隊長の日常と忘形剣
遅くなって申し訳ございません、やっと新章突入です!
「ーー神格者様の御活躍によって、数年前より獣人族、そして魔族への差別意識は弱まってきております。
しかしながら、魔族には人間を敵対視する傾向があり、魔格者側へ……具体的にはレメゲトンに関わろうとする人物が増えてきていると。
また、シンボルという概念が何らかの動物を象っている以上、その動物に半身を捧げている獣人族こそ崇拝すべき存在なのでは?との意見もあるようです。この様な観点から、種族間の溝を完全に埋める事は困難であるとーー」
「チッ……我々人間に飼われていた獣共め、少しばかり自由にさせたらつけ上がり寄って。」
1人の男の口から紡がれる明らかな差別の思想。騒めく会議の席。それでも大多数を占める貴族の中に、面と向かって叱咤する者は居ない。
その様子を見かねた国王が自ら口を開く。
「メフィド卿、それは少々不適切では。」
「ですがエルドレッド国王、獣人族、魔族などといった輩は人では無いでしょうに。
特に魔族などはどうでしょう?
最早、人の形をした別物、魔物の方が近しい。」
「おいメフィド卿とやら。少し口を慎め。ここには獣人族も魔族も居るのだぞ。」
「これはこれは神格者様、誠に申し訳御座いません。そう言えば、貴方は竜族の血が混じっていましたね……あぁ、大丈夫ですよメリナ様。
魔族と人間のハーフは珍しい、それにその美貌だ。神格者でなければウチの使用人にでもして差し上げたのに残念だ。」
会議の場に響く1人の笑い声。
メフィド卿は、人の上に立つべき人間では無い。しかしその卑劣な性格が功を成し、周りを蹴落とす形で上へと登ってきてしまったのだ。
「言わせておけばメフィド卿ッ!!」
「やめるのじゃアユモセ。」
黒髪和服の女性、メリナ・コアレスターが、怒りを露わにする隣の男性を止める。
「あ、そうそう……話は変わりますがーー
聞くところには我が国の神格者、セドナ様は今現在不在との事。
それは一体何故ですか?
猫じゃ無いんだから理由も無くフラフラして貰っては困りますなぁ。」
ペラペラとメフィド卿の口は止まらない。
「セドナには少しばかり休暇を与えたのじゃ。
毎日の戦闘に山積みの問題に心が疲れておったのでな。」
「ふん、いささか貧弱なのでは?」
「此方も努力はしておるのじゃが…………なんせリング・スパーキー地区からの文書が多くての。国全体を駆け回る神格者を独り占めじゃ、あそこの統治者は何をしておるのやら。」
「リング・スパーキーだと?…………私の統治する地区だと分かって言っているのか?」
「おぉメフィド卿、其方の地区か。全く私とした事が……全く無知とは罪じゃな、コレでは使用人すらマトモに務まらないの、はははっ。」
「貴様!」
図にのるな三流貴族、誰に助けられて治安を維持出来ているかもう1度考え直せ。」
「…………ッ!!」
「2人共やめんか、ここで争っても仕方無い。」
ヒートアップする2人を宥める男。腐っても王か、要所は抑えてくれている、そんならわざわざ俺が出しゃばることも無いな。
「しかし……セドナには1度顔を見せて欲しいものだなメリナよ。
彼は神格者である以上の存在だ、国民も定期的に姿を見なければ不安でならないだろう。」
「ふん。国王の頼みなら仕方ない。」
「…………はぁ。何かと問題は山積みだ、出来るだけ厄介事は少なくしてくれよメリナ。
……彼を出来るだけ早く連れて来なさい。」
溜息を吐きながら国王は木槌でテーブルを叩く。
この行為は会議解散の意。
渇いた音に反応し、集まった国のお偉いさんがバラバラと部屋を後にする。集まりは悪い癖に解散はシュビータイガーの様に速い奴らだ。
「…………。」
俺も戻らなきゃな。
けれど………今外に出ると上辺が大好きな連中に捕まり、中身の無い会話をさせられるか。
※※※
「なんじゃ!!あやつ!無性に腹がたつ!!」
「僕もですよ!!ぶん殴ってやりたかったです!!」
「たかが戦闘経験も無い貴族、私が本気を出せばチョチョイのチョイじゃ!!」
俺の座っていた席の反対。
わちゃわちゃと不毛な会話を繰り広げるこの2人が、我が国の神格者様と仲介者だ。
常に本当に大丈夫なのだろうかと心配になる。
俺は席を立ち上がり、その2人の元へと近寄る。
既に会議の場は閑散としており、出しっ放しの椅子が目に付く。まったくマナーもへったくれも無ぇな。
「……貴族も強気なんだよ。
なんせこの国は世代交代の時期だ、神格軍隊長と副隊長、そんでもって神格者まで最年少と来たもんだ。歳下相手なら威張れるもんな。」
「その坊主頭……シルバか。」
「頭見て判断すんな。」
俺に気付いた黒髪は不機嫌そうにこちらを見、緑髪はペコリと挨拶をする。
いつもならここにもう1人、憎たらしい黒髪が居るのだがな。
「それにしても……久しぶりにヒヤヒヤしたよ師匠。」
「もっとコテンパンにしてやっても良かったのじゃがなっ!!」
シュッシュッっと彼女は目の前にパンチを繰り出す。その仕草がコミカルで何だか面白い。
「……それじゃ、あの馬鹿が可哀想ってもんだ。セドナが神格者に変わってからというもの、貴族達と上手くやってたからな、それを無下にすんのは良くねぇだろ。
っまぁ、貴族の嫌味ったらしい言葉なぞ、飄々と聞き流して相手にもして無かったけどな。」
「私はセドナ程器用じゃ無い、言いたい事は言い放つ主義じゃ!知っておるじゃろう?
それに……後から弱みに付け込み、完膚なきまで叩き潰すあやつより幾分かマシじゃ。」
「そんな事してたのかあいつ………。
俺が兄弟子で良かったよ、弟分なら何やらされてたか…………。」
セドナとは昔からの馴染み、同じ師を持つ兄弟みたいなもんだが……まだまだ性格は読みきれてないみたいだ。
「ところで、先の話、1度セドナを連れ戻すって事になってるが………指輪はあんのか?」
「そこで取引じゃ、移動用金指輪をくれ。」
移動手段の乏しいこの世界で、金指輪クラスのソレおもなると相当高価なのだ。
簡単に、それでいて躊躇い無く要求するなよ。
「師匠は元とは言え神格者だろ、金ならある筈だ。けれどそれを言うって事は……昔みたいに仕事の報酬を必要最低限しか受け取ってないのか?」
「今の私は昔より尖っておらん……報酬はしっかり貰う方針に変えたのじゃ!けれど………けれどアユモセが!!」
「師匠……お弟子さんの前で見苦しいですよ。神格者はもっと高貴であるべきです。」
「うぐ……。」
「ウチの神格者様の人気の理由を教えてやろうかアユモセ、それは身を粉にして働く所だよ。自国は勿論、他国民にまで好かれているのはその心意気が大きい……って事で師匠が死なない程度に激務を与えてくれ。」
セドナの容姿も大きいけどな、無性に腹立つから別に言わなくてもいい事か。
「はい。それは重々承知しております。やはり神格軍隊長は話が分かる常識人だ。」
「はぁー!?鬼か?お主ら鬼なのか!?
何で私の周り敵ばっかなんじゃ!?」
半泣きになる師匠、昔から精神年齢が幼くて笑ってしまう。
「泣くなよ師匠、ほらココに金指輪はある。んで?俺のメリットは?」
ここには居ないセドナを呼ぶには高価な移動用金指輪が必要なのは間違い無い。そしてあいつを元の場所まで返すのにもう1つ要る。これは相当な見返りが必要だ。
「師匠だから融通せいって言っても通用しないのは分かっとるのじゃ…………この部屋には私達3人しか居ない、ならば秘密が漏れる心配も無い。」
「つまり?」
「…………セナと1日デート券でどうじゃ?」
「お師匠……何を言って……そんなので隊長が……」
「よしッ乗ったぁぁ!!!」
「って!えええええええ!?
た、隊長?セナさんはセドナさんであって、男ですよ?」
「あぁ、理解してる。
けれどアユモセ、あんな可憐な女性は他にいるものか!」
セドナが呪いを受け、師匠と相談に来たあの夜を……俺は忘れれない。
それは雷に撃たれた様な衝撃だったーー
麗しい声も絵画の様な容姿も、中身がセドナだと言う事を差し引いても……セナちゃんの姿に惚れた。
「私の愛弟子2人が神格者と神格軍隊長となり、そして恋仲へ。うーむ感慨深い。
勿論セドナはやらんぞ?セナはくれてやる。」
「言っとくが!!!
俺はセナちゃんを恋愛対象と見てねぇ、出来れば妹、いや、娘。そう娘だな!!娘にして存分に甘やかせたいんだ!!」
「急に貴方が師匠の弟子である理由が分かった気がします!
先程僕は貴方を、話が分かる常識人と言いました!!取り消します!!」
「言っとくがセドナとセナちゃんは別物だからな?あいつが男の姿だったらいつも通り接する、むしろ殴る。」
「振り幅が凄い!?
ってまぁ……隊長とセドナさんがいちゃいちゃしてたら、幾らセドナさんを敬愛する僕でも引く自信がありますからね。」
「安心しろアユモセ、私もじゃ。」
「安心しろ俺もだ。」
セドナが呪いを受けたあの日、信用したのは今の3人だけだ。
用心深い?いや大正解だ。
この国の上には信用出来ない輩、信用してはいけない輩が多い。弱体化がバレたら弱みに付け込んで来るに違いない。
けどよ……正直笑っちまったさ。
いきなり黒猫が助けてくれって泣きついてきたら誰だって笑うだろう?
「そいやーウチの新しい副隊長だが、セドナの妹らしいぞ。」
「何!?」
「いや、見た目は完全に似てねぇんだが、何せ血の繋がってない兄妹らしい。似てなくて当然だ。」
「妹……妹……うむ!!!
今から挨拶に行く、いずれ私の妹にもなる女性じゃー!!」
「あー……今あいつ居ない。
セドナを探す為に有給使って旅に出た。」
シャルナは馬車馬の様に働き、数人で半年かかる仕事を1人で終わらせた。俺には考えられない。
「あいつ、出来が良いのは嬉しいがセドナ依存が激しいな。
まぁ実の兄に会いたくて神格軍副隊長まで登り詰めて、漸くってとこで当の本人は今旅に出てます。だもんなぁ、意地になるのも分かる。
しかしここに連れて来るなら、あいつも呼んでやった方が良いかも。」
「それって危険じゃないんですか?」
「確かに1人で行かせたのは危ないかも知れねぇが、隊長まで一緒に遊んでたらそれこそ終わりだろ?それにあいつは【刀匠の忘形剣】通称ウルトを持ってる。簡単には倒れねぇさ。」
【刀匠の忘形剣】過去に行われた神魔戦争の遺物だ。このレベル差をモノともしない強力な剣は、各国のダンジョンやら要人が保管しているらしい。
彼女がどこで手に入れたかは知らないが、明らかに副隊長格まで押し上げた要因の1つだろう。
「セドナ依存が激しい…………!?」
「お?冒頭部分しか聞いてねぇなコレは。」
「お師匠みたいな感じですか?シルバさん。」
師匠は雷に打たれた様な顔をし、アユモセは首をかしげて問いかけてくる。
「まぁそんな感じだ、兄妹愛って凄いな。俺も早くセナちゃんを妹にしたい。」
「アユモセ……これはピンチじゃ。
セドナを……私のセドナがポッと出の妹に取られてしまう!!」
「元よりお師匠のモノでは無いですけどね。」
「正論、正論っと…………お?」
服のポケットに入れていた通信用の指輪が着信アリ。
あまり好きじゃ無いので普段は持ち歩いていないのだが、副隊長が不在の為今だけ渋々持ち歩いている。
「はい。どうした?」
「ーーあ!隊長が珍しく出ました!ーー
ーーリング・スパーキーでレメゲトンの一味を確保。周辺にアジトがあると吐かせましたが、場所まではーー」
「ん、すぐ向かう。」
通話を終わらせ、モノイレロから出した隊長羽織に袖を通す。
「うん。中々様になっとる。」
「コレは軍の誇りだからな。
師匠もセドナも神格者の羽織、ちゃんと着なきゃダメだぜ。」
リング・スパーキーか、まぁ20分だな。
「嫌じゃ。」
「あぁ知ってたよ………移動用金指輪、手に入ったら連絡する。」
※※※
【アルカナ国領ダイヤモンドクラリー ミネルヴァ本軍】
本日も晴天なり、威圧する様に日の光を反射させる軍の城。私が隊長に就任する前から外見は全く変わらない。
「隊長の帰還だ!扉を開けろ!」
ギギギッー!!
耳障りな轟音と共に鉄城門が開くと、ズラリと並んだ軍兵が敬礼をする。
私はソレに目もくれず、城へと足を踏み入れた。
「皆に大義であったと伝えろ。」
「はっ!」
ゾロゾロと私に続く兵士は老龍討伐を共にした者だ。心身ともに疲れきっているに違いない。迅速に解散させるのは我ながら良い判断だな。
「…………。」
カツカツと長い廊下に響く自分の足音。
……内装はお世辞にも豪華とは言えない。
だがここは神格軍の城、煌びやかさなど不必要だろう。まぁ唯一の煌びやかさといえばこの真っ赤なカーペット、隊長室へと続くこの道は、レッドロードなどと呼ばれている。
「隊長!西の老龍討伐お疲れ様です!」
「うむ。負傷者も多い。
蓄えておいた治癒魔法を使えるだけ使え。」
「捕らえたレメゲトン数名は如何致しますか?」
「ハイネ様からの指示を待つ。
個人的には、此処で情報を得たい所だが……その前に北の監獄行きは免れぬだろう。
それと上等兵、アルカナタウンに何名か送れ。
ハイネ様とバリトン殿が居るとは言え、警備の手を緩ますのは怠惰と言うものだ。」
「はっ!」
「予定は?」
「冒険者では手に負えない魔物討伐が数件ありましたが、既に仲介者様が解決済みです。
ですので隊長には新兵へ一喝を。」
「流石はバリトン殿だな。
新兵は数時間後、隊長室へ呼べ。」
「はっ。」
「隊長!貴族から婚約の申し込みが数件ございまーー」
「その手の話をココに持ち込むなと言え、それでも喰い下がらないなら私を倒せたなら受けてやると伝えろ。」
ガチャリと我が自室の扉を開ける。
そこには茶を嗜む若者が、優雅な一時を楽しんでいた。途端に腸が煮え繰り返る感覚を覚える、いや、思い出す。
「パッ……パトリオォォォォォル!!!」
「うわぁぁぁッ熱ッ!!!
いきなり大きな声を出さないでよ!!
ビックリするじゃんか……挨拶しなかったから怒ってるの?はいはい、隊長おかえり。」
「何がおかえりだ!優雅に茶など楽しみおって!しかもソレ……私が楽しみにしていたヤツじゃないか!!」
「そんなカッカしないでよ、折角副隊長が久しぶりに帰って来たんだよ?むしろ優しく抱きしめ……っと!危ない!!
急に殴りかかるなんてらしくもない!」
「お前はっ!!
……っ…………はぁ……確かに私らしくなかった。」
「うん。」
熱くなれば成る程コイツの思い通りだ。少し落ち着いて諭す事にしよう。
「なぁパト?
最近私は眠りについていない、何故か分かるか?」
「恋煩い?」
ブチッ
「んな訳あるか阿保!!貴様の所為だ貴様の!!気付けば職務をほっぽり出して居なくなる!!お前の穴を埋めているのは私だぞ!!
何処に行ってたんだ!!」
「隊長が居ない隙を狙う輩の殲滅と、お小遣い稼ぎに行ったアルカナタウンでドラゴン退治。」
「…………なっ!!」
「行く先々で仕事してるから良いでしょ?」
なんだかんだ功績を残して帰ってくる所に無性に腹が立つ。
「そろそろ空気を読めパト!
もしお前が老龍討伐の方に加担していたら、負傷者をもう少し減らせただろうに!
幾ら功績を挙げようといささか自分勝手過ぎる。」
「俺が老龍討伐の方に行かなかったからこそ助けれた命もあるよね。いつも天秤にかけて、重きを取ってるつもりさ。
しかも……空気って読むもんじゃなくて吸うもんだよ隊長。」
「呼吸するだけでは生きてるとは言わない。
結果さえ残せば、何しても良いと本気で思うのか?」
「まぁ少しは思うね、皆とは違う方法ではあるけど助けている訳だし。俺が居なかったらもっと違う形でこの国はピンチに陥るよ。」
「謙虚こそ我が身を守る盾。
自分を煽てるな、常に高みを目指せ。
正攻法で国を守護する私達が居るからこそ、裏を突くお前のやり方がハマっているに過ぎない。」
「謙虚になれって言う言葉、最高に謙虚じゃないよね隊長。」
「……良くもペラペラと思いつくもんだ。
そうやって何時も私を言いくるめて居なくなる、今回は引っかからんぞ!」
パトリオールは手に持っていたコップを机に置き、神妙な面持ちでこちらを見つめる。
「俺が老龍討伐に参加しなかったのは、隊長を信じているからなんだよ。
誰よりもその力を信じて、信頼しているから任せたんだ。」
「……!!?」
「隊長いつもありがとう。
隊長のお陰で俺は自由に人助け出来る。隊長には感謝と尊敬の念しか無いよ。」
「パト……お前……。」
「そうなるとさ。結局俺の功績も、元を正せば隊長のモノって事なのかな……。」
「……いや、違うぞパト。
お前は良くやっている、お前自身の功績だ。」
「そう……なのかな?」
「あぁ、胸を張って良いぞ!」
「じゃあ隊長を信頼して、今回も任せて良いかな?」
「此処は私に任せて、何処へでも行ってこい!!」
「ありがとう隊長♪
次は何処行こうか……月の都、愛の森……」
彼はピョンっと椅子から飛び降りて、そそくさと荷物を纏め始める。
……いつの間にか背が大きく見えるな。
ついこないだまで新兵だったとは思えない、コレは私もうかうかしてられない。
「じゃあ行ってきます!」
「あぁ、今回も任せたぞ!」
完全に部屋を出て行ったパトと入れ替わる様に女性の二等兵が入室して来る。
その怪訝そうな顔つきから彼女が何を言いたいか容易に察することが出来た。
「またパトリオール副隊長を逃したんですか隊長……副隊長の話術にハマり過ぎですよ。何言われたか分かりませんが、結果を見てください。また隊長は1人で軍の指揮を執ることになってます。」
「…………はっ!?」
言われて見ればそうだ、今回もまんまとしてやられた。沸々と湧き上がる怒りをぶつける相手は、既にこの部屋には居ない。
残されたのは使い捨てられた茶葉と、毎回置いていくパトリオールのお土産だ。
「パトリオォォォォーーール!!!!」
※※※
「あれ?これから副隊長お仕事ですか?」
「うん、パトリオールはパトロール、なんちゃって。」
「はぁ……また隊長に怒られますよ?」
「良いの良いの。お土産置いといたし。」
副隊長のお土産っていつもセンスが無いんだよなぁ……
「今回はきっと隊長も大はしゃぎさ。」
「ーーーというのが私の信念だ。
新兵とてこれだけは守って貰うからな!」
「「はい!!」」
「なぁ、隊長の付けているアレ……なんだ?」
「副隊長からのお土産らしいぞ、サングラスってヤツらしい。」
「なんかその……あんまり似合って無いな。」
「馬鹿!聞こえるぞ!」




