持つ刃を力無く落とせ。光よ、我が忠誠を形にーー《剣技》『ブレイブキッド』」


「メタロードォォ!!」


「そいつなら出て来た所悪いのじゃが、引っ込んで貰ったのじゃ。」


ガラクタと化したメタロードゴーレムの上に、神格者メリナ・コアレスターが胡座をかいて座る。僕が用意した最強の砦が、瞬く間に崩れていく。こんなの違う!!こんなの間違いだ!!!!


「奇襲で引っ掻き回すのは上手かったが、初戦その程度の器だよお前は。単騎で月の神格軍を落とす?寝言は寝て言え馬鹿野郎。」


「兄さんの模倣を作るなんて私が許さない。懺悔しても遅いです。」


「な?お前は俺達を舐め過ぎだろ?」


作戦は練りに練った。噂の広げ方は社会的地位のある者を狙ったし、此処までの位置取りから足を着かせない様にもした。この日の為に魔力も十二分に貯めてきた、のに……なのに……!!


「この僕が……形勢……逆転された?」


「逆転?笑わせんなガキ、ハナから優位に立ってんのは俺達だ。」


「シルバ……ウインドッ!!」


「幻覚の解き方はお前を消せば良いんだなセドナ?」


「あぁ。」


「ふん、容易くて助かる。」


殺されるーー


「《剣技》『覇者のーー」


魔力の高まりに肌がピリつき、冷や汗は滝の様に流れる。無理だ、この状況で奴等を撃破する事は到底叶わない……でも1人なら……


「僕がこんな所で命を落として良い訳無い!!やり直しだ!!時間かけてでもやり直しでやる!!」


時空を歪ませる。

後に僕の魔力全てを注ぎ込んで編み上げた、幻覚の扉が現界し時間をかけながらゆっくりと開かれる。決してコレは逃げでは無い、堅実な各個撃破の為の作戦だ。


「逃がすかよ。」


瀕死の相手を目の前にすれば詰めたくなるのは分かるが、それが命取りになるとは思って無かっただろう。


「なっーー」


歪みは僕とそれを追ってきた神格軍隊長を飲み込み、扉は誰にも触れられずガチャリと閉まる。



「どうだい?扉の奥の暗闇は?

此処は幻覚の世界、つまり僕の庭。毒の海、槍の降る空、燃える山、死なないゴーレムに月の神格者まで、どんな場所でもどんな人でも自分好みに創り変えられる。つまり此処での僕は、【最強】だ。

釣れたのが隊長ってのが惜しいが……まぁ、致し方無い、贅沢は言ってられないから。」


身体の傷は癒え、心を落ち着かせて口調を整える。


「皮肉にもお前の墓場になる所は此処だ、今の内に彩っておけ。」


「僕の胃の中でそんな大口叩いて良いのか?後で後悔するぞ。」


「刀匠の忘形剣、『エル・グラドラス発動』」


何処からとも無く殺意の風が舞い踊り始める。

焦ってるのか?いきなりウルトで決着を決めたいのか。何にせよ、この世界の僕には通用しない。脳内で土の壁を幾重にも重ね、それを四方に散らせて守らせる。

そして想像は現実になる。

強固な壁が死の風をシャットダウンし、僕に届く頃には切傷程度の殺傷力だ。


「確かに隊長を名乗るだけの事はあるけれど、ウルトでその程度なら知れてる!この世界では無と等しい!!!」


ぐらり。


「初動の風を防いだだけで喚くな自称天災、そんな暇があれば両手で押さえとけ、首が落ちてるぞ。」


訳が分からない。

首から上が無い自分の姿何て知らない。そうか僕は首を斬られてーー


※※※


ーー王都王宮前庭園ーー


「遅いのじゃ!」


頬を膨らませた和装美人の一喝。むーっと拗ねながら駆け寄って来る姿は何だか愛らしい。


「すいません師匠、コイツの所為で手間取っちゃって……」


「あ?お前の話が周りクドイだけだろ!」


「全部必要な会話だったろ!お前が余計な相槌と余計な情報を入れるから面倒になったんだ!」


「何だとぉ?この女たらしが!」


「何だよこのハゲ!」


「2人とも懲りないのう。もう良い歳なんじゃからもう少し大人になるのじゃ。」


「「師匠には入れたく無い!」」


「へ!?」


あ、なんか懐かしいな今の。


「……っまぁ当初の予定通り天災をダシに国王を口説けた。これだけで今回は十分かもな。」


天災に扮した魔格者を倒した後、俺達はその手柄を持って国王との謁見を求めた。難はあったものの上手く誤魔化し、今回の目標は達成出来た。


「あぁ……あんまり言いたくは無いが……その、なんだ、今回は助かったよシルバ。」


「礼なんてお前らしくも無ぇ。だが、自分の剣を忘れて、此度の戦いで実質何もしてないお前からしたら礼の1つも言いたくなるわなぁ。」


「やっぱ今の取消っ!礼なんて絶対言わない!!」


嫌味ったらしい奴だな、確かに何もしてないけど……


「そう言えばあの小娘は如何したのじゃ?」


「小娘って……シャルナの事か?」


「そうじゃ、彼奴は私の敵、常に位置を把握して置かなければセドナにもしもがあってからでは遅いからの。」


「もしもって何ですか……」


「勿論セドナが襲われるって意味じゃ!」


「聞かなければ良かったです師匠。」


「安心しろ、シャルナには上等と共に軍へ戻って貰った。随分駄々こねたが、セドナの邪魔になると言ったら潔く行ったよ。」


シャルナが渋る所が目に浮かぶ。けれども流石に隊長の言う事は聞いたみたいだ。


「んふっんふふふっ、漸くセドナを独り占め出来る時間が来た様じゃな……王都は良い、食べ物は美味しいし、月の都ならでは絶景も多い。そうして夜は2人きりで宿の一室を借りるのじゃ、え?何をするかじゃと?女の口から言わせるなんて……」


「妄想捗ってる所悪いが、セドナは今この瞬間に帰すぞ。」


「な、なんでじゃ!?」


「こいつには遊んで貰ってては困る。早く厄介な呪いを解いて尻尾も猫耳も無い【セドナ・フルムーン】の姿で国を護らせたい。」


そう言ってシルバは金の指輪を手渡してくる。俺はそれを頷きながら受け取る。ノアを待たせている以上、俺からもその方が嬉しい。次の国へ、次の神格者に。早く行かなければ目の前の2人に負担を掛け続ける事になる。


「半日!!半日ダメか!私だって毎日頑張って働いてるのじゃ!少しぐらいセドナと過ごす時間をくれても良いじゃろ!!」


「無茶言わないでくれ師匠、シャルナが戻って来てからだとまた面倒な事になる。」


「じゃが……」


「師匠……」


急にしおらしくなる師匠を何故か愛おしく感じる。俺は何も言わずにそっと彼女を抱きしめ、そして頭に手を乗せる。


「ふぇ!?」


「久しぶりに会えて良かったです。早く呪いを解いて戻って来ます、それまで国を任せても良いですか?頼っても良いですか?」


「…………んん……私は師匠じゃ、弟子は師に頼っても良いに決まっておる。」


「ありがとうございます師匠。」


「……ほら行けセドナ、セナちゃんによろしくな。」


「両方俺だバカ。」


シルバは軽く微笑んでそして手を挙げる。また暫しのお別れだ、金の指輪を撫でて魔法を発動させる。


「あんまり無茶するなよ、困ったら呼べ。」


「らしくない気遣いも時には良いなシルバ。」


「俺は神格軍隊長だぞ?気遣いなら人一倍出来る。」


次回、新キャラです。


???「やっと出番っスか!!やったぁー!!!」



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