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猫が美少女で実は俺?  作者: もこ
腐敗の森
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閑話〜ハリボテ〜

更新が遅いので、毎週土曜日に更新すると心に決めました。頑張ります!


「刀匠の忘形剣、『エル・グラドラス発動』」


ぐわんぐわんっと風がざわめいた刹那ーー殴られる様な吹抜けと切れるほど鋭い横風が、私の両の眼を閉じさせる。


「相変わらずはた迷惑なウルトじゃ。皆退け、此奴に斬られるぞ。」


私がコレを見るのは2回目だ、だから理解している。シルバ隊長所有の白銀の剣、エル・グラドラス。空間を揺らす程の轟音、地形を変える程の暴風、故にこう呼ばれる。


「風の咆哮……」


エル・グラドラスへ集まる魔力、隊長は相対する敵にまるで形無きものを見るような冷たい表情で剣を振るう。


「オラァァ!!」


死の風とでも言うべきか?

瞬きする度にゴーレムの姿は跡形も無く消え土に還る。その土すらも、風に弄ばれ、狂った様に宙を踊る。圧倒的力に初めて目にする者は、驚きを隠せないと同時に畏怖するのだ。


「成る程……矢張り……」


「はぁッ!!!」


「…………ッ!!?」


キィィンッーーー

突然の金属音、耳を叩く雷の音色。風の間をすり抜けて来た黒髪の青年は、その美しい剣で隊長と鍔迫り合いをしていた。


「……に、兄さん!?」


「どういうつもりだセドナ?」


風は止み、ゴーレム狩りの手は止まる。遅れを取り戻す様に次々と反応が起こる光景を見、根源から倒さなければならないと再確認する。


「シルバやめろ!!こいつらは敵じゃない!!」


「何を言う?これこそ天災、俺達が倒すべきモノだ。」


キィンーー

幾重にも重なる音は、風に反響して私の耳に残る。それよりもだ、何故兄さんが隊長に剣を向けるのだろうか?


「隊長!!兄さんの話に耳を傾けて下さい!!」


「シルバ!頼むから剣を下げてくれ!!」


「…………はァッ!」


私の声など隊長には届いておらず、風の牙は止まらない。混じり合う雷と風の攻防は、他を寄せ付けないレベルにまで達している。それでも私は決死の覚悟で2人の間に割って入る。


「止めて下さい!!」


「退けシャルナ。」


「退きません!!」


ギャイイイーーーンッーーー


「兄さん……な、何で!?刃を向ける相手は私達じゃ無い筈です!!」


「シャルナ退いてくれ!」


「何でッ!」


「……お前は特別セドナを好いてるからな、目が曇ってしまうかもしれない。」


「シルバ!頼むから剣を下げてくれ!!」


「同じ事しか言えねぇのか?ならこっちも言うが、そのシャトルーズ・ムーンを下げろ。」


「成る程!!これは一杯食わされたのう。」


神格者、メリナ・コアレスターは笑い、シルバ・ウィンドはつられて微笑む。バルドロイゼ・ロイヤルは眼を閉じ、ワナ・テンポは納得した表情で剣を仕舞い始める。


「シルバ!聞いてくれ!こいつらはーー」


「《剣技》『一刀一斬』」


「止めて下さい隊長ッ!!」


私の隙を突いたその一瞬、隊長の剣は黒髪の男を斬り落とす。


「何で!!何故兄さんをッ!!」


「落ち着いて下さい副隊長殿。」


バルドロイゼさんは私の手を取り、兄さんに駆け寄ろうとするその行動を阻止する。


「アレはセドナ様では御座いません、幻覚の類です。」


「…………!?」


「シャルナ、考えてみろ。セドナはバカだが、今回に限っては持ち場を離れる様な真似はしない。それにな、焦らず良く見てみろ、お前なら一目でこいつが偽物だって分かるだろ?」


横たわる兄さんに視線を向け、間違い探しの様に考える。そして電流が走り、隊長の言いたい事と行動の意味を理解する。

何て事だ、私は何て馬鹿なんだろうか。


「……!!兄さんは……シャトルーズ・ムーンを持って無いッ!!」


「そーゆーこった。」


「じゃあ……コレは……」


「……バー……き……くれ……」


「永遠に消えないゴーレム、コピーされたセドナの姿。わざわざ身体に鞭打ってウルトまで使ったんだ、覚悟しとけ馬鹿野郎。」


「@#&///@☆〒」


世界にねっとりとした声が響けば、空が崩れ始めるーー聞き取れなくても悪意がこもっているのは容易に感じ取れる。そして此処まで来てやっと私は理解した。

この世界は、【偽物】だと。


※※※


空中で放たれた二連の氷は、俺に撃たれたものでは無い。背後で唸りながら横になっている医療班の人間へ向けられた死の氷柱だ。


「セドナさん!!」


「大丈夫だッ!」


「これはお見事、ではこれは?《リング》『パラライズ』」


雷系統の魔法【パラライズ】、触れた相手を麻痺させ数秒間硬直させる魔法か。威力はほぼ無い、麻痺覚悟で、掻き消せば良いだけの話だが今回に限ってはその手は通じない。俺が数秒間動かないだけで、幻覚に魘され無防備な数十人の命が危うい。奴のいやらしい攻撃に唇を噛み締めながら、剣に雷を帯びさせる。


「《剣技》『ギガスパーク!!』


剣先から枝分かれした雷が、パラライズを打ち消す。


「この場面で剣技、魔力量は大丈夫ですか?」


「使わざる得ない攻撃をしといてその言い草は無いだろう……がっ!!」


不意を突いたと思ったが鼻先を掠める剣。俺の目の前に居る少年は、危ない危ないと余裕の表情で距離を置く。


「貴方が本気になれば、僕と同等ぐらいには戦えるでしょう。その後ろのゴミを犠牲にすれば良い話ですよ、何故捨てないのです?」


「護る事が俺の仕事だからさ。」


「眼を覚ますには自分で幻覚だと気付かなければならない、それにはどれだけの時間を要するでしょうね?」


少年は無邪気な声で笑い出し、その反動で落ちそうになったハットを左手で抑える。


「リール……どれくらいだ?」


「ん……まだっ……かかるわっ!」


俺の問い掛けに、後ろで倒れた人々を看病するリール・ニルバーナが苦しそうに返答する。彼女が手に持つ剣から柔らかな光が放たれ、光はリールの身体を伝って意識の無い軍兵に染み込んでいく。

【マクラマイヒメ】は数少ない治癒系のウルトだ、対象をオーバーヒールさせる事で精神にまで治癒の手を伸ばせる。


「成る程、成る程。僕の【灰の夢】がセドナ・フルムーンに効かなかったのは貴女の所為でしたか、ディアナ神格軍、治癒姫リール・ニルバーナ。魔力操作の苦手な小人族でありながら素晴らしい。」


「小人族だからって舐めてると痛い目に会うわよ!」


「それは楽しみです。」


少年は話しながらも攻撃の手を止めない、当たり前の様に眠りについている者を狙ったその攻撃を、持ち前のスピードを生かし跳ね返していく。


「流石に速いですね、目で追うのがやっとでーーツッ!!?」


少年の首元に一筋の切傷程度、踏み込みが浅い。危機を感じたのか、少年は咄嗟に無数の氷塊と炎玉を作り出し、なりふり構わず撃ち込んでくる。


「セドナ!」


「おっと、《剣技》『灰炎』」


少年は剣を振るう。

するとリールと俺を結ぶ位置に炎の壁が揺れ立ち、彼女の補助魔法を焼き飛ばしてしまう。コネクトを切られた、リールが見ている限り俺のHPは減らないから当然の判断だ。


「お前、何者だ?」


「僕は天災、そう聞かされて君達は此処に居る。違うと思うなら疑いなよ、考えなよ、この場でさえも僕の幻覚の一部かもしれないのだから」


「アンタの能力を使えば情報操作も簡単そうね、例えば自分が天災だと偽りの情報を流すことも出来る。」


「リール・ニルバーナ、君は少し黙ってくれないか?僕は自分のことを詮索されるのが大嫌いなんだ。」


揺れる炎が消え、地面に焼け跡だけが残る。散りゆく灰の雨の中、少年は苛立ちを隠せない様だ。

精神汚染系統のウルトは忌み嫌われ、発見された物は全て、ネプトゥヌス管轄のヘル・ディスデバに封印されてる。故に幻覚は彼自身の能力だと断言しても良い、そして天災は『人』では無い。人型の魔物の可能性は有るが、此処まで人に近しい意思を持つ事は無い筈だ。


「相当上位に位置する魔格者……お前、レメゲトンか?」


「…………あ?

僕がそんな無能集団に所属する訳無いだろ?群れを作る奴は弱い奴だ、僕は僕だけで十分過ぎる!!」


右方向へスライド、空中で捻って掻っ切る土塊。少年は、穏やかな口調から豹変し、歪んだ表情で魔法を繰り出し続ける。


「だから何時までそうしてんのさセドナ・フルムーン!!足手纏いは捨てて反撃しろ!!仲間を遠ざけ1人で踊れ!!」


「俺は神格者だ、護るのが仕事だって言ってんだろ。」


「もしかしてソレ、時間稼ぎか!?万が一にも援軍は来ない、お前の仲間には他の雑魚とは違い、より強力な幻覚を見せてるからな!!」


仲間というのは多分、師匠やシルバ、シャルナ含めた軍の上等兵などだろう。


「リール・ニルバーナ!!お前の行動も無意味だ!どうせそいつらは起き無いって!!」


「どういう事だ?」


「あはっ!!必死だね神格者!!良いよ!教えてやろう。僕の「灰の夢」は、此処が夢である事に気付く、もしくは僕を倒さない限り解けない!!

セドナ・フルムーンにした様に、掛かった数秒間ならそのウルトで解けるようだが、寝てる奴等は何分経った?もう起こせないな!」


「!!」


「驚く事は無い、けど聞いて良いかな?無意味な行動を続けていた気持ちはどう?リール・ニルバーナ。」


※※※


魔格スキル【アモンの意思】

灰を吸わせた相手を幻覚に貶める能力、このスキルがあれば僕は最強だった。

町の学び舎では僕は神童と呼ばれ、皆は将来神格軍隊長の座も夢で無いと口を揃えて言った。「頑張ります」と口ではそう答えたが、心はそこには無かった。生まれ落ちた時、僕は両親を無意識に殺した、【灰の夢】に陥り抜け出せなくなった両親は今も尚夢で彷徨っている。抜け殻と化した両親を診ていた町の医師は指輪の無駄遣いだと見捨てたが、僕はまだエサを与え続けている。母親が握りしめた刀、父親が翳した指輪、我が子が魔格スキルを持っていたら隠すか殺すかどちらかに動くのが定石、僕の親が前者に走ったまでだ。

【アモンの意思】はその強力さ故に保持者の身を成長させない。一生を子供の姿で終える事になるが、僕は構わない。神童と崇められた姿で世界を変える、壊す。


「やっぱり要らないなぁ……君ぃ、弱いしぃ。」


「が……あが……」


「【アモン】を手放すのは惜しいけどぉ、此処まで弱かったら要らないかぁ。」


「……こっちから……願い下げ……だ……」


「ん?さっきまでと言ってる事が違うねぇ、まぁ良いやぁ。君にチャンスをあげるよぉ。《リング》『HPポーション』」


「…………ッ………」


「どの国でも良いよぉ?神格軍を落として来てよぉ。」


この僕を拒んだ事、後悔するぞレメゲトン。月の神格軍を落とすまで後少しだ。


「無意味じゃないさ。」


目の前に立つ黒髪の男、セドナ・フルムーンが俺の問いかけに答える。


「……強がるか?見苦しいな神格者。」


「いや、強がりじゃない、リールが回復を試みてくれた事で俺がやっと動ける。」


「その返答は理解に苦しむね。」


「なら分かり易く言おうか?

得意げに情報を晒してくれて有難う。わざわざお前から解き方を教えて貰えて助かった。」


灰の雲の切れ間、月夜が照らすのただ1人の男は、自信ありげな笑みで眼を細めた。












シャルナ「兄さんの偽物!?」


偽セドナ「あぁ。」


シャルナ「…………私をナデナデしてみて下さい。」


偽セドナ「なでなで」


シャルナ「…………これは中々…………うん……貴方!神格軍に入る気は無いですか?」


シルバ「馬鹿かお前。」

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