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猫が美少女で実は俺?  作者: もこ
紙飛行機は空高く
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闇を振り払う一筋の光


副隊長の動きを止められた!?誰がそんな事を!!

虚ろな目をこじ開け周りを見ると、満足気にほくそ笑むダモダの姿を捉えた。

……くそッ……やられた。奴はもう動けないとタカをくくっていたのが間違いだったか!


「わ、私が行きます!」


1人状況を読んだカノンが、意を決したように走り出す。副隊長が投げた剣を手に取るも、襲い来る骸骨達にそれを振るうことは無い。いや、振るう暇も無く、時間は刻々と過ぎていってしまうのだ。


「動けよ……くそッ!!」


剣技の反動で動かない足を叩くが、動かないものは動かない。動けなければ彼女を助ける事は出来ない。


「……!!」


尾の無いドラゴンの口元に魔力が集まり始めるのを感知する。アレはきっとブレスだ。カノンはそれに気付いていない。


「危ないッッ!!!」


咄嗟に知らせるが彼女が顔を上げた時には既に遅い。

如何すれば良い!!?何か手は無いのか考えろ!!

咄嗟に脳内に浮かぶのはやはり【セドナの姿に戻る。】これ1択だ。


「ごめん……なさい。」


モノイレロに手を突っ込んだ所で師匠との会話を思い出す。


※ ※ ※


「逆境の中こそ冷静にじゃセドナ。お主を救うのは少し運と選択肢を間違えない力じゃ。」


「選択肢を間違えない力?」


「どれだけ強い武器を持っていてもそれより強い武器を持っている相手には勝てない、そういう場合は【戦う】選択肢では無く【逃げる】が正解じゃ。この相手にはこちらではなくこの魔法を、こやつにはこの剣技を。選択肢を間違えなければ……お主はきっと良い神格者になれる。」


※ ※ ※


「選択肢を間違えない力……。」


配られたトランプで戦わなければならないのならば……。

モノイレロから取り出したのはいつかの紙飛行機。ノアが一生懸命魔力を注ぎ込んだ事により小型兵器と化した例のアレ、取り上げた物が運良くモノイレロの中に入っていた。

俺がジュースを用いて無理矢理変化した所で剣技のペナルティは引き継ぐ可能性がある。ならば……今はこの選択肢だ。

既に底をついた魔力を絞り出すように注ぎ込む。それは微量で良い。この少しの魔力が起爆剤となって、紙飛行機に込められたノアの魔力を呼び起こせれば!!


「カノンッーー!!伏せろォォ!!」


刹那、俺の手を離れた紙飛行機は、燃える焔を纏い何よりも速く、そして美しく飛んでいく。


「やった……。」


その焔がドラゴンの心臓を貫いたのを視認した瞬間、糸がプツリと切れたように意識を失った。


※ ※ ※


荒々しく燃える焔の軌跡、それは無意識のうちに目で追ってしまう程煌びやかな極光。

私の頬を掠めていったその光は、ノアさんとタイミングを計ったかの様に、ドラゴンの心臓を貫いた。


「グァァァァォォォ!!」


ノアさんが右目に突き立てた剣を抜くと同時か少し後。心臓の部分にポッカリと穴を開けた敵は、けたたましい雄叫びを上げ光となって消えていった。行き場を無くした骸骨達もつられる様に存在を保てなくなる。

何が起こって居るのだろうか……私は間に合わなかった筈ーーー


「カノン大丈夫?」


無造作に散らばった瓦礫の山を掻き分けてノアさんが座り込んだ私に優しく声をかけてくれる。


「は、はい……。でも私……な、何が起こったのか……。」


「如何やら間に合ったみたいね、タイミングもばっちりよ。あーあ。今回は良いところを見せようとしたのに、結局あいつに全部取られた感じね。」


少し頬の緩んだ彼女が見つめる先に、ボロボロの少女が横たわっていた。


「セナさん!!」


「大丈夫よ、気を失ってるだけ。」


「よ、良かった。」


「今は弱体化してるとはいえ神格者よ、あんなので死んでもらっては困るわ。」


「ノアさん……手厳しいですね。」


頭からピョコリと猫の耳を生やしているのを見ると、彼女は魔力を限界まで絞り出して闘ってくれていたらしい。

そんな功労者に対して、何時もと変わらないノアさんを見ると、なんだか温もりみたいなモノを感じた。



不意に吹き込む風。

周囲に放たれた火は徐々に沈静化していき、生存者はせっせと皆の安否確認を行う。

先程の闘いが嘘に思える程、ゆっくりと時が動き始める。


「カノン……貴方は良かったって言ったけど本当にコレで良かったと言えるのかしら?」


神妙な面持ちで周りを見渡し呟く彼女。同調する様に私も周りに目を向ける。

……。

良く知る街は見る影も無い程荒らされ、ドラゴンの爪痕が嫌でも視界に入る。地面は焼けただれ鼻に付く不快な臭いが辺りに充満していた。この悲惨な状況は私達の宿いえも例外では無い。長年過ごした場所は粉々に崩れ落ち、今は瓦礫の山となって、舗装された道を塞いでいた。


「……ごめんなさい。

貴方達の宿……守ることが出来なかった。本当にごめんなさい。」


「何故ノアさんが謝るんですか!!そもそも貴方の所為では無いですし!私はノアさんに助けて頂いた皆の命の方が100倍大事ですもん!!」


「そう言ってくれるなら私が家を飛び出して来たのにも何か意味があったのかな……。」


「……え?」


「な、何でもないわ。それより避難している人達を呼んでここら辺をなんとかしましょう。」


「そうですね!!私行ってきます!」


きっと何度でもやり直せる。

人がいれば、命が有れば。

どれだけ時間がかかっても良いと個人的にはそう思う。

そしてこの戦いを通して、私は何か変われた気がする。少しでも近づけたのかな?セドナさんやノアさんに、そして父に。


※ ※ ※


「……はぁ……はぁはぁ。」


息を潜め、暗い路地裏を進む。


「……ッッ!!」


傷が痛むたび、心の底から怒りが込み上げてくる。


「クソがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


あいつらには絶対に復讐してやる。その為にも今は見つからず此処から逃げ切る。

朦朧とした意識の中、重い足取りで街から離れて行く。


「大丈夫かダモダ?」


「…………!!」


スタッと俺の前に降りたったのは、最近知り合った黒ずくめの男だった。


「……おい。お前に貰ったあのドラゴン!!!何の役にも立たなかったじゃねぇか。何が魔格者だ。お前は俺の期待にそえなかった、もう金も出さん!」


「そいつは困った。俺達魔格者は世間的に動き辛い。金を調達する事も一苦労なんだ。」


「そんな事知るか!!俺は腕を失ったんだぞ!?」


目一杯奴を睨みつけ、威嚇する。

そもそもお前の力不足で、俺はこんなにも深い傷を負ったんだ。何らかの形で責任は取ってもらうぞ。


「ダモダ、ワガママは困る。お前の宿が成功するまでに何回邪魔者を消してやったと思っている?」


「うるさい!!結局の所は俺の手腕だろうが!!少し手伝ったぐらいで仲間の様に振る舞うなァ!!」


「……。」


男は黙りこくって俺の周りを歩き出す。コツコツと靴が地面を叩く音だけが嫌に耳についた。


「なぁ、ダモダ。昔神格軍の中でも神童と呼ばれた男を知っているか?」


「神格軍だとォ?」


その言葉だけで不快だ。聞きたくも無い。


「その男はとても頭がキレて戦闘能力も高かった。神格者に負けず劣らず、功績を残した。」


男は歩くのを止め、俺の方を向いた。


「しかし数年後、忽然と姿を消してしまったのだ。」


「何の話だ??」


「マフ・ドラグナー。」


「あ??」


「その男の名前だ。ここまで聞いて分からないとなるとお前は救いようの無いバカだな。滑稽だよ。」


「何を言ってーーー!!?」


男の持つ金色の指輪が光を帯びて魔力を放つ。

ドス黒く歪んだソレは抗う暇も無く俺の周りを取り囲んだ。


「お気に入りのドラゴンが無くなってしまったからな。丁度空きはある。お前は確かハイエナだったよな?隻腕のハイエナか、使い物にならんな、ははは!!」







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