小競り合いは飄々と
小さなこだわり選手権。
ドリンクバーでジュースを飲むとき、水、原液、水、原液の順に出ますが、最後に原液が注がれたタイミングでボタンを離す。そうする事で少しばかりジュースが濃くなる感じがします。
友人に教えると目を閉じて優しく微笑んでました。
突然ですが、twitter始めようと思います。
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アルカナ図書館最上階。ギューンと伸びた廊下を遠目から見ると、厳かに構えられた扉が最奥に待つ。その外見から、否が応でもボスは此処に居ると教えてくれる。
さぞかし厳重警備なのだろう……と思いきや、警備員は愚か、扉は開けっぱなしにされていた。
「入って……良いよな?」
声に出してみるだけ。許可なんて要らないし、許可無くても入る。だってこの図書館に呪いを解くキーがあるかも知れないから。
俺とノアは最奥の部屋に足を踏み入れる。
目の前に広がるのは幾千、いやもっとか?とにかく膨大な量の本棚がズラッと並べられていた。仕舞われている本は、それはもうジャンルがバラバラ。
重要そうな文献から、子供向けの童謡まで。
そして全く読めない文字で記された本。
この世界のありとあらゆる言語は読める筈だが……。
「下階の本に比べて、後世に残しておくべき本をこの部屋に置いてるようね。ほら。」
ノア手に取った本には「絶滅危惧本第一級 特別貸出し枠」と印が押されていた。
「おお。この本……相当希少価値が高いみたいだな……………ッ!!?」
俺は自分の言葉を放ち終わる前に、思いっきり横へと転がる。
振り向くと同時に、いく層に重なった風が2秒前居た場所を切り刻む。床、本棚はズタボロ、しかし本そのものは無傷で、宙にふわふわと浮いていた。
「へぇ……流石特別保護、今の攻撃で塵になったりしないのか。」
俺は皮肉をたっぷり込め、立ち上がりながらそう呟いた。腕の中にはノア、咄嗟に抱き寄せ助けたのだ。因みに彼女は顔を赤らめて、もじもじしている。
「当然だ、最高レベルの防御用リングが使用されている。私の魔法でさえ効かない程のな。
それよりも貴様ら、何故ここに入れた?」
ビュンビュンと風を切る音は、彼の掌から聞こえる。俺の目の前に現れた大柄な男性はそう言いながら、白髪の髪を掻き上げ、顎を上げる。
「侵入も何も開いてたぜこの部屋。それで俺らを咎めようってんならオタクは相当タチが悪い。」
「開いてた……それは可笑しいモノだな、神格者様が、 許可を下ろした人物のみ開いて見えるのだが?」
「いつ得たかはしんねーけど……俺達が許可を貰ってたとは考えられないのおっさん?」
いきなり攻撃とか客人に失礼すぎ。図書館にはもっと物静かで、人を見てから論理的に行動する奴が居ると思ってたんだが……どうやら面倒な人に捕まったらしい。
「入ってきて、いきなりその本を手に取ったら……誰もが良い顔をせんだろう?」
彼が指差すは、俺とノアの頭上にふわふわと浮かんでいる本。先ほどノアが手に取った物だ。
《高貴なる闇の呪術指輪》
金の刺繍で本の表紙を飾るタイトル。
あぁ、なるほど。
「え!?違うわ!これはたまたま手に取っただけでーー」
「貴様らが何を考えていて、何者かはどうでも良い。私は用心深くてな、1度疑ってしまうともう信じられん。よって貴様らはここから立ち去れ!」
立ち去れ?冗談はよしてくれ、俺は神格者だ。そもそも見てわかんねーとは、なんて世間知らずの老人だ。
「要するに用があるなら、アンタを倒してからって事だろ?」
「物わかりの早い奴は……嫌いじゃないッ!!」
男は腰の剣を抜き、猛ダッシュで斬りかかりに来る。ノアが剣に手を伸ばそうとするのを見て俺は待った合図を出す。
「ここは俺で十分だノア。」
彼女はコクリと頷いて少し後ろに距離を置く。
セナとは違う、神格者であるセドナを信じてくれた行動だ。
「はぁぁ!!」
俺目掛けて振り下ろされた剣をクルリと避け、ステップを踏むように続く連撃もかわしていく。
「なんと、避けるのは上手いようだ。」
「アンタじゃ俺に剣も取らせられない。ほら、観念して俺らの話に耳を傾けろよ。」
右へ左へ上へ下へ。流れる剣撃を文字通り流して。俺のステータスで1番高いのは『スピード』、並みの人間に目視させない程速度を出す事も可能だ。
「……ッ!!」
俺は振り下ろされる腕にタイミングを合わせ、蹴りを入れる。カランカランッと男の手を離れ床を這う剣、痙攣する片手を抑えながら指輪をなぞる。
「《リング》『風流の斬撃!!』」
彼の指輪から魔法が起動する。空気がざわつき、殺意の込められた風が荒れ狂うが、先程と同じ様に避ければ問題無い……と思ったが。
「…………なるほど、二股の風ね。」
攻撃を喰らった横わき腹を抑え、敵を分析する。あの風は放った後、分裂する。
軽く避けるだけでは、魔法の攻撃範囲内らしい。
「まだまだいくぞ。貴様の首を貰うまでな!」
風量が上がり鋭さも増す。軽く避ける事が有効で無いのならば対処を変えれば良い。
「ほら!剣を抜け!出し惜しみして負けるなんてくだらない事してくれるなよ?」
「剣は抜かない。避けれないなんて誰が言った?もっと速く動けば良いだけだ。」
「…………なっ!?」
目で追えるか、無理だろう?
風を避けつつ四方八方に飛び、狼狽える相手の背後に回り囁く。
「諦めな。」
「……くッ!!」
「アンタじゃ俺についてこれないぜ、ここらでやめとけ。そしたら誰も傷つかず、指輪も無駄遣いせずに済むだろ?」
「…………。」
男は黙りこくってその場から動かない。しかし口元が笑っている事を俺は見逃さなかった。
「何が可笑しい。」
「…………感じないか?この部屋が狭くなっていると。」
「!!」
本棚は男の呼吸と呼応する様に、唸りを上げて動いている。まるでバリケードを作る様に。俺が動き回れない様に本棚で部屋を縮めたのか。
「そら、お前は終わりだ。足元を見ろ。風の鎖をその位置に仕込んでおいたのさ、動けまい。」
男はモノイレロから、金の指輪を取り出し指にはめる。
「いくら速かろうが動けなければ意味も無い。
《リング》『風神の吐息』」
本がバタバタと踊り、風の荒さを際立たせる。
流石金指輪、ヒリつく様な魔力だ。
「終わりだ。ハァッ!!」
「セドナ危ない!!」
まるで小さな台風。
風の塊が空気を切り裂き、容赦無く俺を襲った。
※ ※ ※
埃と塵が舞って煙の様に辺りを包む。
「…………。」
今回の敵はなかなか強者だった。私に何枚ものカードを切らせ、挙げ句の果てには金指輪まで使わせるとは。だがそれが彼の敗因だ、使わせてしまった事こそミスなのだから。
「あともう1人、逃げ出すなら今のうちだぞ。」
もくもくと立ち込める煙が晴れると、私は衝撃を受ける。
何故なら、倒したと確信した男が不敵な笑みを浮かべ立っていたからだ。
「おいおっさん、まだ俺を倒せて無いぜ。」
汚れひとつ無い無傷の彼は舌を出して挑発をする。
「ッッなにッ!!?」
確かに倒した筈だ。足は取っているし、逃げれる道も無い。私の攻撃を防ぐ方法など……!!
彼の左手には1冊の本、背表紙には「絶滅危惧本第一級 特別貸出し枠」の印。
「まさか貴様……」
「ご名答♪」
どうやらタイムリミット、足元の風の鎖は解けたらしい。彼はぴょんぴょんとジャンプし自由を確認する。
「俺達を狙った風魔法、床はズタボロ、本棚も塵に。けれどそこにあった特別保護の本は無傷。そんだけ分かればこの本を使って身を守るぐらい考えるだろ?ノアが持っていた本をずっと懐に忍ばせといたのさ。」
やられた。
ものの数分で得た知識を最大限に生かされた。
動きで撹乱し、剣では捉えられないと知らしめる。そして私を魔法主体の戦闘に切り替えさせ、まんまと大技を無効化させた。
私の行動全ては、掌の上で踊らされていたのか……。
「!!!」
右腰にぶら下げていたホルダーが見当たらない!?
「ちなみにアンタが隠し持ってたナイフはここだ、残念賞。道具の無いバッターは空振り、今日の打席は三振の模様。」
ノア『私、見てるだけで良いよね!?』




