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猫が美少女で実は俺?  作者: もこ
腐敗の森
48/53

閑話〜無論、作戦は作戦らしく無く〜

テンポ良く投稿……


「メリナ様ぁ?少しばかり兄さんと近くありませんか?恋仲でも無いのにその距離感は可笑しいと思うのですが。」


「シャルナこそ腕に抱きついたりして、まるで恋人の様じゃな。けれど所詮は妹。セドナと恋仲になる事は叶わないというのに!!」


俺の左腕と右腕にガッチリとしがみついた両者は、バチバチバチ……っと目線で火花を散らせる。


「私達に血の繋がりは有りません、なので愛し合うことになんの問題もないです。」


「残念じゃな!生憎私も血の繋がりが無いのじゃ!」


「得意げな所申しわけ無いが……師匠が血の繋がりを持たないって至極当然の事だよな。」


「シルバは黙るのじゃ!」


なんて不毛な会話だ……


「メリナ様は兄さんに何をしてあげられますか?私は何でもです。掃除、洗濯、食事、身の回りの事はそつなくこなしますし文句も言いません。兄さんが隣に居るだけで幸せですから!その代わり、兄さんが浮気なんてものをしたら……ね?兄さん。」


シャルナはニッコリと微笑み、強く腕にしがみつく。いや、別に彼女が力を入れ直した訳ではない、言動と笑わない眼光に圧倒された俺自身が押されているだけだ。


「聞く所に寄るとシャルナは真面目で仕事熱心な性格らしいのう。ならば私がシャルナに勝てる事は腕っ節の強さと大人の性的サービスじゃ♪」


「あっ!?ちょっ!」


耳にかかる甘い吐息と、柔らかい唇の感覚。艶やかな黒髪が俺の肩に掛かるまで、師匠はその美麗な顔を目前まで寄せてくる。


「んっ…………ちゅ。」


「なっ!!?」


虚を突く接吻に、俺は情けない声を上げてしまう。


「な、な、な……」


「何やってるんですかししょ……」


「なぁぁぁぁッ!!!兄さんから離れなさい!!このど変態!!」


憤怒のシャルナは、師匠と俺の間に無理矢理割り込み、そして吠える。


「に、兄さん!例え頬だとしても今のは規約に違反します!!私の頬に10回キスした後、指の1本は覚悟して下さい!!」


「いちいち怖いし!!それに規約って何!!?」


「ほら早くキスを!私の頬に優しくお願いします!」


「甘いのシャルナ、セドナは奥手故に自分から行かなければダメじゃ……この様に……んーちゅ♡」


「ぬぁぁぁぁあああっ!!!あの人殺します!!もう神格者とか兄さんの師匠とから関係ない!!」


「し、シャルナ?落ち着いて?」


「兄さんは何も分かってません!!私の方がどれだけ兄さんを愛しているかを!!」


ムギュッと柔らかい胸の感触が腕に……


「なぁ、セドナ、シャルナ、師匠。楽しくなってる所悪いんだが、話を進めて良いか?」


シルバが、呆れた顔で2人の茶番を止める。

ここは作戦会議の場、ワーワー喚いていた2人も頭の隅っこには残っていたらしく、口を閉じる。けれどその横顔からはまだ言い足りないという不満感が溢れて、それはジト目という形になって彼女達の表情を曇らせた。


「シャルナ、そこに簡単な図が有る。取ってくれ。」


シャルナは渋々俺の腕を離し、テント内の奥に置かれていた1枚の紙をシルバに手渡した。


「んじゃあ、耳を傾けろ。今から先の続きを話す。そろそろ良いぞ上等、入って来い。」


「失礼致します。」


「失礼するぜ隊長!」


「失礼します。」


※※※


「交戦地はこの先の草原で時刻は明日の夜だ。これは推測であって、【灰の狂い】が現れるタイミングは前後する。」


図に目を落とす。彼の指が、俺達が居るであろう場所から数センチ先へなぞる様に移動し、赤いバッテンが打たれた場所でピタリと止まった。


「各班の位置取りを確認してくれ。主軸にはシャルナ、医療には師匠、切り込みは俺が付く。各班の細かい動きは、指揮する上等から話す。セドナは自分が何処に付くか、考えておいてくれ。……ワナ、お前から話せ。」


シルバは説明の匙を、テントに入って来たばかりの3人の上等に振る。久々に顔を会わせるが、この3人は馴染みが有るのでやり易い。けれど相手が天災ともなれば俺自身が何処のロールへ応援に行くのか、直ぐに決める事は容易じゃ無い。


「最初は俺、ワナ・テンポが切り込み班を率いて圧を加えるぜ。その間に主軸は敵能力の分析、及びに魔法での援護を頼む、俺達だけで事足りれば1番だが……相手の能力が分からない以上、交戦は長引くと予想する。だからこそ、前線には軽度の傷で退がる様に指示してある。常に万全で戦える様に、医療班には頑張って貰いたい。」


【ワナ・テンポ】は、切り込み班の指揮を担当する上等で、フランクな話し方と豪快な戦い方が特徴である。正に切り込みの名を体で表した様な男だ。


「主軸班はワナ上等の合図で応戦させて頂きます。細かい事は皆に伝えて有り、僭越ながらここで一気に叩く算段です。」


ワナ上等の次に口を開いたの50代程の男性は、軍の主軸班を指揮する【バルドロイゼ・ロイヤル】だ。白髪隻眼の彼は、愛用する眼帯の位置を丁寧に直し、腰の剣に手を添えた。


「バルド。分かってると思うが、負傷者と入れ替わる様に前線を押し上げる事を意識しろ、魔力を勿体振るなよ。」


「承知。」


「勿体振らなくても良いけど、配分はしっかりしてよね!いつもいつも負傷者多数で、私達は大変なんだから!」


腕を組んで苦言を放つ彼女は、医療班を指揮する【リール・ニルバーナ】だ。彼女を一言で表すと……


「おい、チビ!前線にも出て無いのにお前が、隊長の言うことに文句付けんのかよ!」


「ムッキー!!!誰がチビよッ!!」


リールはワナの言葉に対し、ピョンピョンと跳ねながら怒り出す。その光景を目にしたシルバは、また始まったか……といった素振りで頭を抱える。


「ワナさん。リーちゃんは小人族なんだから小さくて当たり前ですよ。それに彼女の治癒能力が無ければ私達は戦い続ける事も出来ないでしょう?」


「シャルちゃん良い事言った!!ワナは私達へ感謝の念が足りないわ!どれだけ仕事をしてるか分かってないんだから!」


「仕事ねぇ……所詮負傷者の治癒だけだろう?」


「なんっっも分かって無い!!今回だって私率いる医療班は、見通しの良い崖上に陣取って戦況を読むのよ!!」


「崖上なんかに居たら、俺達の治療が遅れるじゃねーか!!」


「少し遅かったとしても攻撃の対象になり辛い場所に居た方が良いに決まってるでしょ!!私達が死んだら誰が貴方達を治すのよっ!!そもそも治療が必要無い位上手く立ち回りなさいよ!!このぽんこつ!!」


「なんだと!?」


「何よっ!?」


「……ゴホンッ!!」


バチバチッと火花散らせる2人の間に差す、ワザとらしい程の咳払い。バルドロイゼ・ロイヤルは鋭い眼光で2人の口を閉じさせる。


「私達は戦いの中で命をやり取りをしている。天秤に乗せた命の重さ、君はまだ理解が足りないのでは無いだろうか……ワナ上等。」


「…………!!」


御意見番のバルドロイゼさんに一喝を入れられたワナは、あからさまに元気を無くし、相反するようにリールは小さくガッツポーズをする。


「あぁ、勿論君も理解が足りない。どんな命令であれ、どんな状況であれ、我々上等風情が隊長殿に苦言を呈する事は許されない。」


そしてそのガッツポーズを見れたのは、ほんの数秒だった……


「……場を整えてくれたのは嬉しいが、余り2人の気力を削ぎすぎるなよ。」


「申し訳有りません。」


何とも感情の起伏が激しい作戦会議だが、これが普段のディアナ軍で簡単に変わる事は無い。


「すぴーすぴー……そんなに食べられないのじゃあ……」


師匠は興味の無いことにはトコトン興味を示さない、矢張り今回も寝息を立てて横になっていた。……こんななりだが彼女は強い、医療班に師匠が付いた時点で、俺は安心して他に回るべきだ。それはシルバの居る切り込み班も然り。


「バルドロイゼさん、仲裁有難う御座います。」


「仲裁……いえ、そんな高尚なモノでは有りません。ただ私が言いたかった事を言ったまでですよ、副隊長殿。」


では主軸班は?シャルナにバルドロイゼさんが付くこの班は、1番強者が集まっている。……こうなるとアレだな……そもそも俺が助っ人として要るのかどうか不安になってくるな。


「ふむ、話は一転しますがセドナ殿、此度の戦に愛剣はお使いにならないのですか?」


「ん?」


そんな筈は無い。俺は常にシャトルーズ・ムーンと共に行動している、使わない事なんて……


「…………え!!?無い!!」


え?何で!?何で無いの!?


「おいクソ女たらし。まさか先の宿に忘れて来たとかそんなクソみたいな理由かますんじゃねーだろうな?」


ほぼ確定で坊主頭の言う通りだ。多分……うん……忘れてきた。


「も、元はと言えばお前が急に連れ出すから悪いんだろ!!もうちょっと時間くれよ!準備って滅茶苦茶大事なんだぞ!!」


「すいません兄さん……私が確認を怠ったばっかりに……」


愛剣を忘れ、妹にフォローされる神格者。威厳もクソも無くて恥ずかしくて泣きそうだが、俺は自信を持ってシルバに責任転嫁する。自分が劣勢な時ほど気丈な振る舞いをする……これが生きる知恵というものだ。


「チッ……まぁ良い、どうせお前のウルトは発動条件が厳しすぎるからな。

……おい、ワナ。余ってる剣を後でこいつに渡してやれ、有る程度強度の高いモノだ。」


「了解っ。」


「師匠は積極的に働かないから医療班にしたんだがな……こうなった以上、主軸に回させて貰う。良いか?」


「……むにゃ。」


「良し。」


タイミング良くコクリッと頭を下げる師匠。そこに意識は無いが、シルバは了承を得たと思ったらしい。そんなんで良いのか師匠、適当に扱われてますよ!!


「つーことで、セドナ。お前は医療班だ。」


……戦力外通告?


※※※


「隊長殿。」


皆が居なくなり閑散としたこの場に響いた渋い声。眼帯の男、バルドロイゼは主軸を任せた上等の1人だ。


「何だ。」


歳の差は明確だ、けれど敬語は使わない。それは俺の性格上、敬語を話すのが苦手というだけでなく、彼自身、敬語を使われる事を頑なに拒むのだ。

年齢など関係無く等級を重んじる。それが軍兵バルドロイゼの礼法だった。


「問いを1つ、宜しいですか。」


「何故このタイミングで天災を討ちに行くのか……か?」


「その通りで御座います。」


天災を討ち取るには何ヶ月も前から準備をし、緻密な作戦を練ってから交戦するのが良しとされている。実際に老龍を打ち取ったミネルヴァ軍は、我が国からも有用な指輪を買い取っていた。


「数日前に急遽決まった作戦に、軍の御意見番も不安か?」


「隊長殿の決断に文句は言いません。しかし、欲を言うならば理由を頂きたい。」


「天災を倒した。その事実が必要だからだ。」


「…………。」


バルドロイゼは何かを悟った様にゆるりと眼を閉じ、そして踵を返す。


「突然のご無礼に謝罪を。」


「軍兵が平和を守ったと。そう証明するには何が必要だ?」


俺は金指輪を見つめながらそう呟く。


「…………それは難しい問いです。頭の悪い私には到底分かりません。」


「馬鹿言え、お前が俺に教えてくれた言葉だろう?」


……相手の首を獲る、答えはただそれだけだ。


「御意見番。」


「隊長殿、私は御意見番では有りません。

御意見番とは、豊かな経験と知識とを持ち、誰に対しても遠慮なく意見を言う人物の事。貴方に敗れ、我が片眼を無くした時から忠誠を誓った。私が反論をする事は、これからも到底無いでしょう。」


彼はそう言い残しこの場を後にする。


「根っからの軍人め。」


バルドロイゼ・ロイヤルは、ディアナ軍隊長の座を巡って争った男だ。彼の性格から恨みを持っているということでは無いのだが、絶対的忠誠は絶対的信頼とイコールで無い。きっと彼は、俺が間違っていても背を押し続けるだろう。そして、俺に対して間違っていると叱咤し、正しく説くことも無い。


「詳しく教えてもよかろうに、国王を説き伏せる為の切り札じゃと。」


「師匠……起きてたのか。」


むくりと起き上がる月華美人。昔から変わらない艶やかな黒髪と端麗な姿に、時折驚かされる。


「全く持って弟弟子おとうとでし思いの奴じゃ、見た目にそぐわぬ。」


「……うるせぇよ。」


俺は師匠にそう言うと、彼女はけらけらと笑い出す。


「アイツは俺が見ててやんねぇと危なっかしい。必死こいて神格軍隊長になったのもお前ら、神格者を助けてやる為だ。」


「んなこと思ってもねぇ。」


「ふふっ。そうかの、そうかの。何にせよ張り詰めるのは良く無い。お前は隊長である前に私の弟子じゃからな。」


「たまには師匠らしい事をしてから言ってくれ。そんなんじゃセドナは振り向かねぇぞ。」


「な、なんじゃとっ!?」


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